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高校の吹奏楽部を舞台に久しぶりにコーチとして来た瑛太郎とサックスとしての才能がある新入生・基が、全国大会へ出場しようと奔走する物語。
2人の視点を主軸に、理想と現実の中で頑張る高校生や卒業生達が爽やかに描かれています。
吹奏楽部というと、昔「笑ってこらえて」という番組で、シリーズとして特集されていたのを思い出します。
そこでは、大会に向けての活動、オーディション、先生による厳しい指導などが放送されていました。
放送では、ごく一部分しか放送されておらず、その後の人たちの人生を放送することはありません。
この作品では、名門高校がゆえに進路に揺れる高校生達の苦悩、卒業後の夢や挫折が、リアルに描かれていました。
メインは演奏シーンではなく、それに至るまでの過程を主にしています。なので、演奏シーンはあまり描かれていません。
学生時代、部活に打ち込んでいた人、特に運動部だった人には、色々思い出されるのではないかと思います。
好きなことに打ち込む情熱、選抜に選ばれるか選ばれないかという焦り、卒業後の進路による不安、勉強との両立、次々と蘇ってきました。
弱小になってしまった吹奏楽部がどこまで頑張れるのか。
1年生で部長になった基が、どう先輩と接し、担っていくのか。
コーチは、どのようにして指導していくのかが見所かと思います。
爽やかさが溢れる青春小説でした。
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ただの吹奏楽の物語ではない。
まず目次を見て、各章タイトルに吹奏楽の曲名が含まれているところが粋だと感じた。読み進めていくうちに、単にタイトルに混ぜ込んだだけでなく各々が意味を含んでいて物語の風向きを表しているようだと感じた。
「吹奏楽」という王道ネタでありながらも設定が面白く、特に基がころっと入部した流れはとても惹き込まれた。嫉妬や熱意、プライド、欲望。各キャラクターの悩みや思いがそれらを見事に表していて、そのどれもにリアルさを感じた。
基たちの『スケルツァンド』を、『風を見つめる者』を聴きたくなった。でもきっと目を瞑ればその光景が見えてくる気もした。
2020.12.20 読了
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【部活動に青春を捧げるすべての人へ――傑作! 吹奏楽小説】吹奏楽の全国大会を前に、部長に任命された一年生男子。嫉妬とプライド、受験の重圧。リアルな言葉が突き刺さる王道青春エンタメ!
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青春だ~!夢の舞台で人生が終わるわけじゃなくその先も生きていかないといけない、けれど今の一瞬も大事で。音を、音楽をこんな風に文字に出来るって凄いなと思いました。読んでよかったです。
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一回目に読んだときは単なる青春小説だと思っていたけど、二回目、徹夜して読んで良さに気づいた。
特に良いシーンは、瑛太郎が森崎さんに怒鳴るところ。それほど基達を大切にしているんだと思った。読書感想文とかにおすすめかもしれない。
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青春はキラキラしてまぶしい。
本を読みながらその通りだなー。と感じました。
吹奏楽の演奏を聴きたくなりました。
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吹奏楽で全国大会を目指す話。スポーツではない青春や部活の話で吹奏楽に興味がある人ならおもしろいかも。楽器の種類やコンクールの曲のイメージがわかないとあまり頭に入って来ないかも。
最後、ブラック部活の話が出てきたのが話の筋がブレてしまった気がしましたね。ここは、部活やりきるで終わらせた方がよかったのでは?
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吹奏楽が舞台の青春小説。個人的には「タスキメシ」に続いて本作も最高の“青春小説”でした。
吹奏楽を始めるきっかけになった憧れの人に出会ってしまった基。
嬉しい、悔しい、悲しい、苛立ち、戸惑い、焦燥、不安…。目指すものに辿り着くまで色んな感情を揺らし、悩みながらも切磋琢磨する吹奏楽部の部員たち。
額賀さんの作品は、心を動かされる言葉やシーンが作品に散りばめられていて胸が熱くなります。
主人公の基が眩しすぎる!!
