- 販売開始日: 2015/01/23
- 出版社: 光文社
- ISBN:978-4-334-92987-9
心臓異色
著者 中島たい子
スーツ姿から「会社員」と呼ばれた稀代の大泥棒は、運命の女性と出会い泥棒から足を洗うことに。二人が見つけた新居は、過去に盗みに入ったことのある中古の一軒家だった――(「家を...
心臓異色
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商品説明
スーツ姿から「会社員」と呼ばれた稀代の大泥棒は、運命の女性と出会い泥棒から足を洗うことに。二人が見つけた新居は、過去に盗みに入ったことのある中古の一軒家だった――(「家を盗んだ男」)。ユーズド人工心臓を移植してから、食べ物の好みや行動が変わってしまった男。心配する恋人の説得で、その心臓の前のオーナーをたどってみると――(「心臓異色」)。異色作家が描く、どこか懐かしくてすこし不思議な短編集。
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ストーリーと登場人物の性格が魅力的で、その上不思議テイストあり、ひねったユーモアありの素敵な短編集
2015/08/22 18:18
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投稿者:紗螺 - この投稿者のレビュー一覧を見る
いい意味で予想外の作品だった。少し変わったことが起こる話、ぐらいに考えていたのだが、設定がそもそも現代ではなく、とんでもない技術が当たり前になっている世の中のお話がほとんど。かといって話の主眼はSF的要素にあるのではなく、あくまでそういう変わったことを生かしている、という雰囲気に好感が持てる。
7つの作品それぞれによかったが、特に気に入ったのは「それが進化」「踊るスタジアム」だろうか。「それが進化」ではアイポンという万能の機械を人々が使う世の中で、何十年も前の歩けるだけのロボットに主人公が魅せられる。旧型ロボットにまず主人公が、そして最初はそれを粗大ごみ扱いしてた奥さんも惹きつけられて手放せなくなる、そして最後にそのロボットが声を出すという小さな進化を見せる…というのがいい。高度な機械を生み出しておきながら、そのわずらわしさを感じるようになる皮肉もこめられている話。
「踊るスタジアム」は貧乏な国が国際的なスポーツ競技をやることになるが、スタジアムをつくるなんて到底無理、ということで苦肉の策で映像でごまかすのだが、延長戦に入ったところで映像のトリックが解けてしまう話。ところがスタジアムの一部が崩れてさあ大変、と思ったらその下には…という、アクシデントの重なる一連の出来事を寓話タッチで描いた話。かつての贅沢の末に現在はどうしようもなく金がないという国のペーソスをにじませながらも話の雰囲気は明るく、純粋にお話として楽しめる。出てくる人物が皆好人物なのがいい。貧乏生活の中でも明るさを失っていない人々や純粋に大会を楽しみにする子どもの姿が、厭味なく描かれているのは寓話的な書き方だからこそ。
2つの作品を例に挙げたが、他の作品もユーモアやウィットが感じられて心地よかった。しかも、基本的には独立した短編の集まりなのだが、最後に小さな繋がりがあることが判明する。それを知った時の楽しさも大きかった。