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投稿者:るう - この投稿者のレビュー一覧を見る
あまり知られていない会津の芦名氏滅亡を巡る連作短編集。老獪な芦名の執権・金上と己の中の空洞のみを畏れる伊達政宗の戦い。金上の意地と誇りと政宗の矜持のぶつかり合いは読みごたえがあった。ただ、タイトルが人を選んでしまいそうな気がする。広く皆に手にとって貰いにくいのが残念。
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【時代小説界に大型新人が登場!】家臣による当主弑逆を切掛に、会津の名家、蘆名家は崩壊の一途を辿って行く。オール讀物新人賞受賞作家による、初の連作短編集。
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会津といえば松平容保がいちばんに頭に浮かぶのだけど、それ以前の、芦名氏については寡聞にして未知でした。恥ずかしながら。
なにが運命を分けるのか。戦国の世を生き延びていくために必要なものがここにある。
時代小説ファンにはもちろんだけど、戦国のようなビジネスの世界で闘う人たちにも共感される一冊です。
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七年目の3・11仙台に向かう新幹線の中で一気に。久々の時代小説、もうちょっとゆっくり楽しむつもりだったのに、身体の細胞が沸き立つ感じになっちゃってページをめくるスピードも「はやぶさ」並みでした。どんどん過ぎていく車窓の風景はまさにこの小説の舞台の会津地方。伊達政宗が戦国の終わりに奥羽を暴れ回っていた時代、彼と敵対していた会津藩蘆名氏を支える男たちの6つの物語。それぞれの章の主役が時代のうねりの中で自分の使命に気づいていく、という構成になっています。組織の中で、時代の中で、嫉妬、功名、悔恨、大義、憧憬などなど男の気持ちに向き合いながら、自分のやるべきことを見つけていくところが今のビジネスマンの共感ポイントに繋がると思いました。これ、時代小説というよりM&A、外資の攻勢、お家騒動、衰退産業などに直面している、現在の会社小説なのでは…「時代」の流れに向き合う組織の中での自分の発見、時代小説だから描ける現代なのかもしれません。当たり前だけど歴史は陽のあたるヒーローだけのものではないことを改めて。6人の主人公、みんなカッコいいです。
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会津葦名氏は一時期隆盛を誇ったが、内紛を経て、秀吉が発布した惣無事令に逆らい進攻した伊達政宗に滅ぼされる。
本書は、奥羽仕置までのその過程を、連作短編集の形で追ったもの。
今一つ心の底に響かないのは、編毎に主役を違えたためだろうか。
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初出 2013〜16「オール讀物」
会津守護を名乗る芦名家の滅亡を、家臣5人と伊達政宗を主人公とする6短編がほぼ時系列に並べてある。
継嗣の絶えた芦名家の当主に佐竹家から養子を迎えることに反対した猪苗代盛国の裏切りの疑惑を見極めようとする富田隆実。
新当主に付いてきた佐竹家の家臣と芦名家の家臣の軋轢が生んだ惨殺事件の調査を任された桑原新次郎。
伊達と戦うために佐竹と一緒に兵を出した芦名家の家老が佐竹から来た家臣を陣立ての中心にするのではないかと危惧をもっていた家老の侍大将白川芳正。
かつて自分が人夫として普請した橋を伊達方が壊そうとするのを止めようとする、足軽として戦にかり出された小源太。
伊達との戦で劣勢になり敵の本陣が手薄と見て突入し計略にかかって討ち死にする「会津執権」と太閤からも呼ばれた家老の金上盛備。
秀吉の惣無事令に違反して芦名氏を滅ぼして領地を広げたことを咎められ、北条攻めの陣中に呼び出された伊達政宗。
最後のこの章がない方が、物語としては完成しているのではないのかと感じる。
#直木賞候補になった
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6編からなる連作ですが、一番良かったのは「退路の果ての橋」。足軽である小源太が信じてきたものが極限の状況下で反転して現れるところがなかなか面白かったです。これ以外の作品も一人一人の人物描写に工夫を感じられ、普段時代小説をほとんど読まない私ですが、退屈することなく最後まで読み進めることができました。
デビュー作としては上々の出来だと思います。
欠点を挙げるとすれば、一冊の連作として読んだ場合、世間的にはマイナーな大名を外側から眺めるという設定であるがゆえにやむを得ないところもあるのですが、どうしても盛り上がりに欠けるというか、読者が核となるものをいまひとつ掴みきれないように感じてしまう点でしょうか。
芦名家の中心人物を主軸に据えた話がもう少しあっても良かったのかなと思います。
あと、冒頭の「主な登場人物」に各編の主人公を載せないのはちょっと不親切では。
意図が分からないわけではないのですが、文庫化の際はご一考いただきたく。
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直木賞候補作。