「素直な熱の固まり」という表現に納得。基が瑛太郞先生にかけたある言葉に私もグッときてしまいました。高校生のピュアで真っ直ぐな言葉が深く刺さる。先生と一緒に私まで胸を打たれてしまいました。
瑛太郎先生もすごく素敵。
こんな風に生徒にまっすぐに向き合って、気持ちに寄り添って心を揺らしてくれる先生がいたら、慕わずにいられないと思う。
大人という遠い存在じゃなく、自分たちと同じ目線でいてくれると感じられるのも嬉しい。
作品を読んで、改めて出会いって財産だなぁ。一つのことにここまで打ち込める青春って素敵だなぁって思いました。
大好きな作品がまた増えました♪
『一つのことに夢中になると、それ以外のことを考えるのが、よそ見をしているように感じるんだ。逃げているように感じるんだ。それでもみんな、やりたいこととやるべきことに折り合いをつけて、頑張ってるんだよ。君のお姉さんも、お父さんもお母さんも』
『好きなものを好きでいるには、覚悟がいる。我慢や努力がいる。だから彼等の「好き」を守りたい。好きなものを嫌いにさせない。好きでいることで、彼等を傷つけさせない。好きなものを真剣に抱きしめた時間が、人を大きくする。そう、信じたいから』
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『音だけでわかる。みんなが笑いながらそれぞれの楽器を演奏しているのが。音にそれが滲んでいる。音に一人ひとりの顔が見える』。
あなたは、何か楽器を演奏したことはあるでしょうか?小さい頃からピアノを習っていた方、バンドを組んでいた方、一方で小・中学校時代にリコーダーを吹いただけ…と人によって楽器に触れた経験はマチマチだと思います。そんな私は中学時代に吹奏楽部に所属していた過去を持ちます。”運動部”ではなく、”文化部”である吹奏楽部。当時、私の通った中学校では、圧倒的に”運動部”がメジャーだったこともあって、友達からも親からも、どうして吹奏楽部なんだとかなり詰られました。今となってはなんでそんなことで詰られる謂れがあるのかと反発の思いだけしか残っていません。
そんな反発の想いが残る私は吹奏楽の場で素晴らしい体験をしたという想いが未だ強く残っています。授業を終えて音楽室に集まってくる面々、ロングトーンで音を重ねていく、それぞれの楽器の音が積み重なっていく、みんなで一つの音の世界を作り上げていく、そのことがこんなにも幸せなことなんだ、と当時の私は吹奏楽の場が何よりも好きでした。
そんな吹奏楽の場を舞台にした小説も幾つか刊行されています。私が今までに読んだ作品では、額賀澪さん「屋上のウインドノーツ」があります。額賀さんのデビュー作でもあるこの作品は、かつてご自身も吹奏楽の道に囚われていらした額賀さんの思いが、デビュー作という特別な場でいかんなく発揮された傑作でした。そんな額賀さんが再度”吹奏楽もの”にチャレンジされた作品がここにあります。そんな作品を『青春は自分から遠いものだと思っている、大人の人達にこそ』読んで欲しいとおっしゃる額賀さん。『子供から大人になる過程で、忘れてしまった尊いものは全部、青春小説の中にある』とおっしゃる額賀さんは、『それを読んで、見つめ直すことで、取り戻せるものがいっぱいある』と私たちに問いかけられます。そんな額賀さんの熱い想いがこもったこの作品。それは、「風に恋う」という”王道のコンクールもの”として描かれた、吹奏楽に青春をかける高校生たちの物語です。
『なあ、茶園、本当に吹奏楽やめちゃうの』と隣で訊く杉野に『そうだね』、『やめるよ』と答えるのは主人公の茶園基(ちゃえん もとき)。『およそ半年前の西関東吹奏楽コンクール』で『目標だった全日本吹奏楽コンクールに進めなかった』基のいる大迫第一中学吹奏楽部。『燃え尽きたっていうか、やりきったって感じがする』と答える基。そんな基は、三月の卒業前恒例の『定期演奏会』の場にいました。『ソロパートが回ってきて』、愛するアルトサックスとの『最後のステージ』に思いを込める基。終了後、ホールを出た基は演奏を聴きに来てくれていた幼馴染みの鳴神玲於奈(なるみ れおな)と帰途につきます。