紙の本
「紙の本」vs.「電子書籍」といった皮相な見方ではなく、うまい使い分けを考えたい
2012/04/04 15:52
8人中、7人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:サトケン - この投稿者のレビュー一覧を見る
言語脳科学と脳機能イメージングを専門にする研究者が書いた本。限定された入力情報によって想像力を鍛えることが「脳を創る」ことになるというのが基本的主張だ。
著者は自然科学者であり、いわゆる「理系」であるが、「紙の本」も「電子書籍」もともにメリット・デメリットがあると冷静に分析している。「電子書籍」が優位だといっているわけでもないし、「紙の本」でなければダメだなどと主張する守旧主義ではない。検索目的であれば電子書籍のほうに優位性があるのは当然だし、本にチェックや線引きしたり書き込みすることでカスタマイズできる点においては紙の本に優位性があるというのは、経験的にみて十分理解できるところだ。冷静な議論を行うためには、著者のような整理が必要だろう。
重要なことは、「紙の本」であれ「電子書籍」であれ、活字を読む際には想像力を必要とするということだ。想像力を鍛えることで、文脈(コンテクスト)を読むチカラが鍛えられるのである。著者は、「空気を読む」という表現は使用していないが、「行間を読む」とは文脈を読むチカラのことであり、これまでの知識や経験の蓄積をつかって「想像力で補う」ことを意味している。活字を読むことの効用はきわめて大きい。
やや「教養主義的」な発言がみられるが、そういった趣味の世界の発言は脇に置いておいても、使い分けが重要という著者の主張はきわめて穏当なものだといえるだろう。「電子書籍」時代に入ったいま、とくに若者を教育する立場にある人には読んでもらいたい本である。
紙の本
脳について
2017/01/15 16:14
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Otto - この投稿者のレビュー一覧を見る
なぜ紙の本が必要なのか、という点に興味があったが、脳についての記述が多く、あまり参考になりませんでした。「鉄腕アトムは現在の技術で作れるか」というのは面白かった。
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後半部分の紙本と電子書籍を使いわけようという内容はありきたり。
前半部分が価値あり。言語脳科学というフロンティア的な分野で活躍している著者が、言語と脳・認知機能の基本的な関係を解説している。
なぜチョムスキーの生成文法理論が重要なのかについての説明が、今言語科学を受講している身からすれば役に立った。
言語に始まり数学や音楽まで広がっていく、人間の認知機能と想像力について聞かされるのは刺激的。
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紙の本と電子書籍、一方が他方を食いつぶすのではなく適宜使い分けることが必要。紙の本が完全に消えてしまうことを危惧して闇雲に電子書籍を批難していましたが、この本読んで頭冷やしました。
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同じ東大の酒井先生が書いた、紙と電子書籍についての本と言うことで手に取る。前半は脳科学入門、後半は酒井先生本人のデジアナ論といった内容ですっと読めました。後半はよく聞く話も多く、アナログへの愛を感じるやや強引な所もありましたが、利点と問題両面を挙げておりバランスは良い本でした。
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読書法の本かと思いきやそうではない。この本は面白い。
入力は情報量の多い活字。
出力は情報量の多い会話。なるほど。
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想像していた内容とちょっと違ってました。
「自分で考えて書き、書いて考える--そうした時間がないと、知識は自分のものにならない。電子化された手段に頼らなければ、効率が犠牲になる代わりに、考える時間と考える余裕をもたらしてくれる。電子化が悪いのではない。使い方が悪いだけだ。人間が書くことで考えることを取り戻せれば、コンピュータを賢く使うことに何ら問題はない。」
↑
同感です。
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言語能力と想像力を鍛えるには、読書が最も効果的である。「入力」の情報量が少ないほど脳は想像して補うからだ。私たちが普段受け取る情報は、基本的には映像、音声、活字の3つである。
そしてその情報量は映像>音声>活字の順番だ。活字を読むという行為は、足りない情報を想像力で補い、曖昧な部分を解決していくことである。
したがって脳の想像力を向上されるためには読書が最適であるということができる。
