電子書籍
理不尽極まりない事件からすべてが始まる
2020/10/25 20:53
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投稿者:future4227 - この投稿者のレビュー一覧を見る
ノンシリーズ作品。穏やかな日常を突然破壊する自宅への襲撃。二人の少女姉妹にもたらされる想像を絶する惨劇。これでもかこれでもかというぐらいに悲劇が襲い続ける。そして奇跡の生還。この惨劇シーンが姉視点と妹視点で繰り返されるため、読んでいて苦しくなる。この手法、最近カリンスローターさんはよく使う。そして28年後。姉妹が卒業した学校で起きた銃撃事件にまたしても姉妹は巻き込まれていく。28年前のトラウマを今も引きずる二人がこの事件にどう向き合うのか?そして事件の真相は?下巻へと続く。
紙の本
はなはだしく痛みを伴う、それこそがカリン・スローター。
2020/12/15 03:07
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投稿者:かしこん - この投稿者のレビュー一覧を見る
痛みを伴う物語だった。
それぞれの過去の傷ゆえに、普通の会話もできなくなってる(質問に素直に答えず質問で返し、爆発する感情を迂回させて言葉にする。話を進めるよりも意地の張り合いのほうが目的になり、何を話しているのかわからなくなる)、そんな姉妹と父親、もう今は言葉を紡げない母親との関係。
姉妹の葛藤と、両親への愛を求める気持ち。
ジョージア州の田舎町パイクビルにて。1989年に人権派弁護士ラスティ・クインの家が放火され全焼。ラスティの妻ハリエット(ガンマ)と娘のサマンサ(サム)とシャーロット(チャーリー)は町の空き家にあわてて引っ越したが、その数日後には散弾銃を持った二人の男がその家を襲撃する。
ガンマは死亡、サムは頭を撃たれて死んだと思われて生き埋めにされ、チャーリーは九死に一生を得る。ラスティは凶悪犯とされる人物の弁護をし、少し前にもひどい罪を犯したはずの男が無罪判決で釈放されていて、そのために襲われたのだと後遺症に苦しむサムは父を憎み、大学進学と同時に家を出て音信不通に。チャーリーは町に残り、弁護士となり父とともに仕事をする。
28年後、チャーリーはその朝、町の中学校にいて、銃乱射事件に立ち会ってしまった。駆け寄ると、銃を握っているのは18歳の少女。ラスティはその少女ケリー・ウィルソンの弁護を担当するが・・・チャーリーには過去の記憶がよみがえる・・・という話。
物語はサム視点で始まり、その後チャーリー視点に。 そしてまたサムになり、またチャーリーに。
母のガンマは冒頭で死んでしまうが、なんとも強烈なキャラクターなので不在がより娘二人への影響を強くする。きちんと母に認められたかった・愛されたかった気持ちがサムとチャーリーをときに侵食し、二人の認知を歪ませる。
やはり、母と娘の物語だった。
(→ つづきは下巻のレビューへ)
紙の本
グッドドーター(上)
2020/10/31 16:45
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投稿者:J.J. - この投稿者のレビュー一覧を見る
地元小学校で起きた銃乱射事件が姉妹の封印した過去の記憶を呼び戻す。事件を起こした少女は無罪なのか、そのとき居合わせた男性教師の取った行動の理由は
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カリン・スローターはタフな女性を描く。
今作では、読者にまでそれを求めてきた。
はじまりは、ちょっと個性的な少女小説である。
次は、今時のハーレークイン・ロマンス。
それからアクションシーンがあって、
社会派の法廷小説に進むのかなあなどと思われる。
これがほんの序盤。
私は疲弊した。
一見ロマサス(ロマンティック・サスペンス)に向かいそうな展開のはずが、私は突然、衝撃をうけ、圧迫を感じ、打ちのめされ、目が回り、息が詰まり、ぐるぐる引きずり回された。
呼吸のために本を置けば、自分がひどくへばっていることに気づく。
乾いた唇にしわにが寄り、脳がぐつぐつ煮えている。
がばっと水を飲んで、また読みにかかる。
そしてまたさらに衝撃をうけ、痛みにおののき、めまいを覚えて、ひたすらぶん回される。
そんなにまでして、なぜ読むかといえば、気になって仕方がないからだ。
それからどうなったの? つまりこれはどういうこと?
