紙の本
「疫病芸術」という民俗文化を今こそ知る
2021/07/04 23:08
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投稿者:けいちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
2020年には「アマビエ」が流行しましたが、日本では昔から様々な感染症に見舞われてきた歴史があり、医療が未発達の時代には、その対策として病魔退散の祈りを図絵に込めてきました。
本書でいう「疫病芸術」は、有名な絵師や芸術家によって作られたものではなく、市井の人たちの祈りが込められたものであり、民俗文化のひとつです。
有名なものとしては、上記の「アマビエ」や、その元となったと見られる「アマ彦」などがありますが、信仰の対象としても有名な「牛頭天王」や、「赤もの」の一種である「赤べこ」など、様々なものが本書では体系立てて取り上げられています。
本書はそのほとんどがカラーで載っているので(一部、元が白黒と思われるものなどは白黒になっていますが)、色鮮やかで、当時の人たちが色に込めた思いにも想像が広がります。
2021年現在、まだコロナ禍が収まらない中で、古の日本人たちが絵に込めた病魔退散の祈りを知ることは、意味のある行為だと思います。
そして、その「疫病芸術」をまとめた稀有な本である本書は、今の時代にこそ重要な本だと思います。
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投稿者:6EQUJ5 - この投稿者のレビュー一覧を見る
疫病という原因が目に見えない脅威に対抗するため「何かしなければ」という思いが呪いといった形になったのは感情として仕方ないかと思います。何もしないのはもどかしい。
また、コレラはもともとインドの一地域に限定された病だったのが大航海時代により全世界に伝播したとのこと。やはりヒトの移動は影響をもたらすのか。
新型コロナウイルスの脅威で、また感染症の脅威を思い知らされた現代、アマビエの効果はあるのでしょうか。
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日本では古来、疫病が流行ると神仏や伝説上の武将、幻獣などのイメージを借り図像化され病除けや啓蒙の用途に利用されてきた。それらの図版を集め解説したもので、ボリュームは少ないが中身はしっかりしている。図版も豊富で見ているだけでも楽しい。
著者の畑中章宏という人、民俗学者とのことだが「災害と妖怪」とか「津波と観音」とか面白そうな本を書いてる。要チェック。
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住吉大明神は三韓降伏の御神なれば麻疹を病む者は宜敷く壇を築きて御神の冥助を祈るべし。
表紙絵を解説すると、真ん中にでーん、と御座しますのは病人のそばに置くとよいといわれた今戸焼のおかめの火入れ。左上の緑の葉っぱはタラヨウで「はしかの(お)まもり」と書かれている。葉の裏を引っ掻いて文字を書くと墨でかいたようになる性質から、経文を掻記するのに利用された多羅樹の葉に似ていることから「タラヨウ」と呼ばれたらしい。右はしは麦の穂(着物の柄が麦)。左はしは金柑(同じく柄が金)。真ん中で転んでいるのが柊のはずなんだけど、顔が桶で柄が将棋の駒。この時代は柊を加工してたのかな?
