紙の本
人間とは、罪とは
2022/02/17 15:33
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投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
500ページを超える長編。
物理的にも心理的にも重くて読み切れるか心配だったが、あっという間に読み終わった。
薬物依存、DV被害者たちが暮らす施設で、「先生」と慕われた慈善活動家の女性を巡る物語。彼女の死後、別人が長年にわたって「先生」になりすましていたことが発覚する…という内容で、人間の本質に迫る。
「先生」は誰なのか、謎解きをしながら読む過程は、ミステリーのようでもある。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
薬物依存やDVに苦しめられた女性たちのシェルター「新アグネス寮」に発生した火災で、先生と呼ばれ尊敬を集めていた「小野尚子」が、赤ん坊を助けるため焼死した。しかし、警察から意外な事実を告げられる。焼死したのは「小野尚子」ではなく、別人であると。
では、死亡したのは何者か?その正体を探る長編ミステリー小説です。
なかなか引かれる冒頭部分に対し、正直その後は起伏に乏しいというか、衝撃的な展開に欠けるという感じです。
残念ながら“篠田節子ワールド全開”というような作品ではなく、不完全燃焼で読み終えました。文体も、「らしくない」といった印象です。
才能のある作家さんなので、次回作に期待させてもらいます。
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とても面白かった!最初はどんな話しなのか
全然知識がなく読みすすめたので、まさか小野尚子と
犯罪者の半田明美と言う女が入れ替わり最後は犯罪者の半田が善人の塊の様な小野尚子として人を助け死んで行く
冒頭部分、次々と人を騙し殺人を重ねた半田明美が
どうやって小野尚子にすり替わったのか、そして最後に
小野尚子として人を助けなぜ自分を犠牲にして死を選んだのか?
稀代の悪女が最後は小野尚子として生きる内に改心したのか、はたまた小野尚子と言う人物に飲み込まれたのか
最後は読者に委ねる形になるのか?
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すり替わりの真相は、優紀(絵美子)の解釈を信じたい。
でも、榊原久乃の「そうはさせない」という言葉がその解釈を許さない…
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毒婦ものでも最恐かも。
最後は別人格に乗っ取られるのだが、その別人格が聖母のような人で、悪の塊である本人格が乗っ取られまいと戦うワープロ文章が怖い。
共感できる部分は少ないが、「インドクリスタル」を思い出させるダイナミックな展開もあり、あらためて桐野夏生さんと篠田節子さんは二大ホラー巨匠だと思った。
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DVや薬物依存などの女性たちが暮らすシェルターの火災で指導者の「先生」とその助手が死んだ。ところが「先生」の遺体は別人のものであったと警察から告げられる。シェルターは20年近くその地で活動を続けており、「先生」である小野尚子のインタビュー記事を書いたばかりのフリー記者山崎知佳は真相を探り始める・・・
一体どういう事?と読むのを中断するのが惜しい展開。一気に2日で読んでしまった。
警察からは別人の名前として「半田明美」の名前が告げられる。しかも80年代に連続殺人事件の容疑者としてマークされていた人物だという。しかしシェルターの入居者も記者の知佳も遺体としてあがった「先生」には、入居者のことを思いやる優しい先生としての姿しか思い浮かばない・・ 真相を探るうち、以前「半田明美」の記事を書いた男性雑誌記者に行き着く。その調べ方も図書館や大宅文庫を調べるあたりは、もと図書館にいた篠田氏の経験が生きているなあと思う。
DVやアルコール、薬物依存となったシェルター住人や半田明美のそれまでの生活の経緯も篠田節子の視点から描かれる。同じストーリーでも男性作家だとまた違った理由になると思う。
実際の事件にも次々に夫を殺し保険金を得るとか似たようなのがありそれをヒントに書いたのかなと思うが、ともあれ「半田明美」はどうして金を得るのに自分の労働で稼がなかったかなあ。
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ものすごい圧力のミステリー
本の分厚さも気にならないほどの怒涛の展開に
あっというまに読み終えた。
連続殺人を犯していたような女が
(それにもかなり事情があったとしても)
二十数年かけて本当の意味で聖女に生まれ変わる。
自分自身にマインドコントロールをかけているような
そんなことが人間の脳には可能だとういうことに
ただただ驚愕。
それにしても小野尚子と榊原が焼死する直前に
榊原が放った言葉「そうはさせません」
とはどう意味だったのか、まだ分からない。
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女性シェルターで起こった火災で、母子を助けて死んでしまった女性。聖母のように慕われていた彼女だが、実は別人だったことが判明。しかも彼女の過去にまつわる多くの事件と疑惑。彼女は果たして何者だったのかを探るサスペンス。
彼女の正体を探ろうとする人々のほとんどが、すり替わった後の彼女しか知らないので。だったら自分に見えていたすべてが真実だったと思えばいいのでは、という気も少しはします。知らないほうが良いこともあるのでは、と。だけど「人は生き直すことができる」のが真相だとしたら。生き直したい彼女たちがそれにすがりたい気持ちは、分かるような気がしました。
しかしこのラストは怖い。小野尚子/半田明美の中でいったい何が起こっていたのかはきっと誰にも分からないんだろうなあ。
