西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史
著者 阿部謹也
エッダ、サガに登場する粗野でたくましい死者のイメージは、中世後期の『黄金伝説』『奇跡をめぐる対話』では、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キ...
西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史
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商品説明
エッダ、サガに登場する粗野でたくましい死者のイメージは、中世後期の『黄金伝説』『奇跡をめぐる対話』では、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キリスト教と「贖罪規定書」そして告解の浸透……。「真実の告白が、権力による個人形成の核心となる」(M・フーコー)過程を探り、西欧的精神構造の根源を解き明かす。(講談社学術文庫)
目次
- はじめに
- 第一章 古ゲルマン社会の亡者たち
- 生者が墓に入る話/殺しのフラップが死んで幽霊に出ること/死者が妊娠すること/ソーロールヴ・ヒンケフスの話/荒野の軍勢/生者が死者を裁く/古アイスランド人の生と死/墓荒らしと墓塚の住人
- 第二章 死者の国と死生観
- 死者の三つの国/エッダ神話にみる彼岸のイメージ/聖なる山/栄光と名誉/死を恐れない理由/徘徊する亡者たち/彼岸の使者としての亡霊/亡霊の現れる場所/キリスト教に追われる土地の守護霊
- 第三章 キリスト教の浸透と死者のイメージの変化
- 古代ローマ人と死者/キリスト教における死後のイメージ/中世教会と亡霊/中世の死者供養/『黄金伝説』
- 第四章 中世民衆文化研究の方法と『奇跡をめぐる対話』
- 中世の民衆文化/エリートのための文献と民衆のための文献/『奇跡をめぐる対話』/死にゆく人の四つの型/修道院の秩序と天国の秩序/金銭の副葬/民衆教化の手段としての告白と説教/死者の報い/地獄の食事/煉獄の誕生
- 第五章 罪の意識と国家権力の確立
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西洋中世における「個人」対「国家権力」という社会変化を死者の国への信仰に準えてみた画期的な一冊です!
2020/02/28 11:04
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ヨーロッパにおける「個人」対「国家権力」という社会の変化を罪と罰という視点から考察した貴重な一冊です。実は、中世ヨーロッパでキリスト教化が進んでくると、これまで迷信の世界に生きてきた民衆に対して、キリスト教的生活に合わない点を国家が点検して、それを修正していくという「贖罪規定書」が現われました。もちろん、この規定に合うか合わないかは自己申告だったのですが、合わない場合は罰を課されました。同書では、キリスト教化で進んだ「贖罪規定書」以前の世界からそれ以降の世界への移り変わりを、強い死者の国の時代から弱い死者の国の時代というふうに準えて考察、明らかにしていくとっても興味深い書です。