紙の本
『歴史とは靴である』
2020/02/11 19:20
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:百書繚乱 - この投稿者のレビュー一覧を見る
テレビでも活躍中の歴史家が女子高生に“歴史”を語る
《歴史的にものを考えると、前より安全に世のなかが歩けます。歴史はむしろ実用品であって、靴に近いものではないか。》
《だれの視点からモノを見るか、ということです。その点、歴史とはメガネでもあります。》
鎌倉女学院高等学校での特別授業(2019年6月11日)を再構成
“学校では教えてくれない本物の知恵を伝える白熱授業!”
高橋源一郎、佐藤優、瀬戸内寂聴、岸見一郎、京極夏彦と錚々たる執筆陣をそろえる講談社「17歳の特別教室」シリーズの一冊
紙の本
私も受けたかったな、この授業
2020/06/12 07:19
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この本は「17歳の特別教室」と題されたシリーズの一冊。
エッセイを書いたりテレビに出たり、著作が映画の原作になったりと、今や人気の歴史家磯田道史さんが訪問したのは、鎌倉女学院高等学校。この女子高は明治37年創立で、鎌倉という立地にあって中学では「鎌倉学」を学ぶという。
そんな学校で磯田さんは「歴史と人間」や「歴史の「現場」」について、「授業」をした、それを書籍化したのが、この本である。
タイトルの「歴史とは靴である」は、表現方法としては「暗喩」ということになるのだろうが、磯田さんは何故「靴」なのかをこう説明しています。
「歴史的にものを考えると、前より安全に世のなかが歩けます。歴史はむしろ実用品であって、靴に近いものではないか」と。
つまり、「歴史」を「靴」に喩えるのは突飛なように見えるし、こういう表現方法を使うと、聴いている(読んでいる)人は、「さてどういうことか」と考える。
もちろん、磯田さんには、「靴」に喩えるだけの根拠が先のようにあるわけで、適当につなげた訳ではない。
だから、こういう「AはBである」という表現方法が印象に残りやすい。
授業を受けた高校生にも覚えやすかったのではないだろうか。
本書に磯田先生の講義を熱心に聴く高校生たちの写真が収められているが、磯田先生は時に冗談を交えたり、わかりやすい例をしめしたり、案外大変だったのではないだろうか。
そんな先生の熱血ぶりも伝わってくる授業だった。
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授業内容よりも生徒の質問に答えるところが面白かった。
特に、最後の「一旦覚えて忘れた状態を教養という」という内田百閒の引用と、雑木林のような多様な学問が大事、といった考えが、本当にそうだなと思った。まさに教養があるから言えること。
他にも、各国の教科書の日本語訳を見て国ごとの考え方を知るべき、とか、
オスとメスはどうしてあるのかという息子からの質問に、コピーをとって劣化していく様を見せるとか、なるほど確かにと思った。
教養とは、考える力をつけるために必要なんだなーと改めて思いました。
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2019年6月に鎌倉女学院で実施された
講演(授業)の内容が掲載されています。
これが行われた経緯は書かれていません
が、佐藤優氏もそうですが、こういう「
知識の大家」の話を直接聞くことができ
るのは素晴らしい体験です。
絶対に一生忘れない授業になり、大いに
知的好奇心を刺激されるでしょう。
「なぜ歴史を学ぶのか」。そしてそれは
現代にどう活かされているのかが、非常
によく理解できる一冊です。
ちなみになぜ靴かと言いますと、歴史的
にものを考えることにより、前より安全
に世の中を歩くことができます。つまり
歴史は実用品であって、靴に近いから、
ということです。
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歴史は気になるけど、どう捉えてどう向き合うべきかわからなかった。
だからこの本に興味を持った。
読んで良かった。
子どもの頃にこんなアドバイスくれる大人がいたら、その頃から歴史に興味を持てたのに残念だったなと思った。
遅いかもしれないけど、これから歴史に興味をもてそう。
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高校での特別授業での講演内容。
情報リテラシーとか、多角的な目、好奇心。
思考実験からの、発想結合。
鹿児島と沖縄には、班田収授の法が無かった。
←教科書は「標準的な日本人」になるための平均値
着ぐるみ文化
←かつては、文字を知らない人への見える化だったのでは。
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読了。この本は、磯田先生が実際に高校で行った授業の内容を文字起こしし本にしたもの。こんな授業、学生時代に受けてみたかった。
「歴史とは」という話で進んでいく。今の教科書的な話ではなく多方面から考え、何が歴史になり得るかと語る。
最後の生徒との質疑応答が1番興味深い。生徒も今の状況をよくわかっていて、人文系の予算が減らされる理由などを質問したりしている。
目先のことや自分の目の前の狭い範囲で物事を考えがちになっていること、教養は無駄の積み重ねなど、磯田先生の回答も良かった。
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磯田さんのお話聞けるはずだったのにコロナで中止になったのが悔しい。話がおもしろい。人文系の学問を学ぶことの意義、教養とはなにか、忘れてしまうのと一度も触れたことがないことは雲泥の差であること、引き出しが増えた気持ちになった
