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投稿者:obandegans - この投稿者のレビュー一覧を見る
「2666」とにかく重い本です。秤に乗せると1.23kgある。
作者のロベルト・ポラーニョはチリ人。なるほど南米の作家と思わせるところ多々あります。2003年に50歳で死んでいるので、この2666が遺作と言うことになる。五部からなるこの小説は、それぞれのパートが独立したものであり、そして連動している。
第一部は欧州四か国からの男三人と女一人が、ドイツ人ノーベル賞候補作家アルチンボルディを追ってメキシコに向かう物語。男女の三角関係そして四角関係が複雑に絡み合う。しかし何も起こらない。アルチンボルディの謎は深まるばかり。
第二部には作者を思い起こさせるアマルフィターノという大学教授が中心となって進んでいく。彼を取り巻くメキシコ北部の街の空気、この不穏な空気がページをめくる度に重ねられた行く。物干紐に吊された幾何学本の不吉なイメージ。
第三部はアメリカ人の黒人新聞記者を通してアメリカサイドからみたメキシコが書かれていく。ボクシングの取材のはずがメキシコ北部サンタテレサで起こる連続女性レイプ殺人事件に関わっていく。緊張感と剣呑さがひしひしと伝わる。
第四部は正に悪夢。ここまでも夥しい登場人物の数だけれども、ここで一気に数百人が加わってくる。その大半は殺された女性被害者。名前と短いがその人の生前の様子と惨殺状況が記述されていく。延々と果てしなく何百人も…。
この悪夢に満ち満ちた物語は一体何なのだ。気になって「メキシコ、女性連続殺人事件」でグーグル検索してみた。そして驚愕する。「シウダーファレス女性連続殺人事件」現実の話だ。1993年以来500人以上の女性が殺されている。未解決。何度も真犯人とされる人物が逮捕されるが、殺人は止まない。
第五部は一転、物語性に溢れている。いくつもの物語が入子状に構成され、ドイツに1920年に生まれたハンス・ライターがいかにしてアルチンボルディになっていったのかが記述されていく。ライター自身の経験と入子の物語は今次大戦の凄惨な絵姿の記述に終始する。
最後の最後、物語がある方向に収斂して行く様を感じた時は、かなり気持を揺さぶられましたね。解体されたものを見ていたはずが、実はきちんと組み上げられていたものなんだと気付いた驚きも加わる。詳しいことは書かないことにするけれど、第五部の終わりは第一部に繋がっているんです。
本当、知らなかった。500人以上の女性被害者と言うが、ざっと見てみると不明者等含めた推計で5000人は超えてくるようだ。アメリカの格差、国境、自由貿易、麻薬組織、政府の腐敗…他人事では無い、日本企業もこの構造の中で大きく関わっている。
紙の本
その長さにも意味がある
2024/02/24 22:49
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
結果的にボラーニョの遺作となったこともあって集大成的な意味合いを帯びてしまったが、確かにそのように語りたくなる。とにかく長い作品であるが、その長さにも意味がある。
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お弁当箱を通り越して、これは重箱!
がんばるよ。§^。^§
と宣言して始まった日から何日かかったかしら・・・
今、ため息。
凄い本を読了してしまいました。
五つの構成から成り、それぞれが独立した形をとってはいましたが、
ひとつひとつのエピソードや入れ子式になっているストーリーは
まさしく、アルチンボルドの絵の中にある果実や野菜のようでした。
最後まで読み通さなければアルチンボルドも表現したように
人物の顔が見えてこない仕掛けになっていました。
飛ばし読みや斜め読みを頑として許さないその文章は
達成感の極みという快感に私を連れてきてくれて
今はもう本当にため息のみ。
腕や手のひらに残る鈍痛が本の存在感を如実に残してくれてはいますが、
それよりも胸のうちに残る様々な残像が痛いほどです。
もっと沢山の人に読んでもらいたい!
