正義のアイデア

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朝に数ページずつ、やっと読了。読んで良かった。モヤモヤしていたものはこれだったのかと気付かされることが沢山あった。日本だと聖徳太子の十七条憲法の第十七条がひいてある。これを読んだとき丁度、秘密保護法が可決されて、とても恥ずかしく残念に思った。

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経済学の文脈で「正義」を構想できるのはアマルティア・センをおいて他にはいないだろう。「制度ありき」の伝統的な正義論を「先験的制度尊重主義」を批判する主論は本書でもクリアカットに示されている。

センが注目するのは「正義」よりもむしろ世界にあまねく「不正義」の実在ということ。飢餓や差別といった課題に対し、解決のためのアイデアを示すのが、センのいう「正義の実践」という主張である。正義が現実を規定するのではなく、現実世界から正義を構想するというものの見方は、すなわち制度設計により解決は可能となるという西洋の伝統的な正義論を撃つだけでなく「正義」をどのようにとらえるのか、ものの見方を転換してくれる。

さらにその批判の眼差しは、正義を効用だけで評価するこれまでの「はかり方」へも向けられ、構想にとって情報提供となりうるメディアの責任にも向けられている。

教典に示された正義を履行するのではなく、正義を実践する勇気を現実のなかでのどのように展開していくのか。非常に示唆に富む一冊。

なお、翻訳もなかなかすばらしい出来具合い。

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経済学者のアマルティア・センにによる正義論の本。ロールズを始めとした従来の正義論を批判しつつ、自らの正義論を発展させていった本書は、今までの正義論よりも実践的な正義論であると特徴付ける事が出来る。また、センの重要な主張であるケイパビリティと正義論を結びつけた議論も必見である。
600P近くもあり、確かに読むのはややしんどいが、ガチガチの政治哲学の理論書、というわけではなく、事例をはさみつつ議論を展開しているので、そこまで難解と言うわけではない。広く社会科学を学ぶ人にとって、読んで損のない一冊であると言える。

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新着図書コーナー展示は、２週間です。
通常の配架場所は、3階開架 請求記号：311.1//Se56

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ー　実現に焦点を合わせる観点は、完璧な正義を追求するのではなく、世の中の明らかな不正義を防ぐことの重要性も理解しやすくする。マツヤニヤーヤの例がはっきりさせているように、正義の課題は、単に完璧に公正な社会を達成する(あるいは達成することを夢見る)ことではなく、(マツヤニヤーヤの恐ろしい状態を避けるといった)明らかにひどい不正義を防ぐことにある。例えば、一八世紀から一九世紀にかけて人々が奴隷制廃止を訴えたとき、人々は、奴隷制の廃止によってこの世の中が完璧に公正な社会になるという幻想を持って努力したわけではなかった。むしろ、奴隷のいる社会は全く不正義な社会であるというのが彼らの主張であった(すでに取り上げた著作家の中では、アダム・スミス、コンドルセ、メアリー・ウルストンクラフトは、この視点を提示することに深く関わってきた)。奴隷制の廃止を最優先課題としたのは、奴隷制は耐え難い不正義であるという判断であり、そのために、完璧に公正な社会がどのようなものであるかに関する合意を追究する必要はない。 奴隷制の廃止に導くアメリカの南北戦争はアメリカにおける正義にとって大きな成功であったと考える者は、(完璧に公正な社会とその他という対比しかない) 先験的制度尊重主義の観点からは、奴隷制の廃止による正義の促進に関してほとんど何も言えないという事実を受け入れるだろう。　ー

「先験的制度尊重主義」の「正義論」が決して悪いわけではない。ただし、その議論の過程で放っておかれているままの、世界に溢れている不正義を見過ごすことは出来ない。これが、センの思想の根幹にある。