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虐待、薬物依存、自傷行為・・・救いを求める女性たちが共に暮らすシェルター「新アグネス寮」で発生した火災。逃げ遅れた赤ん坊とその母親を助けるために命を落とした「先生」こと小野尚子。聖母のように被害者に寄り添い、皆から慕われていた「先生」のあまりに相応しい最期をスタッフ、入居者たちが悼むなか、衝撃の事実が警察から告げられる。
小野尚子として亡くなった遺体は別人のものだった。
「先生」の正体は?かつて、小野尚子を取材したライター知佳が事実をつきとめるべく調査を始める。過去が少しずつ明らかになるにつれて、寮内で起こる不思議な現象。やがて明らかになる一人の女性と彼女の哀しい過去。。。
530ページ超え圧巻の作品でした。
女性のシェルターが舞台だけれど、そこを追求した社会派小説ではなく、キリスト教も絡むけれど宗教の話でもない、フィリピンの貧困地域も描かれるもののそれが話の肝でもなく、オカルトやホラー的な要素もあるがそこに帰結しない。
「昭和史、神学、性依存、失踪マニュアル、霊能者、保険金殺人事件、毒婦・・・」と参考文献に並ぶ言葉を見るだけで、この作品の奥深さがわかるし、その全ての要素が絡み合うなんとも重層的で読み応えのある作品。
一つの謎が明らかになるともっと謎が深まり、先が気になって読むのをやめられず、読み終わってみれば、最初怯んだ500ページも足りないほど。「鏡の背面」というタイトルは秀逸。
篠田さんの長編にはいつも魅了されます。「ブラックボックス」「冬の光」に継ぐ、好きな作品になりました。
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聖母のような女性は実は…
よく題材とされる犯罪譚だが、なぜ、どうして、どうやってが解き明かされる課程が興味深い。
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久しぶりに著者の本を読んだ。
相変わらずきちんとした話を書く人だと思う。
途中で心霊現象の話になった時はそのまま行くのかと不安になったが、きちんと回収されて安心した。
外から救いようのない悪人に見える人も聖者となることがあるということか。「悪人正機」?
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マザーテレサの再来と言われるほど敬愛されていた小野尚子が焼死した。
ところが警察の検視で、全くの別人半田明美なる女性であったことが判明、
しかも半田は連続殺人犯と目されていた。入れ替わったのはいつ?
なんのために?フィリピンのスラム街からバブルの残骸の北軽のリゾートマンション
へ、もうドキドキの一気読みだった、
北軽のマンション、小野尚子実は半田明美の隠れ家に残された沢山の鏡。
鏡に映るのは虚像、私たちは決して自分の実像を見ることができない。
その鏡の背面にあるものは?
フロッピーに残した手記、というのはちょっと都合よすぎな気もするが、
小野尚子になりきろうとする意志に逆らおうとする半田明美の
アイデンティティを無意識のうちに維持しようとしていたのか。
人間はやはり二つの自己を持つことはできないのか。
手記の中で「半田明美 昭和30年8月7日生まれ」と繰り返されている、恐ろしさよりも悲しさを感じた。
目に見えない浮かび上がってこない社会の貧困とか、DV被害とか、ほかにも
胸に迫ってきたことはいっぱいあった、読み応えある作品だ。
篠田節子は、そのテーマに好き嫌いはあっても
作品のレベルでは決して失望を与えない数少ない作家だと思う。
私が一番好きなのは『神鳥』だけど。
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目的のためなら、殺人だろうが成り代わりだろうがやってしまえるってそれは一種の才能なのかもしれないけれど、使うところを間違っている。
そこまで他人になりきれるなら、別のことができたのではないだろうか? でも、結局は自分と他人との境界域があやふやになり、成り代わった人ならやりそうな行動や思想に飲み込まれていく。最終的に助けに行って亡くなってしまったときには、もう自分ではなかったのかもね。
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貧困、暴力、虐待にさらされて酒や薬物に逃げた女性たちが、社会復帰を夢見て飛び込むシェルター「新アグネス寮」を築いた現代のマザー・テレサ小野尚子。彼女の死を機に明かされる衝撃の替え玉疑惑。まさか、毒婦の半田明美がすり替わり、悪が善に洗脳なんてことで終わるはずもなく、この長編にはどんな返し技が秘められているのかと期待して読み進める。と、どうしたものか・・・。そんな、頑張って読み切ったのに。
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社会に適応できない女性のための施設の創始者が焼死するが、遺体は本人ではなく連続殺人の嫌疑をかけられた女性だったことが判明。事件の謎を、関係者たちが追っていく。
いつ、どのようにして入れ替わったのか、本人はどこに、成りすましていた人物の正体は、という謎解きが軸になるストーリーには、一気に引き込まれる。また背景には、家庭環境によるトラウマからアルコール中毒や薬物依存に走る女性たちの実情、暴力、貧困、宗教、詐欺など、リアルで深刻な社会問題が次々と提示され、重くのし掛かってくる。
さらには、日本のマザー・テレサとまで言われ全幅の信頼を寄せていた人物が、良心の欠片もない連続殺人犯だと聞かされた当事者たちの苦悩や、成りすましていた人物の狂気が明らかになる過程では、ホラーの得意な作者の筆力に、主要人物とともに追い詰められていく恐怖感があった。
ラストの謎の解明も作者ならではの視点で興味深いが、やはりそれ以上に弱い女性たちの社会的な問題が悲惨で、強く印象に残った。