紙の本
青春松茸物語
2016/03/10 16:45
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投稿者:szk - この投稿者のレビュー一覧を見る
とんでもなく堅物で、自分が賢く誰よりも抜きん出てると思い込んでたが故、江戸詰めを解かれ地元尾張藩にUターン辞令。そこで就かされた職が御松茸同心。尾張藩の名産松茸の禄を増やすようにとのお達し。山のことましてや松茸のことなど全くわからずクサクサしながらも、村民や三べえの力を借りながら取り組んでいく。取り組む内に松茸の美味さと素晴らしさ、小馬鹿にしていた村民や亡き父親の偉大さ、その拠り所である大殿の存在に気づき江戸への栄転を断るまでの松茸同心になる。頭でっかちだった青年が全うに成長していく、青春「松茸」物語。
紙の本
本格ものを期待すると裏切られるが、楽しく読めることは読める。
2015/08/30 12:34
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
「恋歌」「阿蘭陀西鶴」とすごい作品が続いた次は、やや軽めの作品になった。
江戸時代の松茸栽培や尾張藩の事情などについてよく調べられてはいるけど、読み応え充分とはいえない。その分読みやすくて楽しい作品に仕上がっているともいえる。御松茸同心に「飛ばされた」主人公が段々松茸にはまっていく過程がおもしろい。ただ、元藩主については華美を極めて咎めを受けたいっぽう、実は財政立て直しをやろうとしていた…というとってつけた美談調の設定が加わっていたのがややつじつま合わせの感あり。
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良妻賢母が一転,「翔んでる女」(古!)になった義母の稲さんにもう一度会いたかったなあ。
それにしても小四郎のマザコンいつ治るんでしょうか。
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江戸で生まれ育ち、ある時『御松茸同心』を命ぜられ
国元の山の中に左遷される尾張藩士、小四郎の成長物語。
尾張藩…江戸藩邸での一コマ。
うちの会社だ…と絶句…。
『あの緩さ、わざとか』と小四郎がつぶやくように
毎日私もうんざりしているもので。
そして小四郎の父と親交があり、
なにかと小四郎の所に立ち寄る三べえ。(勘兵衛・藤兵衛・伝兵衛)
いるいる、こういうオジサマ方。
時代が江戸時代なんて関係ないんです。
私にとってはまさにお仕事小説でした。
小さい頃から頭がよく、周りの人々を小馬鹿にし、
自分こそが上に立つべき者という
自信過剰なところがある小四郎。
江戸育ちで虫が大嫌いで、山になど入ったこともないのに、
藩の特産品である松茸を、何としてでも豊作にせねばならないことになり。
高いプライドからくる周囲との衝突。
融通のきかなさ、可愛げのなさからくる孤立。
山の中の初心者同然の知識への焦り。
からまわりしながらも、見て勉強し、
ある覚書を発見して、松茸の本質を見出していく。
小四郎が思いもよらない方向に変化したのも
左遷に腐ることなく、一心に御松茸と向き合ったから。
三ベえも、大殿も、村の人々もみんな
こうと一方向だけで決めつけてしまっては、
本来の人物像が見えにくくなってしまう。
私の会社も緩いだけではないのかも…と
少し希望が見えてくる一冊です。
山と共に生きてきた権左衛門や千草の言葉が
小四郎を通して私に響きました。
大殿の考え方や藩の民との繋がりに、熱いものがこみ上げます。
正論ばかりでは、やはり何も動かないんですね。
時にビジネス書より、小説から仕事のヒントをもらえたりしますが、
この物語、参考になりました。
自然界の「取引」。仕事で活用させてもらいます。
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才気走った所が鼻に付き、おもねる所の無い主人公・小四郎は案の定、江戸務めから国元尾張の松茸同心に左遷される。思い通りに行かない左遷の日々でも暗くならない話運びなので救われますが、それでもやはりなんとか小四郎が出世してくれないものかと気を揉みます。なのでラストの身の振り方には悶々としてしまいました。小四郎が主人公でしたが、大殿・宗春の“松茸狩り”が際立っていて宗春に掻っ攫われた印象も(笑)…。
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「 逆様だがや。
そもそも、
人が草木の振舞いを真似とるんだろう。
やけに威張っとるけど、
この世から草木が無うなったら
一日たりとも生きてはいけぬのは人でしょう。」
読み進めてこの文章に辿り着き、
この物語の奥ゆかしさに
感極まりながら
最高の巻尾に至る。
素晴らしい読書体験の一時でした。
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朝井まかて作品初読み。
