帝国ホテルライト館、ドラマチックな建築物語。おすすめ。
2019/05/14 12:05
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投稿者:複臣 - この投稿者のレビュー一覧を見る
話は、帝国ホテルのライト館解体が決まった後の谷口吉郎建築設計事務所から始まる。それを明治村へ移築できないかとの話だ。
そこから時代は遡り、ライト館はまだない。洋館建ての本館に、帝国大学建築科の学生が見学のため、支配人林愛作を訪ねるところから話が始まる。このとき、学生の中に遠藤新がいた。
当時支配人の林愛作と学生の遠藤新のそれまでの物語とその後のあゆみ、そして世界的に著名な建築家フランク・ロイド・ライトと帝国ホテル建設に関わった人たちがどのようにして、帝国ホテルの新館、ライト館を作り上げたかのドラマである。
使用する煉瓦一つ、石材一つをとっても、ライトの求めるものを探すだけでも一苦労も二苦労もあり、その上での加工の仕方にも多大な時間が費やされていく。
基礎工事の工夫、芸術家気質のライトと周囲の軋轢、やり直しの頻発、さらには火事や地震の混乱もあり、予算大幅超過と納期の大幅延期など、多くの困難の中で、設計者とその助手、石工や陶工達、経営者達が、帝国ホテルのライト館を作り上げる。
予算は当初、ライトとの契約では130万円、五年後の再見積時には272万円、そして最終的には900万円を超えたとある。納期も大幅に遅れている。経営者ならば気が気ではなかっただろう。
思わず一気に読んでしまう。ライトのファン、大正期の建築に興味のある人には大いにおすすめの本。
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投稿者:ぷりしら - この投稿者のレビュー一覧を見る
帝国ホテルを明治村に移築して保存できないか、ということからこの小説は始まる。
てっきり「建築」と「移築」の二部構成の話しかと思いきや
移築については概略が終章で触れられているだけだった。
建築過程について力強く面白く書いてくれた著者の筆で、
並々ならぬ苦労があったと思われる移築についても描いてほしかった。
旧帝国ホテル本館誕生秘話
2019/07/31 08:16
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投稿者:twhk - この投稿者のレビュー一覧を見る
フランクロイドライト設計で玄関が明治村に移築保存されている帝国ホテルの建設の時の経緯やその苦労が分かります
ただあまり登場人物に魅力がないように思えます 著者の表現の問題なのか 扱った人物のためかは断言はできませんが
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明治村が好きで何回か帝国ホテルを見ていたが、
こんなに色々な人間模様や苦労があったとは
知らなかった。ライトが最後まで日本で帝国ホテル
を見る事が無かった事が残念だ。
こんなにも明治村で最も愛される建物になるとは
ライトが知っていたらきっと感激するだろう。
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初出2017〜18年の月刊「歴史街道」
さすが植松三十里。感動の長編。
大正年間に建設された帝国ホテルライト館は、外国人をもてなす日本の迎賓館とすべく、日本古美術商の山中商会ニューヨーク店の林愛作を支配人に引き抜き、日本美術に深い理解があるアメリカ人ロイドに設計を頼み、ロイドに深く傾倒し東大の建築科を出たばかりの遠藤新を助手にして多くの時間と資金を費やして進められた。
大谷石がもてはやされるきっかけとなった石材のこだわり、黄色いレンガの特注の話も面白く、関東大震災を耐えた建物が、多くの日本人職人のプライドをかけたものであったことにも感動する。現在も評判の帝国ホテルのクリーニングの始まりのエピソードや、自由学園との係わりも面白い。
明治村への移転話はおまけだが、大きな仕事へのリスペクトもすがすがしい。
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有名どころのいろんな方々が関わっていたんですね
美しく物語は描かれていて読んでよかったーって思いましたが
実際はちがっていたんでしょうね
志なかばで去っていったライト氏が気の毒です
生きた建築として保存活用されている建物もありますが
ライト館は、過去の時代のものとして保存になってしまったんだなぁ
明治村では過去の空気が流れていたよ
それもいいのかな
これからもずっと手を入れながらそこにあってほしいです
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明治村の帝国ホテル玄関を見たのは昭和54年。当時の彼女がぜひ見たいと言う事で行ったのだが、このような背景があったのか、というのがやっと理解できた。
フランク・ロイド・ライトという妥協を許さない設計者とそれに応える職人達の努力の結晶であり、火事と関東大震災にも耐えたホテルだった。
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GWに明治村で、帝国ホテルのファサードの移築されているのを見て興奮!したので、大変に興味のある内容だった。
なんでこの正面玄関部分エリアだけの移築なのか、本当に勿体無いわ!と思っていたが、あれはある意味あるべき姿でいて、その部分だけでも残っていること自体とても意味のあることだったのだ。
もう一回、明治村に行って見たら、また違う見え方があるんだろう。
あー 犬山まで行かねばならない。
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大正時代に建てられた帝国ホテルライト館。
その建設に関わった男達の熱い戦いを描く物語。
予備知識なし。
帝国ホテルは今の姿しか知らず、ライト館のような建物があったことも知らず、映像を調べ、その美しさに魅了されながら読み進めました。
経営陣と現場の人間、建築家達の気持ちの食い違いや葛藤が興味深かったです。
ライトと愛作が、最後まで関わることが出来ず、ライト館の勇姿を見ることもなかった可能性を考えると複雑な気持ちになります。
後世に残るものを作ることの素晴らしさをしみじみ感じながらの読書でした。
明治村に行き、移築されたライト館を見てみたいです。
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帝国ホテルライト館をめぐっての人間の執念のドラマが描かれている。
ロイド・ライトは、個人の中に、狂気が宿っているのかもしれない。
建築家というこだわりよりも、芸術家としてのこだわりが強い。
日本びいきで、日本の良さをどう自分のものにするのか?
