文系の壁
著者 養老孟司
「理系は言葉ではなく、論理で通じ合う」「他者の認識を実体験する技術で、人間の認知は進化する。」「細胞や脳のしくみから政治経済を考える」「STAP細胞研究は生物学ではない」...
文系の壁
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「理系は言葉ではなく、論理で通じ合う」「他者の認識を実体験する技術で、人間の認知は進化する。」「細胞や脳のしくみから政治経済を考える」「STAP細胞研究は生物学ではない」……。解剖学者養老孟司が、言葉、現実、社会、科学研究において、多くの文系の意識外にあるような概念を、理系の知性と語り合う。『すべてがFになる』などの小説で知られる工学博士森博嗣、手軽にバーチャルリアリティが体験できるデバイス(段ボール製)を考案した脳科学者藤井直敬、話題作『なめらかな社会とその敵』の著者で、「スマートニュース」の運営者でもある鈴木健、『捏造の科学者 STAP細胞事件』で大宅壮一ノンフィクション賞を受賞した毎日新聞記者・須田桃子。「前提」を揺さぶる思考を生む四つの議論。
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もはや文系の悪口になってしまっている
2015/12/19 00:44
4人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Spanish moon - この投稿者のレビュー一覧を見る
そもそも、文系の人間をその場に一人も呼ばずに、理系の人間どうしで勝手に人間社会の問題や文科系学問そのものが内包する問題を語るという企画自体に無理があると思う。
森博嗣さんとの対談で養老は「特に日本の文系に言えることですが、彼らは前提の吟味をしませんね」と発言しているが、彼は文科系の「学問」(小説や芸術ではなく、哲学や政治学や法学や社会学など)を学んだうえでそんな発言をしているのだろうかと、思わず首をかしげてしまう。彼は弁護士に「憲法の前提は何か」と問うているが、弁護士は学者でもないし司法研修所の教官でもないので、実務に関係のない知識など持っているはずがない。町医者に「人間はいつから類人猿と分岐して進化したのか」と訊くようなものだ。一人前に「評論家」を自称し、これだけたくさんの著書を書いている養老ほどのお方なら、街の弁護士に聞く前にご自身で調べたらよかったのではないか。評論家でいらっしゃるのに、予備調査は怠る。そういうところに教養の無さ、あるいは知に対する怠慢と傲慢が感じられて、養老の人柄自体に不信感を抱きかねない。
こうした例を一つ一つ上げようと思えばきりがないのでやめておくが、とにかくこの度4つの対談を読んで、改めて養老という人間が、ある時点から完全に成長の止まったミイラのような人間なのだなと感じた。東大医学部に入ったところまでは優秀だったのかもしれないが、そこから先は向学心というものがまるで無かったのだろう。ところどころで無学をさらし、痴態を演じている。
養老の演じた痴態は無学だけによるものではない。4人目の毎日新聞記者との対談では、本来ホストとして聞き役に回らねばならないはずの養老が、あろうことか終始語り続け、ゲストたる記者が完全に聞き役に回る羽目になっている(無意識に聞き役に回ってしまうのは、新聞記者の職業病なのかもしれないが、そこをサポートするのが養老の役目ではないのか)。養老は養老で生まれついての話したがり屋なのだろうけれども、ともかくそういう点に配慮が及ばないあたりが、まさしく典型的な専門バカである。養老はもう少し人と話す訓練をした方が良い。最後の対談は、文字通り、養老の独「壇」場となっており、たった一人でここまで語りたいのであれば自著で好きなだけ語れば良いではないかと思った。
タイトルの『文系の壁』というのは、おそらく、理系の殻に閉じこもって井の中の蛙でいる養老孟司という人間が、心に壁を作っていますよ、という意味なのだろう。文系の人たちとの間に、分厚い心の壁を。でなきゃ、文系の人間を最初からハブいて文系の悪口を言い合おうなどという「斬新な」発想は、絶対に出てこないだろう。ここはさすが養老先生というか、皮肉でもなんでもなく素直に感嘆してしまう。自分の狭い見識の中で、いかに大衆に訴えるか、ということを考えるのは一流である。この辺のテクニックは大いに見習いたいところだ。