紙の本
愚かで滑稽、ときには愚鈍で不思議ちゃん、すべて面倒みてくれています
2010/01/29 11:07
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
どうしようもない男や女、へんてこな人を描いて、毒も吐くのに、
読んでいてすこぶる楽しい短編集。
平安寿子を読むと、奥田英朗の短編集が頭をよぎります。
なんていうか、どちらもミもフタもないのに、悲観的でなくユニーク。
悲壮感漂っていても、同情なんてまっぴらごめんって感じ。
6編の中でも、書き下ろしの2編がとても良かったです。
周囲の人に金持ちであることを利用され続ける夫を、冷やかな目で見つめる妻の、意外な感情。
堅実に生きて、それしか取り柄のないことを、最終的に武器に変えた60女の、
日々の意地悪な感情と、虚構の世界と、ささやかな夢。
まだ先の、しかし遠くはない未来に待ち受ける「老い」に対して、
少なくとも気分的には乗り切れそうになってしまう、程よい楽観さが気持ちいい。
そして、小説内ステレオタイプではなく、
限りなく実世界にいそうな、意地悪だったりワガママだったりする登場人物たち。
生きていくのは、キレイゴトじゃないし、霞を食ってばかりもいられない。
でも、悪いことだけじゃないよね?
笑ったあと、そんなふうに思える小説は、立派な栄養源にもなりました。
紙の本
ぬるくても浮いてても、アタシはアタシ
2010/02/19 12:55
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
ちょっと変わった人たちが登場する短編集。
彼ら(彼女ら)は、そんな自分が心地よく、
それなりに美学があり、
最後まで貫き通す痛快さがあります。
まず冒頭は、打算で開業医の息子と結婚した村上貴子が
夫がオーナー、ダメ男のタダオが店長のカフェの
保証人になる「長い目で見て」。
このタダオが愛嬌はあるけれど、頭は回らず、
28歳にもなって子どものまま。
ところがこのタダオにしてやられてしまう。
さらに、貴子自身も夫に愛情よりも
自分が開業医を継ぐことで結婚し、
その舅(院長)と生き方、考え方がぴったり合っています。
この組み合わせを考え出す平安寿子の才能ってなんだろう。
絶妙なバランスによって人生と人間関係が成り立っています。
そこから、葬式に出るのが趣味になっている
アラサーの同級生に再会する「ブルーブラックな彼女」。
草食男子を描く「滅亡に向かって」。
定年退職後、年金相談センターでバイトをしながら
バレエにのめり込む「浮いてる女」。
周囲から言われるままに生きている「ぬるい男」。
電気製品を狂わせる女「えれくとり子」。
どれもうまい。
特に草食男子の(おそらくいちばんの)問題点、
恋愛や女性に淡泊という点に正面からぶつかって描きます。
しかし彼を変えることはムリ。
彼はそれがいちばん居心地のいい状態だから。
それは、わずかな縁の人の葬式で泣く
「ブルーブラックの彼女」にも言えますし、
結婚はしていないけれど、魅力的で
ボーイフレンドに不自由しない「えれくとり子」にも言えます。
どちらも彼女に惚れた男性から描くのですが、その壁は厚い。
それでも、こういう人たちが不快かというと
そうでもない。
彼ら、彼女らはそれでいいんじゃないか
という気になってきます。
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平安寿子の最新刊。
「ふつう」から少し外れた男や女のスケッチふうな短編集。帯の惹句のとおり「見てるだけなら面白い、でも近くにいるとちょっと困る」という人々に焦点をあてている。
お金持ち一族のダメ息子の話「長い目で見て」と、著者のバレー好きを反映したような「浮いてる女」がよかった。ただし、ほのぼの話に納まっていなくて、シニカルな視線が仕込んであるので、読後感はさわやかというわけにはいかない。心して読むこと。
12月始め地元で講演会があると今朝の広報で読んだので楽しみにしている。タイトルは「50代からの正念場を生きる」
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平節炸裂の短編集。
草食系男子の胸のうちを綴った『滅亡に向かって』と”アラ還”おひとりさま女史の毎日を描いた『浮いてる女』が対照的でおもしろかった。
それにしても…このまま女性はどんどん逞しく、男性はどんどん内向的になっていくのだろうか。どこかでまたがらっと世代交代があるのかな?
