紙の本
このエッセイそのものが映画みたいだ。
2021/03/08 15:26
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投稿者:タオミチル - この投稿者のレビュー一覧を見る
映画監督・西川美和の映画を巡るエッセイ集。特に、表題となったxにヒーロー、裸、オーディションetcとコトバを入れて描かれた6篇は秀逸。そのままオムニバス映画に仕立ててほしい...というか映画そのものであった。オダギリジョー、香川照之を主演に撮った『ゆれる』のプロダクションノートも収録、映画製作の裏側が垣間見られて興味深い。
紙の本
西川美和さんの小説も映画も大好き!
2016/11/18 11:37
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投稿者:GORI - この投稿者のレビュー一覧を見る
あんなに素晴らしい映画を作る監督なのに、うぬぼれが無く、何方かと言えば普通の人として語られている。
そんな普通の人が、いい脚本を書き直し続け、いい映画を作り続けたいという強い気持ちが、作品になっているんだと思います。
「ゆれる」の誕生秘話楽しく読みました。
香川さん、オダギリジョーさん、役者さん達の凄み、ミステリアスな雰囲気を感じられました。
香川さんが西川さんに脚本を元に戻して欲しいと頼む頼み方、本当だったら香川さん凄い!
どんな人もあの頼み方をされたら、元に戻しても良いかなあと思ってしまいますよね(笑)
何度も観ている映画ですがもう一度観たくなりますね。
「夢売る二人」の松たか子さんのフォークリフトを運転するシーンには、たくさんの物語があって笑ってしまいました。
ウエイトリフティングに拘って抜擢された俳優さんのその後の活躍も大変気になります。
ますます映画をもっと観たくなり、新作を楽しみになり、もっと深く観たくなる一冊です。
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「夢売るふたり」を撮り終えた後に纏められたエッセイ集。
ゆれるは小説を読んで、まだ映画は観れてないけど、香川照之、オダギリジョーに真木よう子の3人の役者について、この本で描かれていて、より一層観たくなった。
夢売るふたりのオーディション、免許取得の裏話は面白かった。
映画はスクリーンに映し出された向こう側の世界だったけど、この本を読んで少し身近にも思えたし、奥深さも感じられた。
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読んでたら、「ゆれる」がよみがえってきました。本書の夢の話にはぞくぞく。こんな夢見たら、何が何でも作品に。なってよかったと思う。運命だと思う。だって名作だもの。登場人物ひとりひとりの表情や行動、読み取れない真実、子どものときのフィルム、兄弟の手と手、そしてラストシーン。橋とともに、感情も、関係も、運命も…ゆれるせつなさと希望のような…うーん、表現できないほど好きな作品です。あ、でも松さんのほうも、また観たくなりました。本書を読んで。
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映画監督の西川美和さんのエッセイ。
彼女が撮った「ゆれる」という作品が好きで、
自分の夢が作成の原点と知ってたけれど、
ここまで細かく夢の内容覚えてるもんなのか?
映画でしっかり人を描ける方なので、
様々な観察眼はさすがだなと思える反面、
人としての弱さというか人間らしさを
感じることできるエッセイ。
完璧そうでそうじゃない
西川美和さんの人となりが垣間見えたような気がします。
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【2016年】
この本に出てくる香川照之、なんなんだよ。その熱意、西川監督に伝わった言葉の質量感と切迫感。2015年はまぁいい仕事ができた、なんてほんわかしていたすべての自分をよろこんで手放せる。ぼくはまだまだダメで、まだまだ創りたい。いつか、香川照之とも西川監督とも。いつか。いつか。
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自分が山になんとか登れていることに満足していた。自分がどんな山に登っているか、なんて意識できてなかった。もっと登ろう。楽しもう。
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たった数秒のワンシーンのために注ぐ膨大な時間と努力をこの人は「自分には才能がない、天才でないから」と言う。それこそが才能なのに。ゆれる、も夢売るふたり、も。観返したくなった。この人のこだわりの詰まった苦しみの時間を想いながら。
『一度、何らかの深いところに潜ったのだな、』なんていう、人の胸の奥底にひっそりと横たわる感情を掘り起こすのが上手すぎる。才能だ。だからこそ彼女の作る映画も小説も、ぐっときてしまうのだ。
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西川美和さんのエッセイを読んだ。論理的でスピード感があり、力強い文章。映画制作の過酷な現場や監督の苦悩が垣間見れる貴重な一冊だと思う。「ゆれる」を見返したくなった。
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産業としての映画、芸術としての映画、その間で揺れ動きながら制作に臨む監督の生き様がすごくかっこいい。普段から、ノイズ(いい意味で)をたくさん吸収して、咀嚼して、映画に詰め込んでいる人なんだなあと思った。
いろいろなノイズが溢れてて、そこから人間の深い深いところを読み取れるのが映画の面白いとこだし、そういう映画をいまの日本で産み落とせるって、ほんとすごい。
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『蛇イチゴ』『ゆれる』『ディア・ドクター』『夢売るふたり』
をDVD で見た。監督が 西川美和だった。
濃密な人間関係をえぐり出す西川美和が、書いたエッセイ。
どんな感じの文を書くか と思って読み始めたら、
朝青龍の ヒールについて、なんで ヒールにされるの?