正義は「正義論」を待たない。不正義を正す行為に「正義論」の完成は必要ない。不正義を正すために必要な正義は何か、というのがセンの問いなんだと思う。

ロールズの正義論は、その理想的な完成形として、とても正義に適った理論だと思う。正義の理論は、ロールズの正義論であるべきだと私も考える。ただし、この正義論はあくまで理想的な理論であり、我々がこの世界で実際に制度設計を行う方法論としては、世界があまりにも強固に不平等と不正義で構成されすぎている。

センの正義に関する考え方は、「正義論」といった完成された、整理・分類された理論ではない。なのでセンの正義論は〜である、と簡単に言えるものではない。それは、比較論的なものであり、目の前にある、不正義、不平等、不自由、不幸、不便、不満との向き合い方に関する考えた方なんだと思う。

そして真に問うべきなのは、この不正義であり、この不正義を無くす為に行為することこそが、正義のある場所であり、どこにもない「正義論」を振りかざす場所が正義のある場所では決してないのだ。

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ぼおっと、できてしまうようで、難しい。生きること。
「なんで？」とか問い始めると、もうね、キリがない。今日も明日も。たくさんの人と接しながら、それでも自分として生きていく。ご飯を食べる、書き物をする、仕事をする。たくさんの「する」を、くっつけ合わせて、人と人の間を生きていく。たくさーんのなかで、根本的なモチベーションを保つために、あたまの中にどんなことを漂わせていればいいのか。

正しくあること。少なくとも、そんなものをどっしりひろげて、狭い孤島の中で圧迫されながら過ごす必要はない。しかし、「正しさ」が「くっつけ合わせる」ために、実に都合の良い道具であることは、やはり認めざるを得ないのである。

「わたくしは、正しい」と、叫ぶこと。「あなたは、正しくない」と叫ぶこと。とっても簡単に、ボクをボクのなかに、つなぎとめてくれる。ボクを拡散させてしまうような寂しさ、自信のなさ、後ろめたさから逃げるために、自分をつなぎとめておくために、ボクはやっぱり「正しく」ありたいと願ってしまうのだ。自分を肯定したいという、とてもくだらなく、しかしときにとても有用な感情を、自分と、他人に、押し付けることなく、生きること。「正しさ」のシンプルな誘惑に耐えながら、どうやって生きていけばよいのだろう。

アマルティア・センの「正義のアイデア」は、600ページ弱もあって部分的に冗長的だったけれど、全編にわたって躍動的で、噛みしめながら読むことができる本だ。「正しさ」と向き合いもがきながら、それとは別のあり方を求めていたボクにとって、大きなヒントを提供してくれる内容であった。

センは本書で、ボクの言うところの「正しくありたい人たちの考え方」、すなわち先験的正議論を批判する。
先験的正義論とは、読んで字のごとく「経験に先立って正しさを決めておくアプローチ」である。例えば、ロールズの正義論がその代表例。理論的に十全な正義とはなにか、どうすればそのような正義に適った制度を構築できるのか。先験的正義論の立場をとる人は、そういうことを考える。これに対してセンは、理論的に十全な正義とそれを達成するために構築された制度なんて、現実に生じている問題を解決する上ではあまり意味がないという立場をとっている。センによる批判を箇条書きにしてみると（訳者のまとめを参照した）。

（１）完全な社会制度では、社会の比較の問題に答えられないこと
（２）制度の枠組みの中で生まれる社会的現実を無視していること
（３）国境の外にいる人々を無視していること
（４）偏狭な価値を修正するための体系的な手続きを持っていないこと
（５）合意の後に、様々な原理が正義の原理とみなし続けられるという多様性を残していないこと
（６）仮想的な社会契約にもかかわらず、人々は常にその契約に従って行動するとは限らないという可能性をみとめていないこと

一方で、センが提案するのは現実ベースの比較によるアプローチであり、先験的アプローチに比べて以下のような点で受けいれやすい（とセンは主張している。こちらも訳者解説に基づいて記述）。

