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紙の本
西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史 (講談社学術文庫)
著者 阿部 謹也 (著)
エッダ、サガに登場するたくましい死者のイメージは、中世後期には、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キリスト教と「贖罪規定書」そして告解の浸透...
西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史 (講談社学術文庫)
西洋中世の罪と罰 亡霊の社会史
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商品説明
エッダ、サガに登場するたくましい死者のイメージは、中世後期には、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キリスト教と「贖罪規定書」そして告解の浸透…。西欧的精神構造の根源を解き明かす。【「TRC MARC」の商品解説】
エッダ、サガに登場する粗野でたくましい死者のイメージは、中世後期の『黄金伝説』『奇跡をめぐる対話』では、生者に助けを求める哀れな姿となる。その背景には何があったのか? キリスト教と「贖罪規定書」そして告解の浸透……。「真実の告白が、権力による個人形成の核心となる」(M・フーコー)過程を探り、西欧的精神構造の根源を解き明かす。(講談社学術文庫)
ミシェル・フーコーは、ヨーロッパにおける「個人」と「権力」の関係についてこう述べています。
「個人としての人間は、長いこと、他の人間たちに基準を求め、また他者との絆を顕示することで(家族・忠誠・庇護などの関係がそれだが)、自己の存在を確認してきた。ところが、彼が自分自身について語りか得るかあるいは語ることを余儀なくされている真実の言説によって、他人が彼を認証することになった。真実の告白は、権力による個人の形成という手続きの核心に登場してきたのである」
ヨーロッパにおいて12~13世紀にかけて、大きな変化が起こりました。8~9世紀に起こったカロリング・ルネサンス以降、ゲルマン社会はキリスト教化の動きが顕著になっていきます。そこで登場したのが、「贖罪規定書」です。俗信や魔術など迷信的な世界に生きる民衆の日常生活の細部にいたるまで点検し、個々の行動を裁き、罰を与えるものです。その介入は、「自発的な告解」にもとづくものでした。聖書にもとづく生活モデルに合わないことを罪とし、それに細かく罰を与えたのでした。こうすることで「個人」対「国家権力」が西洋的なあり方で成立していきました。
本書では、「贖罪規定書」以前の死者の国(元気な死者たちが暴れ回る)が、だんだんと弱い死者の国(地獄・煉獄からの助けを求める)へと変化していく様子を、様々な資料から読み解いていくものです。
エッダ、サガ、『奇跡をめぐる対話』、『黄金伝説』そして『贖罪規定書』と様々な資料を渉猟しながら、ヨーロッパの精神構造の根源へと迫ります。【商品解説】
目次
- はじめに
- 第一章 古ゲルマンの亡者たち
- 第二章 死者の国と死生観
- 第三章 キリスト教の浸透と死者のイメージの変化
- 第四章 中世民衆文化研究の方法と『奇跡をめぐる対 話』
- 第五章 罪の意識と国家権力の確立
- 第六章 キリスト教の教義とゲルマン的俗信との拮抗
- --贖罪規定書にみる俗信の姿
- 第七章 生き続ける死者たち
- あとがき
著者紹介
阿部 謹也
- 略歴
- (あべ きんや)
1935-2006。一橋大学経済学部卒業、同大学院社会学研究科博士課程修了。 一橋大学名誉教授・元学長。歴史学者。
著書に、『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』『「世間」とは何か』『「教養」とは何か』、『中世を旅する人びと』(サントリー学芸賞)、『中世の窓から』(大佛次郎賞) 、訳書に『ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら』(日本翻訳文化賞)など多数ある。
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西洋中世における「個人」対「国家権力」という社会変化を死者の国への信仰に準えてみた画期的な一冊です!
2020/02/28 11:04
3人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、ヨーロッパにおける「個人」対「国家権力」という社会の変化を罪と罰という視点から考察した貴重な一冊です。実は、中世ヨーロッパでキリスト教化が進んでくると、これまで迷信の世界に生きてきた民衆に対して、キリスト教的生活に合わない点を国家が点検して、それを修正していくという「贖罪規定書」が現われました。もちろん、この規定に合うか合わないかは自己申告だったのですが、合わない場合は罰を課されました。同書では、キリスト教化で進んだ「贖罪規定書」以前の世界からそれ以降の世界への移り変わりを、強い死者の国の時代から弱い死者の国の時代というふうに準えて考察、明らかにしていくとっても興味深い書です。