漢字の読み方やら時代劇は混乱するので慣れるまでが読み進むのに時間がかかる。。。
暗く深刻になりそうなストーリーを三べえたちのユーモラスな天真爛漫で軽く読める作品となっている。
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帯のあおり文句を読むと、松茸をどれだけとれるか競争?!みたいな印象でしたが、そうではなかった。仕事選びは現代よりもままならぬ時代、榊原小四郎の左遷された先は、尾張徳川家の御用林。ここで松茸を御用達しなければならないというのです。
そこで出会ったのは、小四郎がこれまで知らない世界の人たちでした。はじめはふてくされていたけれど、ある書物に出会ってから少しずつ運命が変わり始めます。
三べえの笑いと三河弁のおもしろさ、謎の人物栄ノ進、実直な権左右衛門と、はねっかえりな孫娘千種。
そして尾張徳川家の大殿さま。
一生懸命仕事をしていればきっと誰かが見ていてくれる。そんなエールを感じながら、最後まで面白く読めました。どんどんシャープになっていくように思える作家さんです。次回作も楽しみです。
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面白かったです。御松茸同心って初めて聞きました。そういうのもあるのですね。直接本とは関係ないですが、世の中に無くてもいい仕事は無いのだなぁと思いました。
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尾張藩徳川宗春公への賛と松茸の安定的収穫へのあれこれ。
鼻持ちならない小四郎が左遷されて御松茸同心となるが、そこで人間として成長していくのがお約束ごとながら面白かった。
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頭の良さを鼻にかけ周りの人々を馬鹿にしていた小四郎だが、ある日御松茸同心に任命(左遷)されてしまう。早くこんな仕事終わらせてやる、と1人で松林を手入れする小四郎。そんな姿が、図らずも村人たちの心を動かしていく。「これ以上、矜りを失うことはすまい。」憎たらしかった小四郎もしだいに成長していく。徳川宗春、長年蟄居していてもさすがだなぁ。小四郎が初めて収穫して食べた松茸が本当に美味しそう。
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江戸中期、松茸は幕府への貴重な献上品であり、松茸狩は尾張藩主が好む一大行事であった。算術が得意な江戸育ちの尾張藩士・小四郎はそれを生かして藩財政の立て直しを夢見ていたが、なぜか「御松茸同心」を拝命。尾張の山守に助けられながらも松茸不作の原因を探る日々が始まった。やがて小四郎は、山に魅せられ、自分の生きる道を切り開いていく――。
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頭の切れる若い藩士が、松茸とりの役回りになっちゃうフランクな時代モノ。
最初は人を馬鹿にしたり、やる気がなかったり、几帳面すぎたり、、の主人公小四郎。だが、新しい生活で尾張の人たちと触れ合ったり、父の書いた覚書を読みふけったりするうちに、自分や周りに対しての考えが変わっていく。
環境によって人は変われるかもしれないけど、実際変わるためにはその人の根本にあるものが試される。松茸の菌糸のように、最初は見えなかった小四郎の根性や純粋な部分が、最後に収穫されるような、清々しい作品。
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尾張藩松茸同心に左遷させられた武士のお仕事小説。
題材が面白い。上昇志向が強く周りがみんなアホに見える自意識の強い若侍が尾張の弩田舎に左遷させられる。郷土の松茸管理を任されるが只の中間管理職。
松茸に関する知識は全くなく、山歩きは苦手。しかも時代は江戸時代中期であるから茸に関する学問も無いに等しい。
そこから手探りで松茸の育て方を調べていくのだが、余計なプライドが邪魔して中々村人の協力を得られない。
同輩が出世していくなか、ズタズタになったプライドは捨てて地道に山中を歩き徐々に知識を深めていく。そしてなんと9年もの歳月が流れ遂に村人に信頼された若侍は山を改革して松茸の大豊作をもたらす。
いいねぇ~、こういう成功話は。軽妙な語り口も面白い。まるっきり現代語でみんな喋っているので話に入りやすいし登場人物も親しみやすい。
最後に加増も断り、我が道を進むことを決心しながらちょっぴり後悔する、人間臭いのもgood!なかなかいいです。
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江戸時代、尾張藩の御松茸同心の話。コミカルな話をベースに、過度な演出なく、主人公や周囲の人の緩やかな変化が描かれる。
脇役がどこかで活躍をするんだろうなぁと思ったら、別にそんな伏線もなく、込み入っていない分、肩の力を抜きさらりと読めて後味もよかった。