では「出力」の場合はどうかというと、今度は逆で出力情報が多いほど脳は想像して補う。出力の情報の種類は、会話>電話>手紙>電子メールの順番になる。つまり、読書量と会話量に比例して脳の想像力は鍛えられるということができるのである。
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「紙の本」と電子書籍の使い分けという結論はありきたりかな。その結論にいたる話も、「紙の本」へ思い入れが強いのか、ちょっと実証的でないような。翻って、前半部は言語脳科学について。言語と脳の関係、認知機能についてなど、興味深い内容。
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副題にある『なぜ『紙の本」がひとにとって必要なのか』に
対する答えが知りたくて、本書を手にとった。
一覧性に優れていたり、キーワードを位置で記憶していたり、
書き込みができることは想像できたことで、科学者らしい答えを
期待していたのに、残念だ。
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サブタイトル「なぜ紙の本が人にとって必要なのか」。
電子書籍が少しずつ浸透してきた今、考えさせられる内容。
「何でも機械化し電子化できるという表面的な見方に対して、人間が大切で譲れないものは何かと考え、未来にどのように向かうべきか決断することが、あらゆる方面で問われている。そういう過渡期を我々が賢く乗り切るためには、人間とはどういう生き物であって、どこが愚かでどこが素晴らしいのかということに我々自身が気づかなくてはならない。そうすれば、人間は人工物に振り回されることなく、古き良きものを大切にしながら新しいものを創り続けることができるに違いない。」
「板書の筆写などは効率が悪いと思うかもしれないが、それは記憶に定着させるための最良の方法なのである。自分で考えて書き、書いて考える。そうした時間がないと知識は自分のものにならない。」
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サブタイトルで、なぜ「紙の本」が人にとって必要なのか、ということに誘われて読んだ。しかし、書いてあることは実証的ではないので、いまひとつしっくりこない。残念ながら、この本を読んでも、デジタル本よりもアナログ本の方がいいということで論文を書こうとする学生の参考にはならないであろう。
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美の三要素「単純・対象・意外性」自然法則。人間の脳が心地よいと感じる。
読書は想像力が働く。
想像力がある方が記憶出来る。
読書は脳を創る。
紙の本と電子書籍の使い分けが大切。
「多読」「精読」の両方が有効。
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以前読んだ「科学者という仕事」がよかったので読んでみた.
副題は「なぜ『紙の本』が人にとって必要なのか」.
3章まではとても面白い.文章,数式,美などを認識するには脳の想像力が不可欠であり,その脳の想像力を高めるために受動的に大量の情報を得るのではなく,入力を制限する必要がある.そのためのメディアとしての読むことと書くことの重要性を説いている.
一方,4章からは電子書籍がこの想像力を高めるメディアとしていかに物足りないかが書いている.この論拠が弱い.技術的に未熟なことを指摘したり,紙へのノスタルジーに頼ったりして論を進めているが,まったく弱い.いくら電子書籍が普及しても,紙のメディアはコレクターと専門家のためには残るだろうから,このあたりの議論はかなりむなしい.そして最後の結論が紙の本と電子書籍のうまい使い分けをというのは全く当たり前のような気がする.
本論と外れるが,p.64 あたりで「美の三要素」として「単純性,対称性,意外性」をあげて,数学の数式や文章の美しさをこの原理で分析している箇所がある.これはちょっと感心した.ここにあげられた要素自身は言われてみれば当たり前のことのように思えるし,たぶん美を研究する学問では美の要素というのは当然考えられているだろうが,その美の対象を数学や言語にまでは広げていないのではないか.知らないけど.
「この式は美しい」とか「この作家の日本語は美しい」という表現を見かけると,具体性にかけていて何も伝わってこないことに私はもどかしく感じていたので,それを少しでも具体的な形にしてくれたこの部分には考えるためのヒントをもらった気分になった.
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電子書籍礼賛に警鐘をならす内容の書。
わからないでもない。私も辞書で言えば「電子」より「紙」派だ。
…という同じことを著者もこの書の中で述べていた。
要するにどちらも「使い方」の問題であり、一辺倒になる、あるいはどちらかが残ってどちらかが消える、という話ではない。
これをこの書では「使う側の意識が鍵を握っている」と結論付けている。