『ソロ、よかったじゃん』、『高校でも続けたらいいのに』と言う玲於奈は『千間学院高校 ー 通称・千学の吹奏楽部』で部長をしています。『大学受験もあるし…』と誤魔化す基。しかし、そんな『千学の吹奏楽部が全日本に出場したのは、もう何年も前』のことでした。『あの頃と今では千学は別物��という今の千学吹奏楽部。そして、舞台は変わり、『今日から三年間を過ごす』千学の門をくぐった基は、チャペルの建物を見て『昔、ここで吹奏楽部の演奏を聴いた』ことを思い出します。『全日本吹奏楽コンクールで金賞を受賞』した時代の千学吹奏楽部の演奏を聴いて『雲の上の存在』と感じた基は、それがきっかけで吹奏楽を始めました。そんなチャペルの中に人影を見る基は、『あの人がここにいるわけがない。あの人が千学にいたのは、何年も前だ』とその姿を過去に見た人物に重ねます。そして、教室へと入った基は、『春辺第二中学校吹奏楽部』でトランペットを吹いていた堂林慶太と出会います。旧知の堂林と話をする中で、やはり『まさか吹奏楽部入らないの?』と驚かれる基。そんな堂林はスマホである動画を基に見せました。そこには、『夢やぶれて』を一人奏でる基の姿がありました。『玲於奈っ!』と勝手に動画を投稿したであろう犯人の元へ抗議に赴いた基に、玲於奈は『消してほしかったら、放課後に音楽室においで』と条件をつけます。『行ったら最後、入部届に名前を書かされる』と思うも堂林と音楽室へ赴いた基。『わー!一年生来た!』と黄色い声が響く音楽室。そんな所に『チャペル』で見た人物が現れました。『今日から吹奏楽部のコーチをする、不破瑛太郎だ』と名乗るその男。『君達を全日本吹奏楽コンクールに出場させるために、千学に戻ってきた』と語る瑛太郎は『入部希望?』と基に訊きます。そんな問いに、『全身を震わせるようにして』『はい』と答えた基。そんな基が、『全日本吹奏楽コンクール出場』へ向けて吹奏楽に青春の全てをかけていく日々が描かれていきます。
「風に恋う」と、どこかロマンティックな書名が付けられたこの作品。額賀さんの作家デビュー三年目にして10作目となるメモリアルな一冊という位置付けです。額賀さんと言えば、そのデビュー作の「屋上のウインドノーツ」は『茨城県行方第一高等学校吹奏楽部』で新しく部長に就任した日向寺大志が『東日本学校吹奏楽大会』への出場を目指して部を率いていく姿が描かれていました。そこでは、『ドラムセットを編成に取り入れたらどうだろう』と、一人の少女との出会いが物語を大きく動かしていく一つの青春ドラマの姿がありました。そんな額賀さんは10作目の小説執筆にあたり、編集者から『恩田陸さんの「蜜蜂と遠雷」を渡されて”次は王道のコンクールものにしませんか?”と言われた』と語ります。私もかつて吹奏楽部に所属した過去を持ちますが、コンクールとは無縁のゆるい活動(笑)でしたので知識は持ち合わせていませんが、吹奏楽の世界に”運動部”同様のコンクールの世界があることは知っています。この作品で舞台となる『千間学院高校 ー 通称・千学』は埼玉県にある私立高等学校という位置付けです。埼玉県に強豪が揃っているというのは吹奏楽の世界では有名な話のようで、この作品では、デビュー作が額賀さんの出身地である茨城県の中学校だったのが、強豪揃いの埼玉県に変更されたのはよりリアルさを追求してのことだと思います。そんな千学が『吹奏楽部にとっての甲子園』とされる『全日本吹奏楽コンクール』への出場を目指して活動していくというのが物語の大筋です。しかし、ゴールまでの道には『地区大会を皮切りに、県大会���西関東大会を突破する必要がある』というように、三つの大会での勝利を積み重ねていく必要があります。この感覚は”運動部”であれば当たり前の世界だと思いますが、いわゆる”文化部”では珍しいものだとも言えます。私も吹奏楽部時代には、腹筋を鍛えるために筋トレに精を出しましたが、そんなところも含めて吹奏楽部は”運動部”に感覚としても近い部分があるように改めて思いました。
