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- カテゴリ:一般
- 発売日:2017/10/11
- 出版社: 書肆侃侃房
- サイズ:21cm/169p
- 利用対象:一般
- ISBN:978-4-86385-280-8
紙の本
たべるのがおそい vol.4(2017Autumn) 特集わたしのガイドブック (文学ムック)
著者 木下 古栗 (ほか著)
小説と翻訳と短歌を中心にした文学ムック。vol.4(2017Autumn)は、「わたしのガイドブック」を特集。ほか、宮内悠介「ディレイ・エフェクト」、辻山良雄「本屋の蔵書...
たべるのがおそい vol.4(2017Autumn) 特集わたしのガイドブック (文学ムック)
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商品説明
小説と翻訳と短歌を中心にした文学ムック。vol.4(2017Autumn)は、「わたしのガイドブック」を特集。ほか、宮内悠介「ディレイ・エフェクト」、辻山良雄「本屋の蔵書」などを収録する。【「TRC MARC」の商品解説】
小説と翻訳と短歌を中心にした文学ムック
わたしたちは誰もが重力というものに支配されています。
「たべるのがおそい」は、その重力を少し弱めてみたいと思っています。
読んでいるあいだ、少し動きやすく、歩きやすい、
それがこの一風変わったタイトルの文学誌の目標です。
西崎憲(編集長)【商品解説】
目次
- 【巻頭エッセイ】
- 皆川博子
- 【特集〈わたしのガイドブック〉】
- 澤田瞳子 谷崎由依 山崎まどか 山田航
- 【小説】
- 木下古栗 古谷田奈月 町田康 宮内悠介
- 【短歌】
収録作品一覧
主さん強おして | 皆川博子 著 | 4−7 |
---|---|---|
ガイドブックのための(または出発できなかった旅のために) | 谷崎由依 著 | 58−61 |
ストリート書道に逢いたくて | 山田航 著 | 62−63 |
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紙の本
尖った文学に触れたくなること、ありませんか?
2017/12/27 23:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:たけぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
びっくりしました。食べおそVol.4収録の宮内悠介さんの
ディレイ・エフェクトがH29下期の芥川賞候補入りですね。
たしかに印象に残る作品です。
わたしは別作品を推しましたが、それはそれ。
過去にも今村夏子さんの食べおそ収録作品が
芥川賞候補になっており、これって結構注目されている
文芸誌ってことではないかと。ますます目が離せなくなりそうです。
食べるのがおそいは、文学に触れる魅力を
直接的に見せてくれる文芸誌のように思います。
Vol.3とVol.4を読んだ率直な感想です。
そもそも「食べるのがおそい」ですから。
読むことと食べることが似ているからこその題名です。
読むと一言でいいますが、具体的には咀嚼する、味わう、
腹にすとんと落とすの段階があります。
その先には吸収する、栄養にするというつながりも
透けて見えます。
もしこれを「読むことがおそい」としてしまうと、単に速読か
遅読かという薄っぺらい連想しか生まなくなってしまいます。
この作品集を読むときは、心して読まなくてはならないという
意味が言外にこめられているように思います。
Vol.3の読後感から、前衛的な作品が並んでいるだろうと
想定していました。ところがVol.4は、思ったよりも
ずっと読みやすく、尖るところとバランスを崩すところが絶妙で、
大いに楽しめました。
中二病的な尖り方がないのも好感が持てます。
新たな文章表現の道を探る面白さがあります。
創作四本、テーマ別寄稿四本、翻訳二本、短歌四本、
エッセー二本です。全169頁なのでいずれも短いです。
この短さのおかげで前衛的でもなんとか勝負できるし、
逃げることもできるしという構成です。
何よりも、余韻がたくさん残る感じがしたところが気に入りました。
一篇だけ細かめに紹介します。気になる方は飛ばし読みして下さい。
ーーーーーーー<以下、ネタバレ気味です>--------
古谷田奈月さんの橙子という作品です。
高校の入学説明会の帰り道で、橙子は父と一緒に
バスを待っています。
中学で三年間、何をするにも一緒だった花緒里のことが
心に浮かびます。はじけるような笑顔、透きとおる肌、黒目がちの眼。
小学生の頃から大人びた体つきに苦しみ、男の子たちの視線と
好奇心にずっと追い回されてきた花緒里。
恋人に選んだ矢俊くんは、冴えない風貌だけど聡明で
豊かな想像力を持つ人でした。
つき合っているのは秘密。それを知る橙子は、憧れとも尊敬とも
つかない思いを抱いています。
もう一つの並行するお話。
いま、バスを待っています。父が橙子の気を引こうとしているのが
透けて見え、橙子の葛藤が始まります。
わたしは、橙子が戸惑いながら心の成長を受け止めていく
物語と読みました。出会い、分かれ、動き出す人間関係。
母に関することを伏せているのも、読者の世界観を広げるための
仕掛けでしょう。
父の取った行動に橙子が見せる涙は、たくさんの意味がある
気がします。どう考えるかで、心のなかに光が散りばめながら
しみ込んでいくようです。
まるでプリズムです。
そんな答えのない、それでいて広がりのある小説でした。
ゆるりと楽しむ読書もいいですが、トゲを刺していくような作品に
触れるのもいい刺激になりますね。