紙の本
3つの時代を楽しめました
2021/05/15 14:51
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投稿者:higassi - この投稿者のレビュー一覧を見る
行き来する3つの時代(2015年-1985年-1965年)のそれぞれがうまく描かれた長編。解説にもある通り小池真理子さんの「恋」だったり、ときには「砂の器」や「博士の愛した数式」だったりを思い出しました。多少細部を都合良くまとめてしまっている感もあり(殺人事件なのにそんなに追及されないモノかなとか?)。著者の他の作品も読んでみようと思います。
紙の本
救われないストーリー
2018/06/24 15:39
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投稿者:たっきい - この投稿者のレビュー一覧を見る
第70回推理作品賞受賞作品ということで、作品自体は面白かったと思います。3章仕立てで、過去と現在と視点を入れ替えながら、倒叙ミステリー的に話を進め、第2章終盤で驚きの展開に。第3章は結論が見え、やや退屈な印象があるかと思って、油断してるとやられました。ただ倒叙ものなので仕方ないのでしょうが、話全体が暗かったのが残念でした。
電子書籍
愚者の毒
2021/03/14 14:16
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投稿者:たかこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
どういう結末のなるか予測がつくような内容だった。読んでてただしんどいだけの小説でした。
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著者は初めて読むが、もとはホラー作家という。
概ねオーソドックスなサスペンスミステリだと思うが、プロットの細部や物語を補強する背景設定が破綻なく緻密で、完成度がとても高くなっている。
現在と過去とを相互に語っていくスタイルからは、大まかな結末が分かっていても、どんな展開になるのか、作者の企み通りにちゃんとハラハラさせられる。
また、割と大胆に転じられる章建ても効果的で、ひとつの謎が解けてくると、新たな謎が生まれていって…と繰り返される構図には、どこか暗澹とした文章の雰囲気と混ざって、どうしても読み込んでしまう。これは上手いと思う。
まだ作数が少ないが、今後も読むのを楽しみにしたい作家となった。
4
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何というかすごく重たく、登場人物の暗い過去、というより、悲惨な人生を目の当たりに見せられた感に堪えない。本当にすごい人生だなあと思う。
内容的には3部構成になっていて、第1章の陽、第2章の陰、そしてそれが繋がっていく第3章で前2章の伏線が解消されていくというミステリーなのだが、読んでいて凄く暗くなる。主人公二人。「葉子(ハコ)」と「希美(キミ)」のそれぞれの人生が酷似しており、二人の関わり合いが次第に悲惨な人生を生んでいく。それと、もう一人、ハコの義理の息子、「達也」の存在も絡み、より悲惨さを増幅させる。
詳しく内容は書けないけど、これほどまで荒んだ人生を描き切った作者の感覚に驚かされた。
ちょっと落ち込む話ではあるけど、是非、興味のある方は一読を。人間の「業」の深さをまざまざと思いおこさせる小説だと思う。
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過去と現在を行き来する密度の濃い重い中身。人物の正体や成り行きはうっすら予想できたものの、着地点が分からないおもしろさにハマってゆく。
ノンとユウの場合、悲惨な生活から抜け出すために過ちを犯すが、それすらも生きる手段の一つだったように思えて何が正解だったのか読み終わっても答えが出なかった。大人が大人の責任を果たしていない以上子どもに正論を求めるのは無理だろう。二人を責める気になれず、どこまでも罪を引きずっていく生き方がひたすらやるせない。
「愚者の毒」という題名に込められた意味が読後深く深く胸に沈む。
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ふとしたきっかけで出会い、親友となった二人の女性。彼女たちの過酷な人生に訪れた、穏やかで幸せな日々。だけれどそれは永遠には続くことなく、やがて事件が起こることは示唆されているので。なんともいえずつらい読み心地です。
さらに、筑豊の廃坑集落で営まれるどん底の暮らし。これがまたとにかく重くてつらくて苦しくて。そこで起こされる犯罪も、罪であることは間違いないのだけれど、悪だとは言い切れず。その罪を背負ったまま生き続ける彼らの姿があまりに悲痛でした。
中盤以降で物語の構図があらかた見えてきて、それでもやるせない気持ちに変わりはないのですが。最後に訪れた「人生の帳尻」はさほど悪いものではなかったのでは、というように思えます。とことん暗くつらい物語ではあるけれど、読後感はどこかしら穏やかに感じました。
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装丁イメージ通りの暗いサスペンス。
過去と現在を行き来しながら、真実が明らかになっていくという構成。
主人公は筑豊で生まれ育った、恵まれない人生を歩んで来た女性。実の父親を殺し、親友にも実父を殺させた過去を持ち、そのことで罪悪感に苛まれている。さらにそれを知る人物に脅され、故意ではないがたった一人の友人をも殺してしまうという、まーいい事なしの人生。
そして夫は夫で共犯者として、罪の意識に苛まれて、ただ彼女のために生き、そして死を待つだけという…。
どこもかしこも暗い!