あの人は誰? その人はなに?
彼らの間になにがあったの?
なにより、あの人はどうなったの?!
自分を傷めつけるように読む、読み続ける。
もはや薬物中毒である。
舞台はアメリカ、ジョージア州の田舎町だ。
皆が互いの顔を知り、家も、家族も知っている。
どこの誰に"事情"があって、どこの家がどんな"訳あり"なのか、皆が知っている。
親子が同じ学校に通い、同じ教員に教わるような、そんな町だ。
たいていの人が思い当たる町を見知っているだろうが、
カリン・スローターの世界では、タフでなければ生きていけない。
そして、その世界は、この上なく魅力的だ。
疲労しきった読書体験だったが、読み終えることができたのは、どうしようもなく笑ってしまう箇所が、時々あってくれたからだ。
カリン・スローターに、「緊張と緊張の緩和」の心得があったこと、性分としてのユーモアがあったことを、私はとても感謝している。
ところで、この『グッド・ドーター』には、『Last Breath』なる前日譚があるらしい。
そういえば同じ著者の本『プリティ・ガールズ』にも前日譚があり、それは『彼女が消えた日』として電子版のみで出されていた。
読めば話の奥行きがなお拡がる、すぐれた一編だった。
こちらもそのような形で出してくれると、たいへんに嬉しい。
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弁護士一家を襲った残忍な殺人事件を背景としたミステリ小説。辛くも生き残った次女シャーロット(チャーリー)は父と同じ弁護士になっていた。
アメリカ南部の田舎町が舞台である。皆が顔見知りで噂が知れ渡る、うんざりするような村社会である。日本の新型コロナウイルスの自粛警察も似たようなものである。凶悪事件の被疑者・被告人を弁護するチャーリーの父親は町の人々から嫌われていた。
チャーリーは地元中学校で銃乱射事件に遭遇する。銃乱射事件を起こした少女を拘束した警察官らは怒りから私刑に走る(上巻98頁)。弁護士が警察官らの暴行シーンの動画を撮影すると、それを止めさせて奪い取って投げ捨てた(上巻101頁)。
しかも警察官らは隠蔽工作まで行った。「警官たちは口裏を合わせ、互いをかばうような報告をしていた。チャーリーが反抗的で、自分からグレッグにぶつかっていき、彼女がうっかり踏んだせいで携帯電話が壊れたことになっていた」(上巻104頁)。
英米のミステリを読んで感じることは、警察の人権侵害を抑制する意識の高さである。被疑者・被告人の人権擁護は日本よりも進んでいると感じることが多い。しかし、ここではダメである。2020年のアメリカはジョージ・フロイドさんの暴行死(Killing of George Floyd)を契機にPolice Brutalityが大きな問題になっている。本書の実態もアメリカの現実だろう。だからこそ抗議デモが大きく広がったのだろう。原著は2017年刊行であるが、邦訳の2020年刊行はタイムリーである。
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弁護士のラスティは誰も依頼を受けたがらないような凶悪犯の弁護人ばかりしている。被害者からは恨まれ、依頼人から弁護費用を踏み倒されたうえ、うまく弁護してくれなかったと恨まれる。小さな地方都市でそんなことをするものだから、顔見知りばかりの住民からも非難される。なぜそんなことをと妻も二人の娘も思っているが、信念だからと言うしかない。
尊い仕事なのかもしれない。しかし、皮肉にもそれが原因で、妻は殺され、長女は瀕死の状態に。次女も心に深い傷を負う。
