紙の本
寛容さ、寛大さ、高潔
2015/10/02 18:54
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:RN205 - この投稿者のレビュー一覧を見る
原題の”Generosity: An Enhancement”、寛容さ、寛大さ、高潔を意味するタイトルが付けられた本書。
幸福の遺伝子を持った女性を巡る騒動から
人間の寛容さ、寛大さ、高潔について深く考えさせられる。
パワーズの他の本と共通した
理系と文系のハイブリット
完璧な語りの構成力は
本書でも変わらず素晴らしい。
紙の本
幸福とは何か
2024/02/24 22:43
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
幸福とは何か。人類はそのことを考え続けていたが、もしそれが遺伝子によって決定されるものだったとしたらどうだろうか。拍子抜けさせられだろうか。いかにもパワーズらしく文理融合の示唆に富む作品になっている。
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「エコーメイカー」が出たと思ったら、ずぐにこの本も出てうれしいかぎり。
私にとっては村上春樹よりリチャード・パワーズ、早速購入して読む。
本作はかなり科学の知識が導入されていて、なんだか理工系の本読んでいるような気になるのだが、それでもやはり人と人の距離感が近いというか、人の息づかいが感じられるのがパワーズらしい。なんか“冷たい温かさ”とでもいうか。
メタ・フィクションであることは冒頭から読んでいてわかったけど、本作の核になるのは物語るということ。小説に対して真摯に向き合っている作者の態度が伺える。
このところガルパンにはまってしまっていて、読書ペースガタ減りだこりゃ。
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幸福の遺伝子を持つといわれた、アルジェリア人の女学生。
彼女をめぐり、大学講師、カウンセラー、遺伝子解析会社の社長、テレビキャスターなど様々な人が絡み合う。
文学の哲学?
科学の哲学?
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読者力を試される作品。
本作品と「エコー・メイカー」の 2 作品しかまだ読んでいないが、
パワーズは圧倒的な力量を持つ作家だ。
メタ視点を持つ作品は好きだが、
視線の先の物語が充実してこそのメタ視点、
おいそれと使えるテクニックではないと思うが、
本作品では見事な読後感を味わえる。
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小説の中に世界がおさまっていて、尚且つ広がりを持っている。そういう小説を書けるのは私が知っているところではピンチョン、稲垣足穂、そしてこの人。
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巻頭にカミュの言葉。謎の女性はアルジェリア出身。作文講義の教師が不幸な生い立ちにも関わらず前向きな性格の女学生の存在に注目する。彼女はあえて「美人ではない」と表現される。外見から受け取る女性の恩恵はここでは影響されないことが示される。アルジェリア出身というのは苦難な生い立ちの代名詞。
チクセントミハイのポジティブ心理学が話題になったのは数年前からなのでちょうど流行に乗った内容なのかもしれない。
この物語を描いているのは誰か。幸福な遺伝子を持つタッサか、それを見つめる作家か、それともパワーズ本人の神のような手によるものか。
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「そうは言っても、あの場所はとても美しい。できれば皆に間近で、港から町を見てもらいたいと私は思う。きっと誰もが感動するだろう。生命にあふれる町。私たちの家(シェ・ヌー)。」
ときどき英語の詩や文章の中であえてフランス語で“chez nous”と表現を見かけるのだが、英語がネイティブの人にはどういうイメージが喚起されているのだろうか。「私たちの家」…それは私とその家族だけではなくて旅人もいらっしゃいというような朗らかな雰囲気のような気がするのだが。ムーミン谷のような。
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書くことと生きることに背を向けてしまった物書きが、サラリーマン講師として出会ったアルジェリア人女学生。
遠い異国の過酷な歴史と現状、それに対して彼女のもつ揺るぎない明るさに、彼は困惑する。
そして魅せられる。
確信をもって読み進められるメタフィクション。
踊るように歩き、泳ぎまわる、豊かで確固たる手ざわりをもった物語。
物語。
こういうものを読みたい、といつも思っている。
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挫折した作家ラッセル・ストーンの、自信のないカレッジ講師っぷりが面白い。ということはだ、僕が高校生の時の、あの先生やあの先生も、手探りで悩みながら教えていたんだろうなぁと気付く。それが分かっただけでもこの本を読んだ意味がある。
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正直に言って、翻訳はあまりよくありません。文章の中で「彼」とか「彼女」とか書いてある時に誰を指しているのかがわかりにくいというとんでもなく基本的な部分の翻訳で悩んでは数ページ前から読み返さざるを得ません。すみません、木原善彦さん、ここ、今後よろしくお願いします。
とはいえ。リチャード・パワーズを読み続けている人にはわかってもらえると思いますが、どこに話を持っていこうとしているのか、という疑問を持ったまま本の3分の2くらいまで進みます。そして、そこなの? そっちなの? と確信を持った辺りから物語の全貌を感じ、結果に向かって進みます。毎度、そうなんです。
あ、そもそも、出版社の本の紹介文が全然本の中身をわかってない感じ…。
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「幸福の遺伝子」を持つ少女と男性講師の物語。「幸福の遺伝子」とは一体……結論はやや肩透かし感があるが、SNSやテレビなどのメディアが絡んでくるあたりが面白い。
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いま読み終わったところ。
タッサと「私」と暗くなってゆくアトラス山脈をみている。わたしを置いて、物語がむこうへ行ってしまうそれまでの間。
全能で不可侵で短所は人間的魅力のひとつでしかなかった登場人物たちが窮地に追い込まれ、どうなるんだろうと胸が痛かったけど…最後のページで彼らはどんどん消えて行ってしまった。
この三人でみる夕日は、原始時代の人間がみていた夕日と同じもの。きっとタッサと話しているとたのしくなれるし、離れれば嫉妬に苦しむんだろうと思うけど、今はどうでもいいな。幸福を人と比べて悩ましくなるのはもういいな。苦しいのももういいな。ただ夕日を見ているだけ。理由はいらない。
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初めてこの作家さんの作品を読んだ。
が、難しい。話は面白そうなのに、ページが進むごとにあたまがややこしくなっていく。人の多さと、物語の構造のためだとおもう。
返却期限に追われて読破したけれど、最後らへんはよく分からなかった。
時間があるときに、腰を据えてもう一度読みたい。
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幸福であることは遺伝子で決まるのだろうか?
幸福になれる遺伝子は存在するのだろうか?
この問いを掲げながら、物語を書くこと、映像をとること、SNS世界の狭さが描かれていく。
人生を歩むことが、自分の物語を持つことならば、私たちひとりひとりはどれぐらい創造して行けるのだろう。そして、それをどこに書くのだろう?SNSでフォロワーの居ないパブリックにポスト?宙に指で?
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誰もが望む幸福。
幸福な大学生を巡って、教師、カウンセラー、科学者、テレビ関係者、宗教家たちが騒動を繰り広げる。
幸福の遺伝子を同定し、最新の科学的技術を使って、幸福を得ようとする人間の欲望は、当然の権利なのか。
そもそも幸福とは、どういうものなのか。
考えさせられる。