- 販売開始日: 2019/03/15
- 出版社: 早川書房
- ISBN:978-4-15-001941-9
私のイサベル
著者 エリーサベト・ノウルベック , 奥村 章子
20年前に失った娘を忘れられないステラ。父を亡くして深い孤独を抱える女子大生のイサベル。愛ゆえの行動が娘を怒らせてばかりのイサベルの母シャスティン。偶然と悪意が絡み合い、...
私のイサベル
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商品説明
20年前に失った娘を忘れられないステラ。父を亡くして深い孤独を抱える女子大生のイサベル。愛ゆえの行動が娘を怒らせてばかりのイサベルの母シャスティン。偶然と悪意が絡み合い、ふたりの母親とひとりの娘がついに出会うとき、恐ろしい真実が明らかになる。
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母娘の複雑な関係
2022/07/09 13:15
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投稿者:pinpoko - この投稿者のレビュー一覧を見る
作者が自分の子供の育休中に、もし一瞬の隙をついて我が子がいなくなったら・・・という不安から着想をえて執筆したデビュー作。もともとサスペンスや犯罪ドラマが好きだったらしいが、それでも三人目のお子さんの育休という、結構忙しい中よくこれだけの小説を形にすることができたものだと感心する。
親しいひとの失踪からくる喪失感は、一般的な死別とはまた違い、遺された家族にものすごい心理的負担を負わせるものだというのがよくわかる。数々の小説でメインテーマとして取り上げられ、さらには主人公の性格付けに、この失踪による喪失感をからめる設定などがよく見られるが、やはり現実ではなかなか身近に感じることが難しい人間の内面だけに、読者を惹きつける要素としては欠かせないものなのだろう。
ヒロインのステラは20年以上も前に、休暇で訪れた海辺のリゾートでまだ赤ちゃんだった娘アリスを一瞬の油断で見失う。以来、再婚して新しい家族ができても娘のことを忘れず、かつては人混みで娘を見たと言い張り、周囲に多大な迷惑をかけ、彼女の精神状態さえも疑いの目で見られるようになってしまう。
今は心理カウンセラーとなったステラは、ある日セラピーに訪ねてきたイサベルを一瞬でアリスだと信じ、そこから狂おしいまでの暴走が始まる。
物語はステラとイサベル、そしてイサベルに過剰なまでの執着を抱き、常に愛と敬意を求めるイサベルの母シェスティンの視点が交互に入れ替わりながら進んでゆく。
だが、彼女たちはみな危うい精神状態にあるにも関わらず、本人たちは一向に気づいていない。やがてイサベルは大学の友人やボーイフレンドという外の世界に触れることで、いびつな状況に目覚め始めるが、怖いのが母親二人なのだ。
結末はほぼ予想どおりだったが、すべてが明らかになったあとのイサベルの最後のセリフが何か意味深で心がザワザワする。
原題が「あなたは私のものだといって」というのが、ステラとシェスティンの二人だけでなく、イサベルにも当てはまるものなのでは・・・と戦慄するのは私だけだろうか?アリスという新たな人格を得て、イサベルはこれから真の幸せを手に入れることができるのだろうか?これこそが、新たな執着と破滅への入り口ではないのか? 張り詰めた糸の上を危ういバランスを取りながら、自分のアイデンティティを手探りしてゆくイサベルの今後が不気味な余韻を残すラストだった。