そんなこの作品、デビュー後三年で吹奏楽部を題材にした二つ目の作品を書かれるというのも額賀さんの強い思い入れを感じざるを得ません。そこには、『私は中学の三年間、かなり一生懸命に吹奏楽と合唱をやっていて、その時のことが未だに自分の中にこびりついている』という額賀さんの思いの強さあってのことです。そんな作品ではご自身のご経験も踏まえられてだと思いますが、演奏シーンが額賀さんの筆の力によって見事に描写されていく様に魅了されます。県大会の場面から少しご紹介しましょう。『今日で終わりにしたくないね』と順番が回ってきてステージへと出て行く面々。照明の光が照らす中、指揮をする瑛太郎。そんな彼の『指揮棒の先が揺れるたびに、ステージの上で音が弾ける』と進む演奏。『グロッケンとヴィブラフォンの透き通った音にチャイムが重なる』、それは『青空の下で教会の鐘が朝を知らせるようで』、『トライアングルの音色はそこを鳥が飛んでいくみたいだった』という詩的な表現。一方で『体の中の、深い深い場所に、チューバやトロンボーンが響いてくる』という中、『大きく息を吸って、サックスへと注いだ』という基。『シンバルの音に合わせ、さまざまな楽器の音が舞い上がる。風に巻き上げられるようにして、遠くへ飛んでいく』、『オーボエのソロが来る。無音の空間に響いたオーボエの旋律は、まるで祈りのようだった』と続く演奏。そんなオーボエの音色に受験勉強との両立に苦しむ玲於奈。『私、もうちょっとコンクール出たいし、吹奏楽やりたい』という彼女の願いを強く感じる主人公の基というこの場面。読者もコンクールの客席へと気持ちが飛翔するようなとても美しく描かれる演奏の場面は、吹奏楽の世界を知る人間には鳥肌ものです。この額賀さんのたゆたう表現の世界がこの作品の一番の魅力だと感じました。そこには、”個人戦”として描かれる恩田さんの「蜜蜂と遠雷」と対照的な”団体戦”ならではの魅力、そして複数の楽器に光があたる吹奏楽ならではの魅力があると思いました。
“運動部”を舞台にした小説は数多あります。そんな作品の多くはその部の人間模様、特に部を引っ張っていく立場である部長となった人物、もしくはエースに光が当たり、勝利に向けての葛藤、青春まっしぐらに生きるそんな彼らの息づかいが描かれるもの、これこそが王道なのだと思います。その視点をまさしくそのまま”文化部”である吹奏楽部に持ってきたのがこの作品です。過去の栄光に比べ、『今じゃ、埼玉県大会も通過できない』という現状に沈む千学。そんな『弱体化した千学吹奏楽部に、黄金世代の部長が帰ってきた』と指導者となって帰ってきた不破瑛太郎の存在。そんな瑛太郎は『まずは一度、この部をぶっ壊すところから始めようと決めた』と、大胆にも『手始めに、部長を一年の茶園基に替える』とい��まさかの行動に出ます。これには、おいおい!と突っ込みを入れたくもなりますが、そんな無茶な展開を辿る物語は、それに表向き納得しても心の中で不満を抱える先輩たちの心の動き、大胆な対応をとった瑛太郎自身の心の動き、そして大役を任された基の葛藤などが丁寧に描かれていきます。自分を部に導く起点となった幼馴染みでもあり、部長職を奪い取ることになった玲於奈との関係の描写も見事です。『部長を一年』にするという大胆な設定の先にこれだけ描くことのできるドラマがある。ご自身二回目の”吹奏楽もの”にかける額賀さんの想いの強さをひしひしと感じました。
そして、最後にもう一つ。それは、いわゆる”熱血スポ根もの”のマイナス面を指弾する『ブラック部活』という視点です。『部活動は価値のあるものだと思うよ。仲間との絆を深め、教室では学べないことを学ぶ』。その一方で『夏休みなのに一日の休日もなく朝から晩まで練習したり』、『生徒に暴言を浴びせる指導者』、そして『大人になって吹奏楽を続ける部員なんて一握りなのに、勉学より部活を優先させるのは異常』という考え方の先にあるものです。『ブラック部活の問題で語られていることって、日本社会の問題そのものだと思うんです』とおっしゃる額賀さん。『”一分一秒でも長く捧げた者が正しいし、美しい”という考え方だけが良しとされてきたけれど、それは間違っている』とはっきりおっしゃる額賀さん。そんな額賀さんは『そういう人達がコンクールで勝つ、というお話には絶対すまい、と決めていました』と執筆に向けて誓った自らの想いを吐露されます。