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女子高での講演の内容をまとめたもののようです。
対象者が生徒なので、とても噛み砕いた内容になっています。
深く知るという目的にはあわないかもしれませんが、入門編にはとてもおすすめ。
歴史に興味がない方でも楽しく読めるかと。
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・ぼくもここに苦しんでいます。史実を史料できちっと吟味すると同時に、一般の人が読んでもおもしろいものを世に問いたいのです。なかなか難しいのですが、その思いで『武士の家計簿』や『無私の日本人』(文春文庫)を書きました。さいわい二作とも映画になり、読者や観客ができて、広く史実を紹介できたものの、これからも模索は続くと思っています。
・日本人の世界人口における割合は、1700年ごろには5パーセントありました。2010年は10分の1の比率になります。世界の人口において、いま、日本人は200人に1人、赤穂浪士の討ち入りの江戸時代には、世界で20人に1人が日本人だったのに、どんどん小さくなっている。
GDPだってそう。ぼくが若いころ、日本のGDPは中国よりももちろん大きかったのです。一人あたりにすると、10倍あったんです。だけど、今後、米・中は日本の7~8倍の経済規模になる予測にたいして、日本は伸びが低いので、おそらくいまから30年後の2050年ーみなさんがちょうどいまのぼくくらいの年齢になるときですよーにはインドと比べても4分の1の経済規模しかない日本になるとされています。このデータは世界銀行系のシンクタンクの予測ですから、そうそう外れないでしょう。
・むこうが完全に正しいとかはまったく思いませんでした。たとえば韓国の教科書は自分の時代を進ませるために、近世がものすごく早く始まったようにして、「われわれは日本より勝っている」みたいなことをいうのです。当時の識字率でいったら日本の方がもっと高く、朝鮮はかなり工業化レベルでは後れていました。奇妙な教科書だとも思いました。しかし、この人たちは日本とはちがう、こういう考えかたをもっているのだ、その違いがわかることが、勉強です。
・教養とはなにかということを、ぼくはよく考えるのです。「教養」にはいろいろな定義があると思いますが、「ムダの積み重ね」じゃないでしょうか。「年季の入ったムダ」と言ってもいい。
たとえばフランス語とか英語とか勉強してみたけど忘れましたということがあります。
忘れるのにどうしてやるのだろうと思う人には、「バカを言っちゃいけない」と言いたい。一回覚えて忘れた状態を教養という、最初から触れたことがない人間とでは雲泥のちがい・・・・と内田百閒は言いました。ぼくが大好きな随筆家です。
そうなんです、なんとなく触れたことがある感じが人間にとっては大事です。たとえば落語を聴いたって、ものの役には立ちそうにないけれど、人間とはどういうものなのかを考えるときにきわめて大事です。バカバカしいような話のなかに本質があります。だからムダが大事にできるようでなければいけないと思いますね。
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【「教養」にはいろいろな定義があると思いますが、「ムダの積み重ね」じゃないでしょうか。「年季の入ったムダ」と言ってもいい】(文中より引用)
歴史家の磯田道史が高校生を対象に行った歴史に関する授業の様子を収録した作品。歴史を学ぶことの意義や今求められる教養、そして日本史の面白さについて縦横無尽に語りかけてくれる内容です。
超個人的な感想になりますが、やっぱり自分は磯田氏の歴史への触れ合い方やその説き方が大好きだなと感じた一冊。磯田氏自身も歴史が好きで好きで堪らない様子が行間から滲み出てくるようでした。
今後も新刊が出るたびに手に取るんだろうなと☆5つ
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12p
人類は、他の個体が経験したものを、空間や時間を飛び越して、人類共有の財産にして、次の行動が学習されていって、もうちょっとましに生きられる、もしくは愚かな考えをも伝えて、差別や偏見を後代に残したりする。
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結論は歴史は分からない。本当に重要な、言えない事実は文書に残さないもんね笑。司馬遼太郎も浅田次郎も好きな私は、エンターテインメントとして歴史を楽しむので十分。まさに教養とはムダの積み重ね。たくさん本を読み始めて、全然違う方向から一つのエピソードがつながりだした。
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課題図書にしてほしいくらい。
私29歳だけど、だからこそ言葉がたくさんささった。
すごく読みやすくてふんふん、となる。
たくさん本を読もうと思った。
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筆者が鎌倉女学院高校で行なった特別授業での講義をまとめた本です。
特に「教科書は平均値にすぎない」という話と、一次史料と二次史料の話が興味深かったです。
確かに、税の制度は明治に入るまで日本全国全然違うやり方で徴収していたはずですが、教科書ではそこまで学びません。
また、一次史料と二次史料では一次史料が信憑性が高いとされていましたが一概には言えないということ、そして古文書以外のあらゆるものが史料になりえるという話もおもしろかった。
高校生向きの話にはなっていましたが、内容的には史学科に入ったばかりの学生さんに聞かせるべき話だろうなと思います。
そしてやっぱり磯田さんの話は分かりやすいなと♪