語り合いましょう。
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なんとも言い難い読後感。
螺旋階段のような本です。大きなすり鉢の内側にそって作られた螺旋階段を降りてゆくイメージ。最深部で謎が解き明かされることを信じてぐるぐる回りながら降りてゆくと、いつの間にか入口に戻っている。まるでエッシャーのだまし絵のように。途中の景色は美しくもあり、忌まわしくもあり。
ボラーニョの前2作を読んでからまた再読したい。
それまでに軽量化を希望…。
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A5版二段組855ページというボリュームを持つ超巨編。かなり無理して要約すれば、ベンノ・フォン・アルティンボルディという小説家をめぐる物語といえよう。作家は亡くなる前に全五章に及ぶ長編の一章を一巻とした全五巻の形で刊行するよう家族に言い残したという。
たしかに、ロレンス・ダレルの『アレクサンドリア四重奏』を想像してもらえればいいと思うが、あのスタイルで刊行されても特に問題はないように思う。一章がそれぞれ異なる話題や人物、それにスタイルを持って独立した小説になっているからだ。
第一章「批評家たちの部」は、ノーベル賞候補作家の一人にあげられながら人前に姿を見せないというトマス・ピンチョンを思わせる作家アルティンボルディの研究者四人が主人公。英仏伊西に住む女一人、男三人の批評家たちの三角関係ならぬ四角関係を都会的な恋愛小説風に描いた音楽でいう導入部。読者を小説の主たる舞台であるメキシコはソノラ州にあるサンタ・テレサという町に導く役割を果たす。
続く第二章「アマルフィターノの部」は、第一部の最後で批評家たちを待つメキシコ在住のアルティンボルディ研究者であるアマルフィターノが視点人物。別れた妻との関係や残された娘との生活を描く合間に、チリ人である自分が哲学教授としてサンタ・テレサで教鞭をとる意味についての自己省察が混じる。
第三章「フェイトの部」は、がらりと印象が変わって主人公はアフリカ系アメリカ人の記者フェイトが主人公。文化部の記者としてブラック・パンサーの伝説的人物をインタビュー中、死んだスポーツ記者の代わりにサンタ・テレサで行われるボクシングの観戦記事を書くことを命じられ、当地を訪れる。フェイトはそこでメキシコ人記者と付き合っているアマルフィターノの娘と出会う。
第四章「犯罪の部」は、サンタ・テレサとその郊外で多発するレイプ殺人を追う捜査陣をドキュメンタリー・タッチで描くクライム・サスペンス。二百とも三百ともいわれる事件の記録を羅列する即物的な記述に「異化」の効果がはたらいている。
そして、最終章「アルティンボルディの部」で、ようやくアルティンボルディ自身が登場する。作家アルティンボルディ誕生の経緯が伝記風に描かれることで、その他の章に登場する人物との関係が一気に明らかになる。名前が覚えられないほど多数の登場人物が、意外なところで出会っていたり、関係を持っていたりするが、隠されていた人物同士がここで結ばれ、人物相関図が浮かび上がるという仕掛け。一度読んだだけでは充分に楽しむことはできない。まずは、通して読み、気になった部分は再読時に当該部分に逐一当たって確認しながら進むといい。二段組855ページに再挑戦する気があれば、だが。
たしかに面白い小説だ。構成もよく考えられているし、人物造形も魅力的で印象に残る。また、メキシコという土地の乾ききった気候風土やそこに住む人々の気質や風俗も的確に捉えられている。執拗とも思えるほど書き込んでいく手法が、繰り返しによる強調効果を生み、厚みのある叙述となっている。
本、あるいは文学作品への言及も一つの特徴として上げられるだろう。一例を挙げれば、地下水路で繁殖するアリゲータを狩るハンターについての挿話がさりげなく語られるが、あれなど、ピンチョンから借りてきたエピソードにちがいない。読者の関心の度合いに応じて反応する記号が随所に埋め込まれている。それらを探すのも楽しい。
インターテクスチュアリティとでも言えばいいのだろうか、他の作家の作品や自作、映画その他も含めた先行テクストの引用、暗示、剽窃がテクストを開かれたものにしている。作中、一人の作家に語らせているが、すべてはすでに書かれている。いわば、すべてが盗用なのだ、という理論を実践して見せたのが、この作品といってもいいかもしれない。いずれにせよ、厖大なテクスト群を呑み込んだ超重量級の小説である。一冊にまとめたことにより、関連する記述を検索するには便利になったが、如何せん重い。持ち重りするなどというレベルではない。本というものの持つ重みを改めて思い知らされた。電子書籍に相応しい一冊かもしれない。