時代小説ものは久しぶりだった。そのため、どのように感想を持っていいのかまだよくわからない。BUTTERの後なので非常に読みやすい。連作短編という形式。遠藤周作や乙川優三郎のような深い余韻は、感じなかった。また、司馬遼太郎のように、「作者」をあまり感じなかった。司馬遼太郎は様々に批判されても、司馬遼太郎が描いている、彼がそのように解釈しているという作者の顔が見えつつ読める気がする。
一つ一つの短編自体は、おそらく王道的なものだし面白いのだけど、いっそのこと金上氏のみにスポットを当てて一代記のような形式でもよかったのかなと勝手に感じた(全ての感想は勝手です、本当にすみません)。
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最後の二つ、題名にもなっている「会津執権の栄誉」と、「政宗の代償」が圧巻。
「会津・・」では、実に巧妙に張り巡らされた政宗の罠に堕ちてゆく盛備の、移ろいゆく心の描写が秀逸だった。
「政宗.の」は、二十数年前に読んだ山岡荘八の「伊達政宗」に全く同じような感動を覚えた事が蘇った。
18で家督を継ぐや否や、貪るように東北の地を食いまくり、野獣のように好戦的な印象だった政宗が、以外にも70歳という高齢まで生き、三代将軍家光まで仕えたという以外すぎる事実に驚いたものだ。
そんな晩年の政宗を生み出した、大変革とも言うべき心境の変化に大きく関わったキッカケとして、本書では結城秀康との会話を挙げている。
真実は、歴史の霧の中だけれど、片倉小十郎というモノノフを知るほどに、政宗の野望の矛先が、家臣と、そして所領・領民への愛情へと変化していった事は、間違いない気がしてくる。
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私自身は伊達政宗をはじめ、あまり会津周辺の歴史について明るくない。登場人物にあまり馴染みがないため、あまり作品を楽しめなかった。もちろん本作を読んだことで、知らなかったことを知ることができたのは喜ばしいことだ。それ以上でもそれ以下でもない。物語が淡々と進行するので、なかなか物語に没入できず、登場人物に共感することもできなかった。
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会津の芦名家滅亡の物語。筆頭家老、その部下、足軽等の立場から描かれており、多角的視点から見ることの面白さを感じた。
寝返りはじめ様々な思惑が交錯する家内、それを纏めることに苦心する金上氏、非常に読みごたえがあった。
苦心の末に会津を切り取った伊達政宗が、秀吉により会津を手放さざるを得なくなるが、その反面に何ものかを得るという何か清々しい終わり方。
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最初タイトルを見ても戦国時代の会津の話、もしかして伊達政宗の話かという印象でした。
でも、タイトルの「会津執権の栄誉」までは政宗の隣の芦名家の話です。
それも順を追って読むことで、前提知識となって「会津執権の栄誉」が生きてくる仕掛けになっています。
なじみのない芦名家が摺上原の戦いでどう戦ったか。それが手に取るようにわかります。
それまでの章はこの章のためにあるのかと思いました。この章を楽しむためにもそれまでの章をじっくり味わってください。圧巻です。
最後の章はうってかわって政宗です。政宗の小田原征伐の時のエピソードが出ています。これは圧巻の摺上原の戦いのその後の世界の話です。ここまで読むと、この本の核心はこの「政宗の代償」なのではと思いました。それまでの話がここで生きてきます。
伊達政宗生誕450年記念の2017年、お薦めの一冊です。
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なんと短編集でした。
伊達家の隣の会津で領国を差配していた芦名家の滅亡へのカウントダウン。主人公が入れ替わり立ち代り表題作で芦名家は滅亡する。最終章で伊達政宗が折角奪った会津を豊臣秀吉の鶴の一声で手放す事になる。芦名家滅亡までの行程も面白いけど、伊達政宗の心理描写も中々に面白い。天下人に駆け引きを試みる政宗もエライが、其れを上回る桁違いの人物として秀吉が描かれている。総じて興味深い小説でした。次は長編が読みたいかな。
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会津芦名氏の滅亡を描く短編集。
「湖の武将」
「報復の仕来り」
「芦名の陣立て」
「退路の果ての橋」
「会津執権の栄誉」
「政宗の代償」
の6編収録。
会津の芦名氏については、戦国ゲームや伊達政宗の物語などで知ってはいましたが、本連作の中心となる摺上原の戦いや芦名氏の重臣たちはあまり知らなかったので勉強になりました。
書下ろしの「政宗の代償」以外は芦名氏側のいろんな人物からの視点で、摺上原の戦いに至る経緯が語られており、大変面白いと思いました。
書下ろしの「政宗の代償」は小田原参陣における秀吉との対峙の話で、せっかくこの連作を占める書下ろしをするなら、摺上原の戦いから会津芦名氏の終焉を蘆名義広か金上盛備の嫡男の盛実の視点で書いてほしかったです。
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連作短編6編
会津芦名氏の滅亡へのカウントダウン.滅ぶ時には何もかもが滅びに向かっていく.語り手を変えてそれぞれ短編として面白い.最後の伊達政宗の章は少し毛色が違うが,後日談という感じかな.この作家さんのことは全く知らなかったのだが,これからも読んでみたい.