悪しき人間に襲撃されたことによって崩れた家族の幸せと姉妹の絆、再び取り戻すことはできるのだろうか・・・
以下感想。
ミステリー小説としての楽しみ方もあれば、家族の絆を取り戻していくというヒューマンドラマの要素もある。分量からすると後者のほうが多いので、家族再生の物語を作者は書きたかったんじゃないだろうか。
大人になってから疎遠になり、会えばケンカばかりしている姉妹だが、心の中では互いを思い合っているのをひしひしと感じる。
家族のことを思ってついた嘘が、家族の傷を深めたり、真実がわかって、何も知らなかった自分を責めたり、いろいろだ。
ミステリーのほうはなんとなくそうかなぁ、という方向に進んで行くので、ちょっと物足りないかも。意外性はあまりない。
この作家の作品を読むのは初めてなので、最初は慣れなかったが、シリーズものが人気らしい。この作品は単発みたいだが、この姉妹が冒頭から協力して難事件を解決するみたいな小説が出るなら、読んでみたい。
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カリン・スローター作品で一番感情移入できた作品である。むしろそういうことをこの作家には期待してはいなかっただけに、これは驚きだ。面白さのための人間構築、常にストーリーのための対人葛藤の迷路を構築する建築学的な作家、とぼくは見ていたのだが、もしやそれは視野の狭い思い込みであったか。
とは言うものの、導入部はいつもの通りである。この作家の個性とさえ言えるほどの、うんざりするほどの血とバイオレンス。だからこそ、まさか暴力に巻き込まれた家族の、その後の絆づくりという心の風向きに、この物語が手向けられてゆくとは予想をしてはいなかったのだ。
弁護士一家を襲った過去の凄惨な事件により、心身ともに後遺症を抱えたまま家族を離れた長女。父とともに暮らしその弁護士としての仕事を継ぐ次女。暴力で断たれた母の命と、その豊饒なる知性の記憶。
それぞれに性格の異なる姉妹。そして彼女らへの沈黙の不可視的な愛を貫く弁護士の父。それぞれに深みも痛みも介在する人間たちの傷だらけの人生。それでいて並々ならぬ知性豊かな三人の、喪われし人生の記憶とその再生の行方とが、何と、次女が出くわす新たな凄惨なる事件いう形で試されてゆく物語である。学校での発砲事件。もはや珍しいとは言えないアメリカの風物詩みたいな。
事件の加害者である少女の沈黙がまずは謎である。事件の被害者は、さらに年少の少女、そして校長。一見、単純な構図に見える事件だが、動機も、その後の展開も、見た目通りではなさそうであった。事件に関わるヒロインたちの内なる闘いに、外なる疑惑が絡み合い、継いで、彼女たちに関わる男、壊れかけた夫婦関係、出産の失敗などなど、複雑な課題と過去とが絡み合う暗黒の深さ。
主要登場人物がそう多くない割に、彼ら彼女らの個性が否応なく絡み合い、ぶつかり合う。いつものスローター節。どんでん返しや、いくつものトラップやミスリードが、全体のエンターテインメントとしての謎多き物語を象っているのも、いつも通りのスタイルである。
しかし、警察小説の形を取らず、シリーズとは分離させ、事件関係者(被害者、弁護士、検事)やその家族たちの道を、心の内側から、それもいくつもの過去からの出来事の真相に迫ろうとする、この作者ならではの複雑に編まれたプロットにずっと寄りそうような心身の痛みの記憶がたまらない。
娘たちを守れなかった父親と、その後の人生。一見雄弁に見える彼を取り巻く秘密と、娘たちの錯綜する心が出くわすとき、この家族の物語は、この家族を変える時間にようやく出会うことができる。そこにあるのは癒し? あるいは決意?