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読んでも読んでも終わらない 855 ページ。
作者のすべてが包括されているのであろう圧倒的な作品。
遺作であると知ると、より重みが増す。
読書を続けてきてよかった。
2008 年 第 33 回全米批評家協会賞小説部門受賞作品。
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読み終えた後一息ついて、はてどんな感想を述べたらいいものかとしみじみ思う。いや、別に感想を述べねばならないということでもないのだけれども。
この本は2段組であとがきと解説を抜いて850頁というかなりの大著であるにも関わらず、比較的するすると読めた。が、そのあらすじを説明するのは容易ではない。
全体で5つのセクションから成っていて、それらが互いにつながり、はたらきかける。それぞれのセクションが独立しているとも言えるけれど、共通して登場する人物・背景があるので読み進めていくと後々色々とつながることが出てくる。
しかし、埋め込まれている情報があまりにも膨大。実在の文学作品についてはもちろん、映画や音楽、料理や健康の話などを登場人物に語らせている。そこではおそらく筆者であるボラーニョの批判的意見も展開されているのだと思う。
5つのセクションではそれぞれ個々の面白さや特殊さがあるのだけれど、とりわけブッ飛んでいるのは第4部「犯罪の部」。5つのなかで最もページ数がさかれているのがこの4部なのだけれど、とにかく女性がレイプされて殺されまくる。1頁毎におそらく2〜3人は死んでいく。しかもその記述は事典の項目のようにひたすら羅列されていくものだから、「あれ?俺は何を読んでるんだ?」という感覚にすらなってしまう。
この犯罪というのは実際にメキシコで現在進行形で起きている事件をもとにしている。「シウダー・フアレス連続殺人」は今も犯人が捕まっておらず、被害者は増え続けている(〈マキラドーラ〉という多国籍企業下の製品組み立て工場の女工がレイプされて殺され、砂漠に捨てられるという連続殺人事件。こちらも参照:http://garth.cocolog-nifty.com/blog/2012/11/2666-c7b5.html)。
数多のモチーフと、少なくない数の登場人物、実在の作家や同年代の作家についての多くの言及を含んだ物語が架空の作家アルチンボルディを巡ってはじまる。凄惨な殺人をクールに描写したかと思うと、詩的で美しい情景を目前に広げてくれる(ちなみにメキシコの街の雰囲気はイニャリトゥの映画作品を勝手に脳内であてはめていた)。
正直一読して「わかった」と言うことは(少なくとも俺には)とてもできない。この文章を書いている今も「どのようにわからないのか」について考えている。
でも面白い。それは確かなことだ。
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長かった・・・。1ヶ月かかった。
重かった・・・。通勤電車で読むのはしんどかった。
読みやすかった・・・。歩みは遅いなりに読みやすい。
リーダビリティはある。ピンチョンみたいに、何書いてんだコイツ状態にはならなかった。
それぞれの部で重複構造になっているのが面白い。小説の中で小説が描かれる、それとは別に話の筋とは逸脱しているかなと思える部分もある。しかしながら第4部の延々と続く犯罪描写には(といいつつここにも重複構造はあるのだが)、「いつまで続くんかよぉ」と嘆いてしまいそうになる。
耐えながら辿り着いた結果は雲散霧消、というわけで第5部が見事。第1部と第2部が絡み、第3部と第4部が絡み合うといった構造全てが見事に収束する。「死」「永遠」「病気」「文学」、さまざまなキーワードが響く。最後から4ページ前の852ページを読んで思わず涙がこぼれたのは間違いない。あとから読み返しても泣けない、なぜ泣いたのかわからない。
長い2013年の冬だったなあ。
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原著は2004年に作者死後出版され、当時はボラーニョ(2003年50歳で死去)なんて名前知らなかった。
邦訳が2012年に出版されたときにSNSで祭りのようになって、手に入れながら積読にしていたのを10年越しに、一週間読書くらいしかできることがないのを好機を見做して、読んでみた。
