紙の本
「こころ」の生成プロセスと作動原理を解き明かす画期的な一冊です!
2020/02/09 14:15
2人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ちこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、脳神経科学の第一人者である桜井武氏による「こころ」の生成プロセスと作動原理を解き明かし、私たちを支配しているものの正体に迫った画期的な一冊です。私たち人間は「情動」という複雑なものによって意思決定を行っています。しかし、それよりももっと複雑な「こころ」というものも身に付けています。同書は、その複雑な「こころ」を科学していきます。内容構成も、「第1章 脳の情報処理システム」、「第2章 <こころ>と情動>」、「第3章 情動をあやつり、表現する脳」、「第4章 情動を見る・測る」、「第5章 海馬と扁桃体」、「第6章 おそるべき報酬系」、「第7章 <こころ>を動かす物質とホルモン」、「終 章 <こころ>とは何か」と、とても興味深いものとなっています!
電子書籍
脳についての知識を整理するのに良い
2020/03/30 10:42
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:y0a - この投稿者のレビュー一覧を見る
脳についての知識を整理するのに良い、という印象。学生向けの講義を作るような立場だと役立ちそうな本である。
印象的な部分を少し引用すると、「実際には行動と認知は並列に起こっているのだ」「私たちの行動を意識がコントロールしている部分は、ごく一部である」など。
読んで損はないですよ。
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こころ
2019/05/23 10:11
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投稿者:ハム - この投稿者のレビュー一覧を見る
泣いたり笑ったり、改めて考えてみると面白いなと思いました。涙を流すのって、頭で考えて行動しているわけはないので、不思議。
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情動がいかにして生まれ、「こころ」に作用していくのか。
非常に興味深いテーマを抱えた本書であるが
「認知」と「行動」は平行して実行されること、
つまり「怖い」と感じることと「怖い」ときにとる逃避行動は実は平行して行われるーなど
この分野に疎い人間としては衝撃的な事実が書かれている。
では、なぜそのような仕組みになっているのか。
また、そもそもなぜ「こころ」というものがあるのか。
そういった問いに対し科学的な答えが与えられる本書は読んでいてエキサイティング。
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【献本当選作】第1章で出てきたホムンクルスの図は、有名なのだが正確に記憶できない思い出がある。「こころ」とは原始的で非自律的な大脳辺縁系で生み出される情動と、我々人類が発達させた大脳皮質の論理的思考、そして脳以外の身体から血液を通じて伝達される神経伝達物質の総合的かつ複雑な結果から表出されるという科学的知見が良く判った。「こころ」について知ると、いいね!されると「報酬」として快感が得られることに納得できる。しかしながら、他の読書記録サイトでは一時に多くのいいね!をもらうことで恐怖を感じ、いいね!を送った相手をブロックするユーザーがいる。自分も一日に同じユーザーから100以上ナイスをもらったら(そんなことはなかったが)、快感ではなく恐怖を感じるかもしれない。
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「こころ」って何だろう?どこにあるのだろう? そんな疑問を脳科学から解き明かす本。
・もっとも進化的に新しくて認知や思考をつかさどる大脳皮質と、脳の深部にあり動物にも共通する情動をつかさどる大脳辺縁系。
・大脳皮質は前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉に分かれ、領域ごとに機能が細かく分かれている。
・大脳皮質はものごとの要素を分解して情報処理を行う。視覚情報は左右別々に傾きや色、明るさなどの要素が入力され、脳内で再構成されてイメージを作る。「味、におい、色などは意識の中だけに存在する」→音楽も脳の中だけに存在する…?
・共感力も大脳皮質に存在し、こころに影響する。
・情動は脳大脳辺縁系でつくられる。結果としての情動表出が脳にフィードバックされて情動を修飾する。
・作業記憶(ワーキングメモリー)は前頭前野、エピソード記憶や意味記憶などの陳述記憶(言葉で表せる記憶)は海馬と大脳皮質、手続き記憶(技能の取得)は大脳皮質、大脳基底核、小脳、情動記憶(条件や文脈で引き出される)は海馬と偏桃体が関わっている。
・ストレスホルモンは陳述記憶を弱め、情動記憶を高める。
・ドーパミンの放出による快感で行動を強化する「報酬系システム」によりその行動をやめられなくなる。人間を向上にも破滅にも導く。
・脳内にはこころの機能に影響を及ぼす多数の神経伝達物質があり、認知や記憶など速く正確なもの、ゆっくりと気分を醸成するものなど特性もいろいろ。
・行動のほとんどは認知よりも情動のもとに行われている。大脳皮質での共感性や社会性、認知などの機能をフィードバックすることで人間のこころは複雑化し、社会の変化とともに日々進化している。
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人は悲しいから泣くのか? それとも泣くから悲しいのか? これは脳科学では昔から論争が続いている根源的なテーマです。実は動物やヒトの行動は「理性」よりもはるかに強く「情動」によって支配されています。情動がなければ、私たちは意思決定さえままなりません。そしてヒトはさらに、情動より複雑で厄介な「こころ」を身につけました。それはいかにして生まれるのか? 私たちを支配するものの「正体」に第一人者が迫ります!