タラヨウの葉、麦の穂、金柑、柊の葉、どれかひとつを間口に吊しておけば麻疹が家に入ってこないというおまじない。
表紙にはないけれど、もとの絵にはふくよかなおかめさんのうえに文字がいっぱいあって、住吉さんを信じて祈っときなさい、と書かれている。(原文はキャッチコピーの通り)
ワクチンなんて昔はないから神頼みしかない。
麻疹や疱瘡、コレラなど、当時は原因もわからず薬もない。生きるか死ぬかはその人の体力次第だった病気の猛威に対して、御利益があるなら神仏だけでなく、妖怪でも動物でも、なんなら藁にもすがりたくなる。そんな人々の切実な願いが表れている護符や錦絵や瓦版。見ているだけでも楽しい(楽しいって言っちゃまずい?) 判じ絵を解いているような感覚だ。
他にも神社の祭りと疫病退散の祈りとか、玩具に込められた疫病退散の願いとか、あまり意識したことなかったから新鮮だった。
茅の輪くぐりってなんだか楽しそう! くらいにしか捉えてなかったけど、「蘇民将来」の伝説と繋がっていたとは知らなかった。京都の人には常識かもしれないけど、東国の人間だから恥ずかしげもなく明かす。
会津地方の郷土玩具の赤べこ。疱瘡神は赤色を嫌うから赤色らしい。体にある斑点は疱瘡を表しているとの説もあるらしい。もしかして「牛痘」つながりで「べこ」なのか?と先走って想像してみたけれど「赤べこ」のほうが誕生が先だった。残念。
その他に、すっかりお馴染みになったアマビエもちゃんと紹介してある。
アマビエはアマビコの誤記との説があるのは、もう有名だ。アマビエの姿が確認できるのは弘化3年(1846年)の瓦版だけらしい。他の資料はすべてアマビコ表記。でもアマビコは猿みたいな見た目なのに、アマビエは鱗がある人魚みたいな見た目。何でだろうね? 姫魚という他の伝説と混じっちゃったのかな? 瓦版の原板書いた人の勘違い?
正解がわからないところも、こういう民間伝承の面白いところだなと思う。
ほぼオールカラーで、細かい文字までくっきり写っているので、拡大鏡片手に、元絵に書かれている説明文を読み下していくのも楽しくてお薦め。
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日本の疫病に関する絵や玩具を集めて紹介した本。疫神の像やまじない絵、かわら版的なお知らせの絵や疫病の流行を予言する妖怪の絵までたくさん掲載されていて見ごたえがあります。コロナで有名になったアマビエももちろん載ってます。こうして見ると、大昔から人間は疫病に悩まされてきて、それを避けるために知恵を絞ってきたんだな…。
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遥か昔から、人々が畏れた感染症の数々。それら疫病を避ける
願いが込められた、護符や郷土玩具等の疫病芸術や慣習を紹介。
一章 疫神の誕生 二章 近世のまじない絵
三章 予言する妖怪たち 四章 明治の流行病
コラム、参考文献一覧、掲載元一覧有り。
古代から重篤な感染症が身近であった時代の日本において、
様々な疫病は、目に見えぬ物の怪や疫神などがもたらすものだと
考えられていました。特に、死を齎す疱瘡、麻疹、コレラ。
疫病退散を願って、人々は祈り、託し、避ける。
或いは疫神を祀って歓待し、満足して去ってもらう風習も。
平癒を、無事を、生を祈る対象として、描かれ、作成された
護符や郷土玩具、赤色の信心、疱瘡絵やはしか絵。
郷土玩具は、守る対象の子どもが手に取る可愛らしい造形。
売る目的はあれど親切丁寧に、心得や禁忌、守りの品を教える
数々のまじない絵。災疫を免れる手段を教える予言獣の絵。
もちろんアマビエも。コロナ禍の現在に注目されるのも分かる。
また、当時の疫病流行等の状況が分かる絵も紹介されています。
古から人々が原因不明の恐ろしい疫病について、どう考え、
対処していったのかを、少ないページ数の中に分かり易く、
かつ丁寧に疫病芸術を紹介しているところが、良かったです。
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2020年には「アマビエ」が流行しましたが、日本では昔から様々な感染症に見舞われてきた歴史があり、医療が未発達の時代には、その対策として病魔退散の祈りを図絵に込めてきました。
本書でいう「疫病芸術」は、有名な絵師や芸術家によって作られたものではなく、市井の人たちの祈りが込められたものであり、民俗文化のひとつです。
有名なものとしては、上記の「アマビエ」や、その元となったと見られる「アマ彦」などがありますが、信仰の対象としても有名な「牛頭天王」や、「赤もの」の一種である「赤べこ」など、様々なものが本書では体系立てて取り上げられています。