鈍器並みの分厚さにも、読了は大変という口コミにも、圧倒されていたが、実際に読み始めてみたら意外とサクサク読み進められた。
難関と言われている「犯罪の部」も、てんでバラバラに記述されているわけでは決してなく、数名の軸となる人物が設定されているので、読みやすかった(時間さえあれば)。
夢野久作「ドグラ・マグラ」の「キチガイ地獄外道祭文」も難所難所と言われる割には結構読みやすいのと同じく、一度リズムに乗れば大丈夫。
wikipediaの概要とあらすじ、
藤ふくろう氏による ロベルト・ボラーニョ『2666』wiki という scrapbox、
https://scrapbox.io/RobertBolano2666/
同じくscrapbox の robertobolano2666、
https://scrapbox.io/robertobolano2666/
を事前に用意して、つまずいたら調べられるように構えていたが、その必要まったくなく。
一気読みするぶんにはむしろリーダビリティの高い小説だと感じた(時間さえあれば)。
以下箇条書きで。
・「批評家たちの部」は謎の作家アルチンボルディの批評家に見せられた人々を描くが、フランソワ・トリュフォーの「突然炎のごとく」(ジュールとジム)を思い出した。男性3人対女性1人(リズ・ノートン)のサークルクラッシャー。
・文化人ってややこしいなー。3Pセックスをする男性ふたり(ペルチエ、エスピノーサ)は、なんか読んでいて厭だなー。
・オクテの車椅子(モリーニ)とだけわかりあえたきっかけが、腕を切り落とした画家について、という点は、少し興味深い。好きで繋がった数名の中でも、さらに異なる好きで共鳴するあたり、サブカル界隈を思い出さざるをえない。
・「アマルフィターノの部」は、ロラの奔放さが、いい。突き抜けていて好きになる。
・頭がおかしくなる過程で、本を洗濯バサミで……(マルセル・デュシャンのレディメイド)、というのも映像的で印象深い。
・「フェイトの部」は、ジョーダン・ピールっぽいな、とイメージしていたら、作中で「スパイク・リーのクソ野郎」とか書かれていて、笑う。急遽穴埋めで入ったボクシング取材をを離れて、街の不穏さに気づくあたり、デヴィッド・リンチ「ツイン・ピークス」っぽいなと感じ始めていたら……。
・「犯罪の部」は、もとに「ツイン・ピークス」の、しかもつるべ撃ち! ときた。
・ここで振り返るに、1部から3部までは遠くからサンタテレサという街に向かうというベクトルが別個に描かれた上で、4部でサンタテレサに入り込んでみたら、世界で最も治安が悪い街に叩き込まれてしまった……と圧倒されてしまう。みながサンタテレサへ集まってくる構成はなんだか「ドラクエ4」っぽいなと思いきや、1から3章までの人物たちは特に取り上げられることなく、ただ淡々と事件を記述していく。ここにおいて例えば友成純一や平山夢明のように女性殺害の場面を描写、せず、乾いた��後報告を積み上げていく点に、作者の美意識を感じたりも、した。
・これまでは空間的に遠くからサンタテレサへ向かっていたが、最終部「アルチンボルディの部」では、時間的にも空間的にも遠い第2次世界大戦前夜から話が始まる。皆川博子の重厚さと、挿話羅列の圧倒性を感じた。【ネタバレ注意】少年期に身分差のあった友人フーゴ・ハルダーを経て、そのイトコのフォン・ツンペ男爵令嬢こそが、後にブービス夫人として現れるところとか、皆川博子っぽい。ここにおいて「批評家たちの部」と円環をなしてゴツい本を読んできたカタルシスが生まれる。また、「犯罪の部」で逮捕されたクラウス・ハースは、本名ハンス・ライター筆名アルチンボルディの、妹ロッテの子供、という件も、ぞわっと。あーアルチンボルディがサンタテレサに来た理由ってこれなんだな、彼を追って批評家たちも来たんだな、とカタルシスを得て読み終えたが。
・が、以上のようにまとめることができた事柄が、果たして作者が書きたかったことかといえば、全然違うと思う。
・むしろ場所も人物も時代も社会背景も描いた上で、描かなかった空白部を浮き上がらせることが、作者の意図なのだろうと思う。そこはわかる。
・バキュームされた後の真空のように、ブラックホールのように、言及しなかった物事……暴力の実相とか、人類が残した大量殺戮の痕跡とか……がぽっかりと浮かび上がるような書き方をしているのではないか。
・ゲルハルト・リヒターの「ビルケナウ」も連想。指示や直喩や隠喩ではなく「換喩」として暴力を描くと、書かないことで書く、隠すことで露にする、ような表現になるのかと思う。