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生物の進化の先に、環境を認識する能力を超え、他者へ共感する意識を持ち得たことは、ヒトという驚異の種を出現させた。あらゆる感覚情報は脳内現象として還元され、意識を立ち上げている。この謎にどんなアプローチで分析しているか興味を持って読んだ。ヒトが他の生物種から質的進化を遂げた大脳皮質という構造、これと並行する形でより古い大脳辺縁系が有機的に連携することで複雑な神経活動を担っている。記憶のメカニズムとともに、原理的説明が解析されてきているが、根源的な進化の方向性に関する何故については永遠に近寄れない謎だろう。
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こころという明確な定義のないシステムを、大脳皮質の認知機能、大脳辺縁系による情動と記憶の制御機構、報酬系の機能などどいった観点から考察。
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脳科学の立場から心の存在を一般向けに書いたものである。最も興味深いのは心と身体の境目が私が考えていたのとは異なることだ。
漠然と心は脳が中核となっているのに対して、身体は心臓がその中心であると考えていた。もちろん脳も心臓から送られてきた血液で動いているのだから、この考えは明らかにおかしい。ただ、精神的なことは首から上で大半をまかなっていると考えていた。
ところが、何かのきっかけで起きる情動は脳だけでなく、全身に駆けめぐるネットワークの情報を脳が最終的に構造化して認識されるようなのだ。また情動と認知は同時になされ、認識されることがなくても行動は起きる。私たちはほとんどの行動を認識することなく自動的に行っているというのである。心と身体という場合、それは完全に分断できるものではないのだ。
その際に情報を伝えるのはいわゆるホルモンと呼ばれる体内物質で、この配合率やその他の様々な要因が複雑に関係していわゆる心を形成するというのである。
私の力では設計図は見せられたが実態が分からないという気持ちになっている。ただ、かなり高度な専門的な内容を含むが興味深い内容の連続で最後まで楽しめたのは確かだ。
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ブクログ・プレゼント企画でいただいた本。
こころ・情動が生まれ感じられる脳の部位や報酬となる物質の作用など、身体科学に基づくこころの機序が説明される。
大脳皮質の発達具合もあるだろうが、人らしい心の動きや共感などの点で他の動物とのどように違うのかが今一つ理解できなかった。
出来事に対して何を感じ、どんな行動をとるかは、結局、人それぞれではあるが、おおよその性向はあり、それが体内の状況、体験、思考などに基づいて形成されることは理解した。地球や月の影響などは検証されていないが、腸内生物への影響なども含めてありうるのかなと想像した。、
19-17
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大脳辺縁系の働きや、情動と身体の関係性、脳内の報酬機構などが比較的わかりやすく語られる。こういった内容の本が新書として出版されるのは社会貢献の観点からもとても喜ばしい。さすが、ブルーバックス。
この本で共有されている意識に関する知見として大きなものを二つ挙げるとすると、次の内容を挙げることができるかもしれない:
・「意識」はすでに自律的に起こった情動などの意識下の反応を、脳が認知して解釈したものである。したがって意識の情動に対する優位性は否定される。
・精神は、脳を含む進化論的な発展を基盤としている。
なお著者は、感情と情動を明確に区別をした上で包括的な理解をしているので注意が必要である。著者の感情と情動の区別はアントニオ・ダマシオに由来しているので、正確に理解するためにはダマシオの著作も読んだ方がよいだろう。
著者によると、「こころ」は脳単独で生まれるものではなく、感覚系や神経系、内分泌系を通して全身の各器官に影響を及ぼし、それらの器官からフィードバックを受けた上で全体として生成されるものである。この辺りの論は、先に挙げたダマシオの論に沿ったものである。その流れに乗る形で、著者は意識に対する「こころ」の優位性をその理解の前提としておくのである。特に情動の成立には情動を引き起こす事象の認知のみでなく、それに伴う身体反応が必要であるとするのである。
言うまでもなく、深く考えれば考えるほど、いわゆる「こころ」の定義は難しい。ここで著者は狭い意味で「こころ」を情動と捉えて定義するのではなく、その範囲を広げて、次のように書く。
「「こころ」には、情動以外にも、報酬を得ようとする欲求、困難を成し遂げようとする意志力、他人に共感する力、社会で適切な役割を果たす力などが含まれている」
「「こころ」は脳深部のシステムの活動、いくつかの脳内物質のバランス、そして大脳辺縁系がもととなる自律神経系と内分泌系の動きがもたらす全身の変化が核となってつくられている。また、他者の精神状態は表情を含むコミュニケーションによって共感され、自らの内的状態に影響する。そして最終的には、前頭前野を含む大脳皮質がそれらを認知することによって、主観的な「こころ」というものが生まれるのである」