個人的にラストはこうなるであろう、こうあるべき、という終わり方だった。
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一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!
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初読みの作家さんだったが、惹きこまれた。恵まれない境遇を嘆き、職安に通う女性・葉子が、ある日面接に行った先には、生年月日が同じ希美(きみ)の履歴書が送られていた。そんな縁で親しくなった葉子と希美がそれぞれに抱える過去が、現在を生きる彼女たちをがんじがらめにしている様に、いたたまれなさを感じずにはいられない。現在と過去、さらにさかのぼった過去を行きつ戻りつしながら物語は進み、そこに至る事情が少しずつ読者の前に解き明かされていくにつれ、さらにやり切れなさに包まれる。どこかに戻れば、彼女たちはしあわせになることができたのだろうか。それともどうあがいても、運命を変えることはできなかったのだろうか。出会い、関わってきた人々が、立場を変え、状況を変えて、次々に目の前に現れ、ラストに向かって収束していくのは、心臓を搾り上げられるような緊張感もあり、ページを繰る手が止まらない。運命の過酷さと、人の情の濃やかさを思わされる一冊でもある。
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内容(「BOOK」データベースより)
一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!
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2015年の現在と、30年前と50年前の過去がカットバックしていくのですが、第一章と第二章で謎をばら撒き第三章で綺麗に解消する技巧が素晴らしいですし、不穏な空気が漂っているのになかなか物語の全容が見えない展開が読む意欲を掻き立てます。日本推理作家協会賞受賞も頷けるノアール小説の力作だと思います。
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心の中にじんわりと広がっていく読了後の複雑な気持ち。
やはりどこまでいっても絶望から抜け出せず、すっきり…とはいきませんでした。
読み進めていく中での出来事にも「これはもしかして…こういうこと?」と全てが予想がつくし、びっくり仰天な見事なカラクリがあるわけでもないのだけど。
淡々と綴られていく出来事を追っていくうちに、夢中になって読みふけっていました。
途中から始まる、全ての原点であるところのあの忌まわしい筑豊の炭坑集落の話が始まると、まるで実際に起こった事件のドキュメンタリー番組を見ているかのような気分に陥って、衝撃でした。
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評価は5.
内容(BOOKデーターベース)
一九八五年、上野の職安で出会った葉子と希美。互いに後ろ暗い過去を秘めながら、友情を深めてゆく。しかし、希美の紹介で葉子が家政婦として働き出した旧家の主の不審死をきっかけに、過去の因縁が二人に襲いかかる。全ての始まりは一九六五年、筑豊の廃坑集落で仕組まれた、陰惨な殺しだった…。絶望が招いた罪と転落。そして、裁きの形とは?衝撃の傑作!
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被害者である先生があまりにもいい人すぎる。ミステリでなく、達也との関わりで別ジャンルの話になっても十分読み応えがありそうな存在感だった。先生と達也と葉子の関係は、小川洋子の『博士の愛した数式』を思わせる静謐さがあってよかっただけに、ミステリになるとつらい。
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読んでいる途中に重すぎて、何回か読むの辞めようかと思ったし読了後も、ずっしりと重い内容が心に残った。
大きく分けて3つの構成から成っていて、その章の中でも過去と現在が行き来する。でも、ごちゃつく事なく読める。
この世の底辺で生きてきた、希美とユウ。本当に救われない事ばかりで読んでいるこちらまで、辛くて絶望的な気持ちになった。やっと救われたと思ったのもつかの間、どうやったって過去の暗い影が2人を追い詰め、苦しめ、それを忘れる為にまた嘘と罪を重ねて、塗り固める。。。
そんな中で出会った葉子と難波先生の存在。
2人にとっては、どんより厚い雲間からさす陽光のようだったんだろうな。
葉子も葉子で暗い過去を引きずりながら生きてきて、そんな時に出会った希美と難波先生は冷えた身体をそっと暖める、柔らかい毛布みたいな存在だった。
後半のパートに行くに従って真相が明らかになり、伏線の回収もちゃんと書かれているので、ミステリーとしては良い作品。
ただ、疲れていたり心がちょっと弱っている時に読むのはあまり、おすすめしないかも(笑)