・だが、個人的にはそこまで熱狂できる小説では、なかった。残念。よかった! 楽しかった! とまったく言えず、むしろ読むことでエグられた自分の身体部分がまだどこなのかよく判らない呆然とした感じ、だけが残っている。面白かったと一言で片づけることはできない、かといって自分の人生の重要な部分になるだろうと胸張っていえるほどの理解もできてない、なんだか草臥れた、厄介な読書経験になった。
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ついに読み終わった。最後の部で各部の繋がりが確認できて、5部を1冊の本にまとめる意味がわかった。すげーよ。
アルチンボルディの部が一番好きかな。読みやすいし。
登場人部が多いので何度も出てきそうな名前はメモを取り、犯罪の部に限っては被害者全員(身元不明者も)と死因等も書き留めてた。
かなりの人数を端折ったけど180人ほどのメモになってた。その大半は死人という結果に。
二週間足らずで読みきったけど、これは何回も何年もかけて読むべき本だな。犯罪の部が辛いけど。
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吉村萬壱先生がオススメですとおっしゃっていた本書を、やっと読み終えた。
2003年に50歳の若さで肝不全で死亡したロベルト・ボラーニョの遺作。死の1年後に出版された。
とにかく厚い!
855ページ、しかも2段組の本作品は、まさに枕級の厚さであり、手にとって思わず呻きを漏らすこの厚さは、弁当箱とも称されれる京極夏彦の本に勝るとも劣らない。
物語はこのように始まる。
フランス人大学生のペルチエは、無名の作家アルティンボルディの作品を読んでから、熱狂的なファンとなり、彼の作品の研究に没頭するようになる。やがてペルチエは大学教授となり、彼の研究や翻訳、評論の出版を行うが、同様にアルティンボルディに魅せられた研究者が、イタリア、スペイン、イギリスでも現れる。しかし、彼ら研究者の誰もアルチンボルディの姿を見たことがなく、彼の生い立ちは全くの謎のままであった。そんな時、メキシコのサンタテレサという都市にアルチンボルディが出現したとの情報が舞い込み、4人の研究者はサンタテレサに向かうが・・・。
冒頭の「批評家たちの部」から、最後の「アルティンボルディの部」まで、全体は独立した5部に分かれている。
しかし、お互いが関係しており、最後の部でそれぞれの部のつながりが解明されていく。
最後まで読み終えて、何が残ったのか、語るのは難しい。
英語版ウィキペディアによると、この本のテーマは『 violence and death 』である。
延々と繰り返される幾つもの死をくぐり抜けるような、そんな本である。
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超大作!端々で重なっている五つの中・長編が織り成す、重厚な物語。「批評家の部」も良いけど何と言っても最後の「アルチンボルディの部」が良い。
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半年くらいかけてようやく読了。
長いうえに全然さくさく読めないし、時間かけすぎて最初の方忘れてそうなもんだけど、意外とそうでもない。断片も全体も強烈な印象は残ってるんだけど、じゃあ何の話だったのかと聞かれてもよくわからない。よくわからないけど、なんとなく読んじゃう。ちょっとずつ見る夢みたい。
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何気なく符合するイメージやモチーフ、夢といった要素だけでここまで惹き込まれる 何気なく符合するイメージやモチーフ、夢といった要素だけでぐいぐい読ませるのはすごい。淡々と描かれているだけ、行の背後に貼り付く恐怖感が迫ってくる。読み終わったあと、思わず最初のページをまためくり直した。
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ふぅ、つかれた。
ようは五冊分の一冊を読んだので疲れた。図書館で借りたが、当然返却期限オーバー。申し訳ありませんでした。
読了後感は、、、なんとなくつながった感。でも、この曖昧な感覚なのに心安らかである。
一章一章の脈絡のなさに読み苦しいんだけど、どこかでつながりがあるから読み続けられてしまう。この苦しみは最後まで続く…。
けれど、最終章で救われる。
これがボラーニョの巧みさなのか。
一読では読み切れていないだろうから再読が必要だろうけれど、
ぐぬぬ、、、ってなる。
またいつの日にか。