私も人類(というとおおげさだけど)の行く末に興味津津。
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お、新しいタイラアスコ小説が出とる!と気づき、予約待ち人数が少なかったので、しばらく前から予約していた。タイラアスコというだけで借りてきたので、内容についてまったく予備知識なし。
昨晩寝る前にちらちらっと読んで、(あ、毒系小説や)と気づく。これまでのタイラ作品でいうと、これも黒い表紙の『あなたにもできる悪いこと』に似ているような気がする。
オバハンは強い。
毒も手玉に取ってる感じ。
6つの小説には、押しも押されもせぬオバハン・タイラのこれまでの人生経験がたっぷり活かされてるんかなと思う。
「滅亡に向かって」は、草食系男子の話。『We』163号で、沼崎さんが「愛に包まれてスクスク(いやヌクヌク)と育っている」というイマドキの若い男の子のことを書いていたが、その暮らしは、たとえばこんな風であるのかなアと思ったりしながら読む。
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+++
草食系男子、“アラ還”おひとりさま、不思議ちゃん女子…こういうヘンな人たち、いますよね。見てるだけなら面白い、でも近くにいるとちょっと困る。
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「長い目で見て」 「ブルーブラックな彼女」 「滅亡に向かって」 「浮いてる女」 「ぬるい男」 「えれくとり子」
+++
たしかに、あまり身近にいると面倒が多いかもしれない主人公たちではある。だが、なぜか憎めない。彼らはみな、その人らしさで成り立っており、意識するとしないとに関わらず、その人なりの規範に沿って生きているように見える。悪意はなく、世間に大きな害をなすこともない。人と同じでなくともいいじゃないか、と思わせてくれる人たちなのである。居心地のいい読書タイムを与えてくれる一冊だった。
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ぬるい男と浮いている女たちが登場する6つの短編。「長い目でみて」の、お坊ちゃまの典型、唯生くん、「ブルーブラックな彼女」の、生きている実感を求めて弔いの場に足蹴く通う小森さん、「滅亡に向かって」の、ナチュラリストでがつがつしていない草食系男子代表の剛と、プレ更年期のホルモン異常で発情中と率直さ全開の沙代子さん、「浮いている女」の、孫のいる裕福な上流未亡人の虚飾に夢の世界を築いているいる一枝、「ぬるい男」のトロいうやつという周囲の目の中で特にもがいいているわけでもない収と、そんな彼にのっかってしまう橋本さん、「エレクトリ子」の、まさしく不思議なエレクトリ子の彼女、店長。平さんの彼、彼女たちへのまなざしは無批評なまっすぐなものだ。
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あれ?だめだ、こんな平さんじゃいやだよー!
平さんはこうゆう、ぬるかったり浮いてたりな不思議くん/不思議ちゃんをすばっと一刀両断したり、口の端もちあげて嘲笑する役回りのはずなんだから、ありのまんま書かれても!
はやく、はやく突っ込んで!(突っ込む役の人を登場させて!)とジタバタしながら読んでました…
消 化 不 良 。
「おいおい、ねえだろ…」と胸中でつっこむだけではモヤモヤが残るだけなのだ。平氏の毒っけたっぷしの突っ込みに同調してスカッとしたいのだーーー。
平さん。一体どうゆう心境でしょうですか?もしかして、「突っ込み方はおまかせします♪」てこと??