帝国ホテルで、ロイド・ライトがチャレンジしたのは、
ライトの中にある「日本」というもののこだわりだった。
黄色のスクラッチブリックとテラコッタ。
スクラッチブリックを常滑で作り、帝国ホテルが直営のレンガ工場を作る。
それが、伊奈製陶に発展して行く。
穴のある軽い石 大谷石を選ぶこだわりと彫刻ができる。
ある意味では、日本人の匠の技量に期待すぎている面があるが、やり遂げる。
スクラッチブリックとテラコッタと大谷石で、
組み立てて、そのままコンクリートを流し込む。
子供の頃の積み木が好きな ロイド・ライトらしい発想。
そして、浮き構造によって、地震対策をする。卓越した能力。
それにしても、こだわることで、建設費はどんどん増えて行くが、
あまり気にしていない胆力が素晴らしい。
ロイド・ライトと知り合った 林愛作。
この男、セレンディピティに優れている。
京都のたばこ王、村井吉兵衛に連れられて、アメリカに渡る。
アメリカの富豪 ミスリチャードソンと会い、奨学金など援助を受ける。
山中商会の創業者、山中定次郎とばったりあって、入社する。
そして、ロイド・ライトと知り合いとなる。
渋沢栄一と大倉喜八郎に、帝国ホテルの支配人として要請される。
赤字の帝国ホテルを立て直し、ロイド・ライトに帝国ホテルの建築を依頼する。
人の繋がりでは、どんどんと引き上げられて行く。
芸術家ロイド・ライトを守るために、全力をあげる。
覚悟を決めて、リスクを負うことで、困難を突破する。
別館の火災、本館の火災にあって、結局は帝国ホテルを辞することになる。
遠藤新の生き方も、西洋建築の模倣に飽き足らず、
それをどう突破するのか、悩んでいたことが、林愛作そしてロイド・ライト
に師事し、タリアセンで学ぶことで、西洋と日本のハイブリッドが理解できるようになる。
谷口吉郎と土川元夫が、同級生で、帝国ホテルライト館を保存することに
奔走して行く。そして、明治村に 様式を再現させる。
帝国ホテルの魔力みたいなものを感じる。
丁寧な作品作りで、どっしりとしている。熱が伝わった。
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天才と付き合うのは、大変である。しかし、天才は、人の求めるもの、次世代の様子が見える。ライトもそういう人だった。明治村に行きたい。
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フランクロイドライトで有名な帝国ホテルの竣工に至る迄の壮絶な物語。本当に凄い人間物語だと読み進めるうちに気持ちが重くなっていく
常滑の黄色の煉瓦を作った伊奈長三郎はINAXの発祥
この辺りのテラコッタ、煉瓦の製作苦労も取り上げてももう一つの物語があったと想像
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インスタで見つけて、明治村の帝国ホテルが好きでよく写真を撮りに行っている友達の誕生日プレゼントの候補として、とりあえず自分で読んでみることに。。。
これが!すっごく面白かったです。
明治村が犬山にあって身近なことや、常滑の焼き物も(INAXは帝国ホテルのレンガを作るところから始まったメーカーでした!ワオ!)登場するので愛知県民には縁を感じやすいストーリーなのですが、それを抜きにしても一つの建物がまるで生き物のようにいろんな人の人生を巻き込んでいく様が圧巻でした。
明治村はもちろん何度も行っていますが、これを読んだらもう一度明治村のフランク・ロイド・ライトの意匠を見てみたくなりました。
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一行目:製図台が並ぶ事務所に、黒電話のベルが鳴り響いた。
十数年ぶり!に行った、青山ブックセンターにて、フェアで文庫が紹介されていたので。
帝国ホテルに特別な関心のない私でも、ライトの名前や火事なとのエピソードは知っていた。
ただ、以前たまたま見た、安田顕が主演を務めた久田吉之助のドラマが印象的だったので、その行は特に面白く読めた。
老朽化で多くの建物の取り壊しが進んでいるが、本作や辻村深月の東京會舘とわたし、も思い出し、人生を懸けて関わった人たちに思いを馳せた。
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本の福袋。近所の図書館の企画をみて手に取った。
福袋の見出しは「もっと行きたくなる!帝国ホテル」
2冊入っています。
福袋を開けて、このうちの1冊がこの本だった。
帝国ホテルのライト館は、フランク・ロイド・ライトが設計した建築物。くらいの知識しか無かった。このほんは、著名人の生前の想いや思惑が次々と登場する。
・佐藤栄作
・林愛作
・犬丸徹三
・大倉喜八郎
・遠藤新
・伊奈長三郎など
構想から開業までの年月に起きた人間模様が立体的に描かれていて、建築に向けた執念や怨念がありありと伝わってくる。明治記念館に足を運びたくなった。
本の福袋で読んだ本の組み合わせが秀逸であった。
時代の推移がハード(建築物)、ソフト(接遇)と対比されたテーマの本を同時並行で読み進めたことで、帝国ホテルの魅力を深く広く知ることが出来た。