村の日本近代史
著者 荒木田岳
かつて村は「人間の集団」を意味する言葉であった。それが現在のように「土地」を意味する言葉に変わったのは明治半ばのことである。だが、その転換の起源は、秀吉の天下統一構想にま...
村の日本近代史
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商品説明
かつて村は「人間の集団」を意味する言葉であった。それが現在のように「土地」を意味する言葉に変わったのは明治半ばのことである。だが、その転換の起源は、秀吉の天下統一構想にまでさかのぼり、さらにその背景には地球上の土地を分割し囲い込もうとするような世界史的な転換があった。この間に起こった都市化・新田開発・分散知行、さらに廃藩置県・地租改正・地押調査から「明治の大合併」まで、村をめぐる土地と人の支配の紆余曲折を概観しつつ近代化の意味を再考する。
目次
- はじめに/近代化とは何か/本書の構成/序章 村概念の転換/人間の集団を意味したかつての村/領域を表す村への転換──「人を通じた土地の捕捉」から「土地を通じた人の捕捉」へ/村があらゆる土地を囲い込む──市制町村制施行/村人の地位転換──「村の担い手」から「統治の客体」へ/第一章 村の近代化構想──織豊政権期/1 近代化と「天下統一」の課題/海外交易と戦乱の世/戦乱と奴隷交易/ポルトガルとスペインによる世界分割/イエズス会によるグローバルな金銀流通/信長・秀吉が目指した国内の平準化と統一/2 「天下統一」と村の再編/天下統一とは何か/秀吉による領知権と所有権の分離/太閤検地における度量衡の統一/石高とは何か/「村切り」による村境確定構想/土地の実態把握の限界/各地の旧慣の整理と独自ルール撤廃/身分制的規制としての刀狩り/領主以下の「土地からの切断」/第二章 村の変貌と多様化──幕藩体制期/1 幕藩体制下での権力分散化の進行/家康による「偃武」/転封の不実施と度量衡の混乱/権力の分散化とその指標/相対的安定期の到来とその背景/2 都市膨張による村の蚕食/職分による空間編制/江戸への人口流入がもたらしたもの/百姓地の蚕食/容認されていった田畑売買/拝領地と相対請地/身分制秩序の形骸化/3 新田開発のもたらした変化/「領域としての村」vs.「人間集団としての村」/検地帳による土地所有権公認/検地帳をめぐる混乱の背景/村の領域の変動/新田開発による村の増加/新田の検地帳登録/総検地と帳簿漏れの土地/帳外地の黙認/石高と実際の収量の乖離/生産拡大と米価低迷/4 石高制の帳尻合わせによる村の再編/飛び地や相給の増加/村の便宜的・属人的分割/自然村ではなかった幕藩体制後期の村/転封への領民の抵抗/開国要求と条約締結/第三章 村の復権構想とその挫折──明治初期/1 維新期における統治方法の転換/府県制と藩制の併存/版籍奉還/飛び地整理の難航/戸籍法における居住地編製主義への転換/町方と村方を超えた支配へ/2 廃藩置県と村の復権構想/廃藩置県と府県統合/府県統合の狙い/石高制と村請制の利用で可能になった貢租徴収/地方官の任命と士族の抵抗/雑税・藩札の整理と地所番号の誕生/近代行政の受け皿としての村の復権構想/3 村の復権構想の挫折と「戸長の時代」ほか
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村に対する先入観に再考を促す野心作
2021/06/13 23:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:K2 - この投稿者のレビュー一覧を見る
村を制度として考察し、「支配のための仕組」と結論付ける。村の近代化とは、支配の基礎単位の人から土地への転換であると評価。その端緒は豊臣秀吉の政策構想に遡るが、江戸期には骨抜きになり、明治期の諸政策によって達成されたとする。とてもスケールの大きな論であり、村に対して抱いていた先入観に再考を促す野心作。
村の真実
2020/12/22 23:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:じゅんべぇ - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんとなくわかっていた、江戸時代の村。海に島が浮かぶように村があった、という表現は言いえて妙。そして、飛び地の難しさ。江戸~明治の土地支配にも興味がある人必見。