本書はそのほとんどがカラーで載っているので(一部、元が白黒と思われるものなどは白黒になっていますが)、色鮮やかで、当時の人たちが色に込めた思いにも想像が広がります。
2021年現在、まだコロナ禍が収まらない中で、古の日本人たちが絵に込めた病魔退散の祈りを知ることは、意味のある行為だと思います。
そして、その「疫病芸術」をまとめた稀有な本である本書は、今の時代にこそ重要な本だと思います。
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過去より疫病に悩まされてきた日本人が、それらから逃れるために色々と知恵を絞ってきたのがよくわかる。それらの護符は眺めるだけでも面白い。版元の商売っ気も感じないわけではないが。。
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資料が豊富で見ているだけで楽しい。
ただ浮世絵に書かれている文字は縮小されていて読みにくいので、気になったら調べてみるのも良いかと。
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数々の疫病・流行病に襲われている日本。
書物に記されている疫病を振り返り、病気への対策がそれこそ神頼みしか無かった時代、人々が信仰し快癒を願った神々の姿をたどる。
・牛頭大王は疫神でしたか。地獄の門番だとばかり。牛…草を食む。転じて瘡を食べてくれる。寝牛。
・はしか絵を見たい。疱瘡絵は快癒すると川に流す
・神社仏閣は、そもそも病魔退散が縁起なのかも。病気は悪しきものの代表格だったろうしなあ。
・天然痘、麻疹、水疱瘡…三代大病
・鍾馗さま、鎮西八郎為朝、金太郎、桃太郎、ミミズク、ウサギ、若駒、羽子板、鯛車、達磨、猩々
・牛痘の迷信。お医者さんの苦労。
・はしかの民間療法の一つ、犀角。
・コレラ…1822年に対馬経由で下関。別名「見急」大坂も通運が盛んな場所で広まる。
悪狐(海外アメリカ)を除去するには山犬(オオカミ)。
・「由縁の友 戌の見舞い」コレラ流行の戌年、他の干支動物たちが戌のお見舞いに来る様子を描いた。
・北斎の「須佐之男命厄神退治之図」
・赤い色は厄除け。郷土玩具。
・予言獣。アマビエさま、アマビコさま。人魚、神社姫・海出人。件。白澤。
・ヨゲンノトリ。←大変お可愛らしい。
・各地の風習。コロナで100年ぶりに奉納されたものも。←疫病を歓待して満足してもらいお帰りいただく。
〇疫病を祀るという信仰の形が興味深い。
〇予防や病気に罹ったときの心得を絵にしたものなど、現代にも通じるなあと。
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日本人の疫病とのかかわりを、当時描かれた絵や習俗から追っていく。
図版中心なので初心者にもわかりやすく、さらりと読めた。
深刻な状況のなかでも、ユーモアあふれる表現がおもしろい。
日本人は昔から擬人化が好きなんだなぁ。
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マツコデラックスの表紙が目印
(嘘です)
当時お守り札的な発想から、とにかく強い
ものを絵起業退散に使う
鐘馗様や清正公、八幡太郎為朝に金太郎と
当時の人がすがる思いで買ったのだろうな
痘瘡や麻疹の食して良い食品を羅列したり
疫病の歴史が延々と記載されていたりと、
知的レベル・教養の高さも感じるから一該
に迷信的とは言えない
アマビエ騒動があって、江戸時代と現代の
差がなく最後は神頼みもうなずける(/・ω・)/
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日本における疫病とそれに対するまじないや啓蒙のための絵図を集めた本。たくさんの図版がカラーで載っているので見ていてとても面白い。まさに芸術と呼ぶに相応しいものも多く、祈祷やまじないに頼るしかなかった時代ならではとも言えるのかも。赤べこや鯛車は知っていたけど、それが疫病除けの玩具だったとは知らなかった。赤みみずくもかわいいが、私は黃鮒の方が好きかも(^^)
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ざっと見だからあんまり内容理解はしてないけど、興味深い内容だった。
疾病のことももちろんそうだが、中山道についての歴史的背景を調べるきっかけとなってとても面白かった!