そう、そんな額賀さんが描かれた”吹奏楽もの”の第二作であるこの作品は、決して従来の”スポ根もの”の感覚を賛美する結末を見ない作品。この点にメスを入れられているのがわかるその展開は、従来の”スポ根もの”に額賀さんなりの問いかけをするものでもあったのだと思いました。しかし、それでいて結末に至る感動の物語は、確かにそこにあります。そう、『ブラック部活』の先にある感動は、そんなものを取り去っても変わらずそこにあることを教えてくれるこの作品の結末。この作品で投げかけられた額賀さんの視点は、今後の”スポ根もの”のあり方に一石を投じるものなのかもしれない、そんな風にも思いました。
『ぶつかり合うから、音楽は輝くんだ。仲良しこよしじゃなくて、戦って、たくさんの敗者が出て、そうやって、磨かれていくんだ』。そんなコンクールの場へと青春をかける高校生たちのひたむきな想いが詰め込まれたこの作品。そこには、『そうだ、こういうのが楽しくて、嬉しいから、吹奏楽は楽しいんだ』と、演奏によって一つの理想の世界を作り上げていく生徒たちの瑞々しい姿が描かれていました。“王道のコンクールもの”として、額賀さんが『入れられるものは全て入れよう』とその思いの丈を注いで描かれたこの作品。青春ってやっぱりいいよね、デビュー作の読後同様にそんな想いいっぱいに満たされた、そんな作品でした。
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感動させられる吹奏楽の物語です!
とくに、非常勤講師の不破瑛太郎と吹奏楽部の生徒一人ひとりが熱い思いをもって全日本コンクールを目指す姿が感動ものです。
部員たちの葛藤、不破瑛太郎の過去のトラウマが読みどころでした。
吹奏楽部の一員だった方は絶対に共感できる節があります!(とくにアルトサックスの方)
部員ではなかった方もこの青春は共感できます!
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2022/5/3
千間学院高校の吹奏楽部は、かつて全国大会へ出場するほどの強豪校だったのだが、それから7年経って入学した茶園基きの頃には県大会出場すらままならないくらいに弱体化してしまっていた。
中学の時に吹奏楽部で全国大会を目指していた茶園も関東大会?に進むことができず、高校では進学を目指して、吹奏楽はやらないつもりでいたのだが、同じ学年には、中学時代に他校で競い合っていた堂林がいて、吹奏楽部には、2個上の幼馴染の玲於奈が部長を務めていて、何かと吹奏楽から逃れたい、やる気ないと思っていた。
そんな矢先、7年前に千間学院吹奏楽部が全国大会に出たときの部長である、瑛太郎がコーチとしてやってきた。
これをきっかけに茶園は吹奏楽部に入ることになり、部員と共に全国大会出場を目指して部活に取り組む青春の日々が始まる。
この本は、吹奏楽に全身全霊で取り組もうとする茶園基きを始めとした部員の立場と、自分の人生に迷いながら母校の吹奏楽部のコーチとしてきた瑛太郎の立場から考えた部活動という二つの側面があって、それがこの本の青春っぽさを加速させているように思います。
何かに一生懸命になることは大事だけど、その過程でどう考えるか、どういうプロセスを経て行ったらいいのか、周りの人はどう考えるか、納得させるにはどうしたらいいかなど、自分の道を進む際に考えなきゃ行けないこと、多くの人がぶつかるであろう壁の設定が絶妙にうまいなと思いました。
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吹奏楽は高校ではやらない。
かつて憧れていた名門吹奏楽部のある高校に入学した基は、すっかり衰退していた部に見切りをつけて、そう言っていた。
しかし、その最盛期の吹奏楽部を作った憧れの部長がコーチとして部にやってくると聞き、入部を決意した。
物語は基とコーチとして戻ってきた瑛太郎、二人の視点で描かれる。
かつての栄光虚しく、部員のやる気も衰退した部がコンクールで金賞に輝くことが出来るのか?