不幸な事件により無残に傷つけられた家族とその後の人生航路を、押し寄せるいくつもの波濤のなかに描き切るビルディングス・ロマンである。少なくとも時間軸空間軸ともに壮大なスケールのミステリーとして、否、むしろヒューマンなドラマとしてしっかりと味わって頂きたい力作である。
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朝日新聞の書評で見て。正義感の弁護士ラスティ・クインの妻ガンマ、娘のサマンサとチャーリーがラスティが弁護費を滞納していたザックらに襲われる。無残にガンマは殺害され、サマンサは生き埋めになりながらも一命をとりとめる。そして、そこから月日がたち、チャーリーも弁護士となった。とあるきっかけで訪れた中学で、襲撃事件の当事者となってしまう。18歳のケリーウィルソンは犯人なのか。ケリーの弁護に立つラスティも何者かに襲撃され、サマンサとチャーリーは再会。そして下巻へ…。正直、展開が遅く冗長に感じたり、同じページの中でサマンサがサムになったりチャーリーがシャーロットになったり、読むのが疲れる感じ。だけど、下巻まで頑張って読んでみます…。
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銃があるとこう言う事になるよね
なんとも悲惨な・・・
ちょっと変わった母は
真っ直ぐ手を伸ばして
・・・なんて事!
姉の終わりから
話は妹に
途中は飛んでるけど
容易に想像できる
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これはシリーズものではなく上下巻で完結
この作者はどこまで女性と子供を痛めつけるんだろう?
正義を貫こうとする弁護士の家族に起こった事件から始まる
火炎瓶を投げ込まれて家が焼失した為、町から離れた一軒家に引っ越して間もなく、母親は銃で頭を撃ち抜かれ、長女は畑で撃たれて埋められ、次女は森に連れ込まれたが際どいところで逃げて隣の家に駆け込む…
といったショッキングな出だしから物語は始まる
今作に出てくる女性は皆、不器用で何かを抱えている生き辛さに支配されている
典型的な男尊女卑の世界がこの中にある
読んでいくうちにもどかしさやジレンマを感じるのは私だけではないだろう
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裏カバーを先に読む習慣だもので・・が、実際の筋は首をかしげる~法廷劇か家族問題か・・はたまた
冒頭の「住居の焼失~母親の惨劇」はくっきりと姿を現すのだが、そこから妹が陽になったり陰になったり。その立ち位置関係はともすると姉が入れ替わる。
弁護士の父親は善悪が判別せぬが、街中の嫌われ者(被疑者、被告人を除き)
姉妹にとっても父親の立場がよく見えぬが、はっきりしているのは、亡くなった母親の影が巨大である事。精神世界を相当に支配していた感があり、そこから敷衍して行くメンタルの問題も絡んでいく。
英国ミステリーと大きく異なり、米のミステリーはとにかく「警察の在り様」が暴力的。ともすると似たテーマのばかり・・そして犯罪、社会問題も。抱える闇、膿のどうしようもなさが浮き彫りになる。
カリンスローター、未だ2作目でヒトとなり、作風を把握していないだけに、がっぷり四つで組み、上の伏せんが下でどう回収されて行くか、読書というより知的奮闘になりそう。
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父親が日本でいう公選弁護士をやっていて、「極悪犯罪人の味方」「あいつが弁護したせいで、犯人は出所してきた」など、いわれのない恨みを買い、家族に危険を与えて来た。普通はさ、弁護士自体をやめるか、扱っている客層を変えるかするべ。このおっさん何かあやしい。母親は事件で殺され、娘二人も弁護士。おかしい。何がトラウマが癒えない。。。アホかこいつら。多分上巻だから伏線を撒き散らすのが目的だと思うが、こういう歪んだ人たち、実は嫌いじゃない。下巻どうする?読むか読まないか。
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冒頭の文章である。細かいことだが「スニーカー【の】」とすべきだ。その後も、「太いロープのようになった汗まみれのポニーテール」の方が読みやすいだろう。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2022/11/10/141707
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本の裏にあるあらすじを一読してもよく分からないまま読み始めたが、これは面白い。冒頭がこんなにもショッキングな描写で始まるとは。国が違う、文化が違う、歴史が違うと、こんな事件が起きてしまうことに驚いた。また、読み終わって思ったのは、物語の中心の事件は何も解決していないという事。下巻でどう完結するのか楽しみ。
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子供時代にあった事件で人生が一変する場面を読んでいる時、映画プリズナーズのラスト近くで感じた何も出来ない無力感と同じ感覚を味わった。
とりあえず上はまだ序盤、下巻に入ってからが本番。