（１）複数の選択肢間の相対���な比較に焦点を合わせること
（２）競合する諸原理が生き残るという多様性を認めていること
（３）再検討を容認し、促進すること
（４）全体に関して合意できなくても、合意できるところから改善できるという部分解を許容すること
（５）国民に限らず、国境外の多様な意見を取り入れ、多様な情報と解釈を許容すること
（６）明確な表現と推論を強調すること
（７）社会的選択における公共的推論の役割を重視すること

上記のような点について、先験的正義論を批判し、現実ベースの比較アプローチを支持するために、センは600ページを費やした。ただしこの600ページは、理論的に積み上げるように記述されているわけではなく、センの思考の道すじをたどりながら（若干冗長的に）書かれており、全体的にとっつきやすい内容だ。また、冗長的だからといって、同じことをただ単純に繰り返しているわけではない。新しい概念を提出しながら、前後の議論との関係を考察しているために、だらだらしている印象を受けるだけであって、決して議論が逡巡してしまっているわけではない。着実に歩を進める内容である。

以下、自分用のメモとして、ボクにとって印象的だった考え方をカキカキしておく。
読了して頭の中に残ったのは、「開放的不偏性」と「公共的推論としての民主主義」という考え方である。

「等しいものを等しく扱う」という、いわゆる（公平としての）正義の要求へ応えるためには、不偏性を見出さなければならない。センによれば、先験的正義論と現実ベースの比較アプローチは、それぞれ「閉鎖的不偏性」と「開放的不偏性」という異なるタイプの不偏性に依拠して成立している。

まず、ロールズをはじめとする先験的正議論者が用いているのが、「閉鎖的不偏性」である。特定集団内での意思決定において、公平性が満たされるためには、他者の利益や関心も考慮して偏りを避けるという要請があり、既得権益や個人的選好の影響を避けることが求められる。そのためにロールズが持ち出してきたのが「原初状態」という考え方で、一人ひとりが個人的な既得権益や選好に関するアイデンティティーをまったく持たないという想像上の平等のもとで、満場一致の原理によって見出された契約に基づいて、決定が導かれる。このモデルのおかしな（そして、ずるい）点は、「満場一致」に参加できる人とできない人が暗黙のうちに前提とされていること。すなわち、限定的な「閉鎖された」集団の中での契約であって、集団の境界を超えて周辺に対する配慮は含まれていないことである。すなわち、先験的正義論者は、意思決定の際に考慮すべき範囲を狭めるというテクニカルな方法を採用し、巧みに不偏性を生み出すように努めているのである。このような考え方を実践したとすれば、自分たちにとって都合のよい範囲だけを切り取ってきて、都合の悪いものを取り除きながら契約を成立させ、その後の世の中のルールをつくってしまうという可能性を残すことになるだろう。

一方で、もうひとつの不偏性として、センは、アダムスミスの論ずる「公平な観察者」にみられる「開放的不偏性」を取り上げている。公平な観察者が意図するのは、公平で不偏的な他の観察者も同意するであ��うと思われる方法で、自分自身の行動を吟味することである。このように考えることで、特定の集団や社会だけでなく、周辺の声を反省的にとりいれることも可能なのであり、偏狭な解釈や考えを克服することが可能になるとセンは主張する。

もう一つあたまに残ったのは、民主主義に対する考え方について。民主主義を熟議と重ね合わせて手続き的な統治の方法と捉える考え方は、最近、一般的になりつつある。しかし、先験的立場をとった場合に民主主義は、そのような手続き的な側面を失ってしまうのであり、投票や選挙のような制度的理解に矮小化されてしまうのである。ここで大切なのは、民主主義があくまでも一つの方法であるということだ。勘違いされがちであるが、民主主義は、それ自体で価値を形成しない。したがって、その背景には価値に対する選択が前提となっているのであって、どのような価値に加担するかを明らかにせず、単に民主主義を声高に叫んだだけでは、（まさにいまの日本がそのようであるように）上記のように、やれ投票だ、やれ選挙だと、まくし立てることになるのであって、視野が狭く思想的に偏った独裁的な個人が自身の権力を正当化するためにのみ使われる可能性が生ずる。