かつて吹奏楽に青春をかけ、高校生活を全てを費やした瑛太郎。コンクールで輝いた後の人生に悔いを残す彼と
それでも今、一番やりたいことはコンクールに打ち込むこと、何を捨てても金賞の夢を叶えたいと願う基
p262
今日という時間がどれだけいいものだったのかを決めるのは、明日以降の自分だ。だから、今日のために生きるなよ。明日の自分のために生きろよ
物語がハッピーエンドで終わった後も人生は続く
基のような生徒視点の物語はたくさんあるが、
そこに苦い思いをした大人を加えることで、甘くはない人生でそれでも何かに一生懸命になることの尊さが際立った気がする
その尊さに出会ったからこそ、瑛太郎の人生もまた動き出すのがいい
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めちゃめちゃ良かった。何度も涙腺にきたし最後はほっこりしました。
基よりも瑛太郎先生の方が主人公に見えてしまうのは驚くほど歳が近くて1度社会をリタイアしている等共感する点が多いせいかもしれません。学生たち目線だけの物語だったらキラッキラで最後まで読めなかったかも。でも玲於奈や越谷先輩、池辺先輩をはじめとした部員たち全員に人生があるという重みを感じました。
コンクールメンバーやソロのオーディションの緊張感を思いだしました。吹奏楽以外にもオーディションの経験があるのですが、あの特有の、独特な感情が入り乱れるのは吹奏楽部での経験ぐらいだと思っています。
吹奏楽の密着ドキュメンタリー懐かしい!吹奏楽の旅見てたな~スウィングガールズやのだめも流行ったりして吹奏楽の人気が高まった時期でもありましたよね。
章題等もそうですが実在する曲名がでてきたり、実在の強豪校を文字った学校がでてくるのでその点も読んでいて楽しいです。
楽器によって合う気質があると思っているのですが「超格好良く超目立ちたい、めっちゃ目立って全国の吹奏楽部に『千学のトランペットが凄い』って噂させてやる」と基に言った堂林は清々しいくらいにトランペットで笑いました。
現役吹奏楽部員は勿論、
・20代で元吹奏楽部
・ブラック企業問題を含む、働き方に疑問を持つようになった社会人
に凄く響きそうな気がします。
今からでも、12分間とそこに至る数年間があっという間になるほどに幸せな人生を築いていこうと思えました。
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全国大会を目指す吹奏楽部のお話
公式のあらずじ
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かつては全国大会金賞、マスコミにも頻繁に取り上げられた、名門高校吹奏楽部。
幼馴染の基(もとき)と玲於奈(れおな)は入部したものの、現在の部にかつての栄光は見る影もない。
そこへ、黄金時代の部長だったレジェンド・瑛太郎がコーチとして戻ってきて、あろうことか3年生たちを差し置いて、1年の基を部長に指名する。
選抜オーディション、受験との両立。嫉妬とプライド渦巻く部で孤立する新入生男子の部長は果たして、全国大会開催地・名古屋国際へ行くことができるのかー―
かつての輝きを懐かしむすべての大人たち、
部活動に青春をささげるすべての中高生の胸に、
リアルな言葉が突き刺さる王道青春エンタメ小説!
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何であれ、ひたすら打ち込んだ経験は無駄にはならない、なんて言葉はありがちだけど、果たして本当にいい事だけなのか?