さらにそもそも人間が「こころ」を獲得した経緯について、「こころ」は進化論の求めるところにより、個体の生存確率を高めることによって獲得されたという理解が前提とされる。また人間の情動は、一般にそう思われている以上に身体的なものであり、生物的なものである。いずれにせよ、「こころ」が生物の一機能である以上、進化論的な議論を避けて済ますことはできない。その意味でも、「こころ」の議論において、「記憶」という機能も生存確率に影響するという観点からも興味深く、この本でも取り上げられるべき重要な要素である。「エピソード記憶」、「意味記憶」からなる陳述記憶と「手続き記憶」、「情動記憶」からなる非陳述記憶、また一時的記憶領域である「作業記憶」に大きく分類される。これらと海��や偏桃体などの大脳辺縁系の役割についても比較的詳しく説明される。また、ドーパミンなど報酬系の脳内での仕組みも、その進化論上の観点含めて「こころ」を理解する上で重要である。
そして進化論が教えるところによると、「実は「こころ」はいまもなお進化し続けている」のである。
「「こころ」とは、行動選択のためのメカニズムである。そして「こころ」には、学習機能が備わっている。それゆえに「こころ」は、社会の変化に伴いこれからも変化していくのだ」
インターネットによるコミュニケーションの変容や、報酬系に与える変化はおそらくは「こころ」に対する環境の変化として働き、実際の「こころ」の動きに対してときに想定を超える影響を与える。
各章の最後にまとめが書かれているのも理解をよく助ける。佳作。
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タイトルにひかれて読んだが中身は普通の脳の話内容でした。
個人的には興味のある部分は少なかった。
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ブクログのプレゼント企画でいただきました。脳の機能が色々書いてあって、ちょっと期待していたのとは違いました。細かくメカニズムが知りたい方にはいいのかもしれませんが、普段脳科学にご興味ない方にはあまり向かないかもしれません。
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前から心理学や人間の精神みたいなものには興味があった。割と人文学的な本を良く読んでいたように思う。本書は、そういった「こころ」を科学の視点で説明している。
(冒頭では、心理学的、あるいは精神病理学的な問題ではなく、神経科学からみた「こころ」の働きを扱う、とある。)
同じこころ・精神といったものを扱っていても、学問によって捉え方が全く違うんだなと面白く読めた。この本では、「こころ」を生物の生きていく上での"機能"として捉えている。「こころ」の働きには煩わされたり、苦しんだりすることもあるが、それらは進化の過程で獲得した、意味あるものなんだろう。
以下のようなことが、何となくわかる。
- 曖昧で形にできない「こころ」をどうやって科学的に捉え、研究されているのか。
- 「こころ」がどんな要素で成り立っているのか。
- 人体でどのように「こころ」が作られているのか。
- 「こころ」は何のために必要で、どんな役割を果たしているのか。
夏目漱石の『こころ』を読みたくなった。
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・脳の「機能局在」と呼ばれる概念が興味深かった。大脳皮質、大脳辺縁系、扁桃体、海馬、、、脳の部位によって役割が決まっている。各部位がどのように働くのか、ある精神の働きがどの部位にどのような経路で伝わるのかが説明される。何となくわかった気になれる。
・曖昧な「感情」を科学の視点で(客観的・定量的に)扱うための「情動」という概念。
・情動がどこに端を発するのかの二つの論争。
悲しいから泣くのか、それとも、泣くから悲しいのか。
- 感情は全身の状態を脳が認知することによって引き起こされる(末梢起源説)
- 脳が情動をつくりだし、それが全身の状態に影響を与える(中枢起源説)
感情や情動は、脳だけが支配しているものではない。
・情動を評価するための動物実験。
具体的な実験手法がある。実験用のマウスはこんな目に遭わされているのか、とちょっとかわいそうにも・・・。
・脳手術を受けた患者ヘンリー・グスタフ・モレゾンの症例。
テレビか何かで見た記憶がある。手術の副作用で、新しい陳述記憶を作ることができなくなった。父の死を知って悲しむけれども、それを記憶できないので話を聞く度に驚き、悲しんでしまう。
検査に協力的だったために、神経科学の発展に大きく寄与した。
・同性愛者の異性愛者への”治療”
患者の脳に電気刺激を加えることで、人工的に”快感”を与える。報酬系のくだりでそんな話が出てくる。
昔はこういうことも治療と考えられていた。自分が感じる快・不快も、脳内の電気信号でできているのかと思うと不思議な気分になる。
スイッチを押すだけで気持ちよくなれたらいいなと思うけど、それが麻薬や覚醒剤なんだろうな。