ボク自身としては、民主主義を選択するのであれば、その前提として自由を（すくなくともひとつの）価値として認める必要があり、自由主義が存在していることを強く意識する必要があると感じている。ハイエクも述べているように、「民主主義において権利とは多数がそうと決定するものであると主張されてしまうのであれば、民主主義は煽動主義に堕落」してしまうのであり、権利と責任の不当なバランスによって周辺や弱者、あるいはもっと一般的に他者へ向けての暴力が発生することになると思われるのである。

自分自身が自由であることを求める主張の裏には、そのような自由が他者に対しても認められうることを、当然のごとく想定しなければならないわけで、他者の自由を認めるために、自分自身の自由を制限しなければならない状況が生じる可能性があることを認識しなければならない。自分の自由を主張するということは、自身の権利を獲得するということよりも、むしろ、自らに課すべき「弱い義務」を発生させているのだという認識が重要なのだ（ここで「弱い」とはなんらかの法的制限や罰則を伴わないこと）。「当たり前じゃん」みたいな思考停止、「キミはキミ、ボクはボク」といった悪しき相対主義に逃げ込んで、この「弱い義務」を軽んじたり開き直ったりする。そういう人が多すぎる（と感じる）。長い時間と多様な人間関係の中で、自分自身を、慎重に見直す過程が大切なのだ。

完全な正しさを目指すことよりも、いま目の前にある明らかにおかしなこととどのように向き合うことができるのか。センはそのことを問うている。「正しい」、「おかしい」と言ったとき、何を切り捨て拾っていることになるのか。その状況をとりまく情報の性質、量は十分か、すべての人がアクセスできるのか。自分と他者の立場を見つめながらそれができれば素晴らしいことであろう。

読めば読むほど理解が深まって、自分の考え方が広がっていく。おすすめの一冊。

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オレはこの本を読んで、意味がよく分からなかった。

しかし、アルマティア・センは、アダム・スミスが経済学をモラル・サイエンスだと捉えた、その考え方を、現代の経済学において継承している点で、注目に値する。

アダム・スミスの、各人の利己心を有効に活かすことが市場の活性化、経済社会全体の活性化になる、という考えを継承している。

彼の妻エマ・ジョージナ・ロスチャイルドは、第3代ロスチャイルド男爵ヴィクタ－の娘。経済史学者であり、アダム・スミスの専門家だ。

アルマティ・センは無神論者だ。

Wikipediaから
アマルティア・センの研究は、飢饉、人間開発理論、厚生経済学、貧困のメカニズム、男女の不平等、および政治的自由主義などである。

経済学は、
「人はいかに生きるべきか」
「人間にとっての善」
という倫理学と工学の2つの大きく異なる起源から派生しているとされている。

センは、前者を「モチベーションの倫理的な考え方」と呼び、後者を「それを達成するための手段」としている。

センは、現状の経済学を批判するが経済学のもつ分析力については否定していないし敬意を払っている。

彼がとる分析手法は経済学の一般的なテクニックに根ざしている。

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正義の課題は、単に完璧に公正な社会を達成することではなく、明らかにひどい不正義を防ぐことにある。

しかし忠実なのは良いが、ちょっと翻訳が複雑すぎ。



有名な例題　－　三人の子どもと一本の笛

アンだけが笛を吹くことができる
ボブは一番貧しくおもちゃを何も持っていない
カーラは、その笛を何ヶ月もかけて一生懸命作った

誰に笛を与えるのがふさわしいか

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◆10/30オンライン企画「経済乱世を生きる」で紹介されています。
https://www.youtube.com/watch?v=CAwIOji3lf4
本の詳細
https://www.akashi.co.jp/book/b96103.html

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図書館　https://ksucat2.kyoto-su.ac.jp/webopac/BB00862248