もしかしたら、その選択を後悔する事になる未来があるかもしれない
ただ、過去は変えられないけれども、その過去の解釈は今と今後の生き方で変えられるのでしょうね
必要な良い経験だったとするのか、それとも後悔するのかは人それぞれなんじゃなかろうかと
ブラック部活動問題
何かと騒がれがちな昨今
顧問が無理やりというイメージを抱きがちだけど、生徒が自発的にそうしているケースも同じように扱ってよいのかどうか
でも、自発的に思わざるを得ない雰囲気や環境ってあるし
生徒同士でそんな雰囲気を作り上げているケースもあるわけで、境界線が難しい
その自主性というのを、茶園のお姉さんのケースでブラック会社との共通点をほのめかしている
ブラック会社に対してなら労働基準法で決められたラインがあるけれども、部活は生徒の自主性に任されている面もあるので余計に厄介
さらに、学生の場合は部活だけではなく子供は将来を見据えた勉強と選択をしなければいけないし
様々なやらねばならないことに押しつぶされてはいないだろうか?
「将来のため」とは言うものの、充実した今も必要だと思うんですけどねー
作中でも
「今の高校生は大変だよ。部活だけやってても文句を言われ、勉強だけやってても文句を言われ、受験や就職で転けたら自己責任だ」
とか
「高校時代が一番輝いてた、なんて言う大人にはなるなよ」
なんてセリフが印象深い
何事にも一生懸命になっている学生の姿は本当に眩しい
大人としても、その気持ちはわかる
わかるんだけれども、どこか心配になってしまうのも確か
ストーリーのリアリティとして
全国大会に行く吹奏楽部ともなれば確かにこれくらいの練習量や熱が必要だなと思える
「屋上のウインドノーツ」の学校が東日本大会に出場したら「所詮は物語の都合のよいように……」と思っただろうけど、今回の高校が全国大会に出場しても納得できる
でも、キャラクターの描写が、皆吹奏楽の事を真剣に考えている人たちばかりで人間臭さを感じないし
そもそも、1年生が部長になってある程度のやっかみもあるけどそれでもちゃんと部活が成り立っているところがなんともありえなそうな感じ
でも、もし茶園のような実力と意識を持った子がいて、部活の近年の成績が低迷しているのだとしたらありえなくはないかもと、ギリギリのリアリティを攻めている感はある
ただ、オーディションの方式が「響け!ユーフォニアム」に発想を得ているなーとか
他の展開にしてもどっかで観たり読んだりしたことのある感じで、期待外れなところもある
でもまぁ、吹奏楽部という共通点があったら似たような展開になるのも仕方がないかもとも思える
そして、「拝啓、本が売れません」で提示された課題はクリアされているように感じた
ストーリーとしては感動の波状攻撃だし(解説のあさのあつこが妬むくらい)
コメディ要素として、「タンスの角に……」のフレーズが面白キーワードとして活躍してるし
キャラクターに関しても「屋上のウインドノーツ」に比べれば特徴が出ていたと思う
装丁も幅広い読者層にアクセスできるような感じになってる
けど、実際に売上的にどうだったんですかね?
私程度の読書量のユーザ視点ではこの作品を目にしたのは今回が初めてなんですよねー
やはり、面白い本だからといって売れるわけではないのだなーとも思ってしまった
そう言えば、今は全国大会の会場が普門館じゃなくなってるんですねー
私が気になってる吹奏楽部のお話はどうするんですかね?
あと、音楽のど素人の疑問として、課題曲の評価はわかるけど自由曲が新曲というのは、何をどんな基準で評価するんですかね?
正解がある楽譜ではないものを、評価できるもんなんですかい?と思ってしまう
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高校生の吹奏楽部青春もの。サックスの基(もとき)、その幼なじみの玲於奈、指揮をする部のOBの瑛太郎を中心に展開していくが、さして大きな事件もなく全国大会まで勝ち進んでいくし、玲於奈との恋愛ストーリーもなく、のんべんだらりとした感じ。もともと青春ものが苦手なのに最後まで読めたんだから、そこそこ面白く感じたんだと思うが、振り返ってみると、構成として今一つだったようにも思う。