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商品説明
1995年1月17日午前5時46分阪神淡路大震災勃発。事実を積み重ねれば、恐るべき“真実”となる。GEQ(大地震)の裏に隠された陰謀とは?読む者を震撼させずにはおかない驚異の長編ミステリー。【「BOOK」データベースの商品解説】
行方不明の友人のメモを入手した日系人ジャーナリスト、ジョージ・松永。そこには阪神淡路大震災に関わった重要人物らの名があった。彼らに取材を開始した松永は、やがて恐るべき陰謀の事実を知る。『野性時代』連載を書籍化。【「TRC MARC」の商品解説】
著者紹介
柴田 哲孝
- 略歴
- 〈柴田哲孝〉1957年東京都生まれ。日本大学芸術学部中退。「下山事件」で日本推理作家協会賞と日本冒険小説協会の評論・実録部門賞、「TENGU」で大藪春彦賞を受賞。ほかの著書に「狸汁」など。
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紙の本
期待していただけに、ガッカリ。類似の作品を越えた、とは到底いえません。なかでも、ケン・フォレット『ハンマー・オブ・エデン』を超えない。やっぱり陰謀史観めいたお話っていうのは風呂敷の広げ方次第で、つまんなくなっちゃうんですねえ・・・
2010/09/06 20:13
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みーちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
『渇いた夏』を読んで、そのミステリの完成度に驚かされた柴田哲孝のノン・シリーズ作品です。タイトルは高田崇史の『QED』と勘違いしそうですが、こちらは『GEO』、大地震。ちなみに、『渇いた夏』の続きを読みたい方は、『早春の化石』のほうをご覧ください。前作ほどの驚きは感じませんが、十分満足できるものに仕上がっています。
で、『GEO』ともかく、迫力あるカバーです。ど真ん中に配されたタイトル、字体がとても力強い。しかも、バックの写真との色の対比が決まっています。写真は、見た人に様々な震災を思い出させるものですが、一見すると東京大空襲のものか、と思わせます。モノトーンにして全体に黄色味をかけた結果だと思いますが、これがまたいいんです。装丁は國枝達也(角川書店装丁室)、カバー写真は時事通信社のもの。
日本人にとって地震は身近なもので、暑かった小説も色々あるのでしょうが私が読んだものではまずは小松左京『日本沈没』があって、そうくれば当然、筒井康隆『日本以外全部沈没』がくることになります。でも、これらは出版されたのが古く、ベストセラーにこそなったものの、壮大なフィクションとして読まれ、本当の意味の警鐘にはなりませんでした。まして筒井の作品ともなれば、読者は笑って楽しんだだけで終わったに違いありません。現に私がそうでした。
現代人にとっては、やはり阪神淡路大震災が大きくて、それ以降、貴志祐介『十三番目の人格 1SOLA』、横山秀夫『震度 0』、古処誠二『少年たちの密室』、柴田よしき『PINK』、篠田節子『家鳴り』、谺健二『星の牢獄』、乾くるみ『リピート』、高嶋哲夫『津波』、谺健二『肺魚楼の夜』などがあり、最近ではジャワ・スマトラ沖地震が、中山七里『さよならドビュッシー』にもエピソードとして登場します。
意外なところでは、村上春樹『神の子どもたちはみな踊る』の登場人物は皆阪神淡路大震災に間接的に関わっていますし、『アンダー・グラウンド』も、テーマはオウム真理教ですが、二月前に起きた阪神淡路大震災について触れています。井上ひさしは『井上ひさしの日本語相談』のなかで「大地震をなぜオオジシンと読むか」を論じ、豊島ミホ『東京・地震・たんぽぽ』で、震災を扱い、塩野七生も『日本人へ 国家と歴史篇』で、イタリアの被災について日本の耐震技術を示す提案をしています。
もっと沢山あるでしょうが、『GEO』を読んで思い出したのがケン・フォレット『ハンマー・オブ・エデン』です。詳しく紹介しませんが、読み比べていただければ私が何を言いたいかはわかると思います。でも、この本が広く読まれた、という印象はないんです。日本人は、本当に熱しやすく冷めやすい。でも冒頭にあえてこの話はフィクションであるとことわるところが、柴田や角川書店の真面目なところ。
主人公は、ジョージ・松永、もとはUPI特派員記者でしたが、この話の中心である2007年には、無職となっている42歳の男です。そのきっかけとなったのが、恋人キャシー・ディキンソンの死で、彼女を巻き込んで死なせた世界貿易センターのテロに関する取材でCIAに睨まれ、記事の一部を発表出来なくさせられたうえに、不正を働いたという噂を流され、仕事に就くことができない状態に陥っています。
ジョージ・松永は、UPI特派員記者だった1991年、サウジアラビアのリヤドで吉村という日本人フリージャーナリストに出会います。そして、大阪支局に籍を置いていた1995年1月17日、阪神大震災の起きた当日、駆けつけた神戸で吉村に再会し、現場で救援活動を行い、以来日本で暮しています。しかし、吉村は2004年12月26日、バンダ・アチェのスマトラ沖地震で行方不明になってしまいました。
そのジョージを記者として雇うことになるビールとニョッキが大好きな好漢が、イギリスの『ガーディアン』紙の太平洋支局長サム・ラングフォード、そしてCIAの対マスコミ工作部門のエージェントで、松永に「ブリキの小鳥」というコード名を付け、監視を続ける小男が、ハリー・ミルズです。彼らを繋ぐ糸はあるのでしょうか、そしてGEQは・・・
陰謀史観冒険小説といえないこともありません。やはり天変地異を扱うと、どんなに真面目な取り組みであっても絵空事に見えてしまう、さすがの柴田もこの作品で、その壁を突き崩すことが出来なかったのではないでしょうか。私自身、似たような話で、もっと面白いアイデアを持っていますが、それを小説に組み立てる力がありません。いつか、誰かの手で作品化されればな、なんて夢見てはいるんですが・・・
最後はデータ篇。目次と初出です。
第一章 激震
第二章 二〇〇七年・神戸
第三章 二〇〇七年・東京
第四章 二〇〇七年・神戸
第五章 二〇〇八年・ロサンゼルス―中国
第六章 二〇〇八年八月八日・北京
初出「野生時代」2009年1月号~2010年2月号