ヒールがヒールと思っていないけど、ヒールにされてしまう。
そのことについて、愛着を持って、濃密に綴る。
なるほど、この感性は、どこかで、ねじ曲げられて、
屈折して、自分の体内に、なにものかを押さえ込んでいる と思わせた。
その得体の知れないものに、いらだったり、ひりひりしたり、
独特の こころの中の揺らぎが、「ヒール」や「女子重量挙げ選手」に
共鳴 共振したりするのだろう。
裸のエッセイもいい感じだ。
きれいな裸でなく 正直に 生活の陰をひきづっている裸に注目する。
裸って、やはり、正体 つまり人生をあらわすんだよね。
それを描いていく筆致が なんともいえず 鋭い。
谷ナオミの今のこだわりも、「裸」を売り物にした生業を心得ている。
オーディションでみえた 少女の ニンゲンへの洞察が、
きちんと生きてきた 証しが 見え隠れする。
そういう 中にあるものを 的確に つかみ出そうとする。
西川美和の したたかな 観察眼に 驚く。
映画 ではなく、フィルムに 想いがあり、
デジタルの安易さが 好きになれない。
途中に 気の緩んだような 昔のエッセイがあり
それが 刺身のつまみたいで 軽く読める。
ゆれるの 脚本から キャスティング そして
香川照之との出会い 鬼が来た。
オダギリジョーの なんともいえない 風情を
きちんと 文字の中に 閉じ込めていく手腕。
こういう したたかな 感性があるから、
ちょっと、質感の違う 映画が きちんと生まれるのか
と 納得した。
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「役者がこんなことを言うのはおかしい。俺だっていつもなら脚本に、監督の演出にすべて従うことにしている
。けれど、もしも一生の内、役者が脚本に対して意見することが許されるカードが、仮に三枚だけ与えられているものだとしたら、俺は迷わずその一枚を今ここで使うよ。・・・・・」
以上が、映画『ゆれる』での香川照之氏と監督とのやり取り
『夢売るふたり』ヒロインを演じた松たか子さんが、役柄でフォークリフトを運転するシーンで、実際に監督と共に免許を取得する話など、興味深く堪能できた。
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自分の中にある、醜さ、いやらしさ、至らなさを露悪的に描く人なんだろうか。
書き物に共感を覚えるけれど、実物の西川さんは、すらりと立っていて、同世代の冴えないおっさんの共感など峻拒するんだろうな。
なんだか、太宰治の恥、みたいな感想になってしまった。
また、この本の「足りない女」というエッセイに書かれた、西川さんが向田邦子さんに向ける思いと、自分が西川さんに感じる思いは、驚くほど相似形のものだった。
まぁ、なんとかやってくしかないんだと思う。
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ドイツの混浴温泉で同郷の男性と出会ってしまった時の、素っ裸の言葉を交わさない腹のさぐりあいのエピソードが好きでした
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取材や脚本の執筆、撮影など映画制作現場でのエピソードをはじめ、影響を受けた映画や本、作家について鋭い観察眼で描く、気鋭映画監督の初エッセイ集。
独特な空気感を漂わす映画作品と同様に、文章力にも味わいがある。こだわる時はとことんと、逆に、えっいいのと思うぐらいあっさりの時もある。不思議な面白さがあるエッセイ。
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『遠きにありて』に次いで二冊目。
著者の本業(映画監督)に関するエッセイだ。特に前半、本書タイトルにもなっている連載部分が面白い。変数「x」に、「ヒーロー」「裸」「オーディション」「アプローチ」「音」など、さまざまなテーマを当てはめて語っていく。
まだまだ大家とは言い難い、いつまでも“若手”と言われる著者の、本業だけに深き悩みが生々しい。
特に、今回面白かったは、「音」の章だ。
障碍者に向けてガイダンスを付ける作業で、著者はさまざなことに気づかされる。自分の撮った作品のワンシーンにガイダンスを付けるのであるが、
「自分が映画の中で、一体何を見せて、何を聴かせているのかということを、改めてワンカットずつ逐一検証させられることになった」
と語る。これは解説すべきことなのか、どうなのか?と悩んだであろうということが容易に想像が働く。そういう作業をしていて当然著者も、以下の思いに至る。
「私は、言葉の威力といものが怖い。ガイダンスや字幕のように短いセンテンスになればなるほど、描写力のエッジは強くなり、ずばりと型にはめていく霊力に似たものを発揮する。それゆえに、「言葉」に圧倒され、潰されていくのだ。映画の中の、「得も言われぬもの」が。それこそが、私たちが、死にもの狂いで捉えている映画の真骨頂なのに。」
映画は、あるいは、文章であれ、絵画であれ、あらゆる「作品」は、どこまでガイダンスが必要なのかと大いに考えさせられる。
作品そのものが、鑑賞者の知覚を刺激しながらも、新たな気づきに導くだけのガイダンスも含んだものになれば、何よりなのだろう。
だがしかし、そんな製作側の意図のままに納得してしまうのもどうかとも思うところ。著者の先輩が指摘する言葉もイミシンである。
「作り手が初めから落とし所のわかっているドキュメンタリーってつまんないぞ、と。」
観る側も、作意も理解した上で、それをも超越した新たな何かを期待している。