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短編集
世の中にはこんな人もいるのかもね~ と距離を置いて読んでしまった。
文章自体は読みやすくて、短編だったし、合間にちょいちょい。
ぽわ~んとした登場人物が多かったけど、そんな感じでもしっかり生きていけるんだね。それにキャラをしっかり持ってて、そんな自分に満足してるところがよかった。
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世間一般の人たちからみると少し変わっている人たちと、
その周りの人たちの普通の話。
変わっているんだけど、冷めている部分・鋭い考えが
ちょっと共感できた。こういう人たちが案外上手い生き方を
しているんじゃないかなと思う。
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短編集。
相当にシニカルに、現代人を揶揄した話。
だった・・と思う・・・。
読んだのは、思えばもうかれこれ半月以上3週間はとうに過ぎたので、中身は相当忘れている。
現代の社会の中に存在する、ある種特徴的なタイプの人を探し出して描写するのが、上手い平さんである。
そう、このひとは「へいあんさん」ではなく
たいら あすこ さんである。
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仮面夫婦の夫がオーナーで甥が店主のカフェが出来たが
どうせすぐ潰れるだろうと思いつつも見守る「長い目で見て」
交流もなかった同級生の親族の葬式に列席するのが趣味の彼女が
どうしても気になる「ブルーブラックな彼女」
家具屋のお得意様に迫られた剛は引きに引き
同僚から自分が草食男子だと言われることに納得する「滅亡に向かって」
シングルで定年を迎えたがカルチャースクールのバレエ教室では
孫のいる裕福な初老の上流未亡人を演じる「浮いてる女」
靴屋でぼんやりアルバイトをしていると
何故かあるお客に気に入られコンサートに誘われる「ぬるい男」
喫茶店で知り合った電化製品を壊してしまう体質の女に惹かれ
彼女の営む雑貨屋に通いつめるが他にも何人もの男がいる「えれくとり子」
装丁:野中深雪 装画:林幸子
肉食女子と草食男子の短編集。
とても打算的なので綺麗事には飽きた人におすすめします。
ビジネスライクな結婚をして自分に迷惑がかからなければいいと思う女、
他人の葬式で自分が生きていることを実感する女、
草食男子だと言われるがまったく自覚のない男、
ずっとシングルなのに上流未亡人を演じる女、
とにかく周りに迷惑をかけなければいいと考える男、
言い寄る男は拒まないがセックスが必ずしも必要ではないと考える女。
現代社会を風刺する作品が多いです。
中でも「浮いてる女」が一番リアリティがあるかなあ。
おひとりさまなんて素敵な言い換えもありますが
実際年を取ってからの一人暮らしって
病気、怪我、お金、悩むべきところはたくさんで誰を信じていいのやら。
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色々なちょっと変わった人たちのお話
ゆとり&おぼっちゃまと言われるような男子
草食系&肉食系といわれる人たち
アラ還どう猛女子など
ちょっと変わった人たちに焦点が当てられています
期待していたけど・・イマイチでした
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一度全作読みつぶしている作家さんなので新刊が出ると
つい読んでしまう。いつも読んで感動するとか感銘を受けるとか
そういうことはないけれど、時間つぶしにはなる。そんな感じ。
この本は短編集。どれもあまりいけてない人が主人公。
どれもハッピーエンドというわけでもなく、かといって不幸という
わけでもなく日常を切り取った感じ。
これはいつにも増して読まなくても良かったかな。
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これはよく言ってしまえば「ゆるーい」小説。
そのため読みやすく、すぐに読めてしまうかと思います。
悪い風に言ってしまえば「内容が詰まっていない」です。
周りの女性は似たり寄ったりですね。
傑作は草食男子が明確に押し出されている
「滅亡に向かって」です。
なぜか女であるはずの私にいわれている感じで
ドキッとしたのですが。
(基本肉食だけれどもそちら方面にあまり興味はない!)
気持ち分かるな、と思います。
あれな女性たちと付き合うのは嫌ですものね。