紙の本
それは生きるための魔法の言葉
2022/03/13 08:00
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投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
なんと美しい絵本だろう。
絵本でいう美しいは、単に絵がきれいということではないだろう。
文(この絵本でいえば、それは詩の言葉のようでもある)と絵が見事に合致し、音楽を奏でるようであることだろう。
文を書いたのはカナダの詩人でもあるジョーダン・スコット。
彼自身が吃音者で、この絵本は彼自身の体験にそって生まれたものだそうです。
この絵本の少年のように、朝起きたら「ことばの音」だらけで、しかし、自分にはいえない音があることにいつもちぢこまっている。
学校に行っても、あてられないように願い、あてられてもうまく口が動かない。
そんなある日、少年の父親が彼を川に連れていった。
父親は川を指さして、「あれが、お前の話し方だ」と言う。
川は泡立ち、波うち、渦をまき、くだけていた。
「お前は川のように話してるんだ」
このシーンの、静かに目を瞑る少年の顔がいい。
光にきらめく川に半身をいれた少年の後ろ姿がいい。
少年は気づくのだ。川だって、自分と同じようにどもっている。
でも、その先にあるのはゆったりとした流れだ。
絵を描いたのは、シドニー・スミス。
なんと素敵な川を描いてくれたのでしょう。
スコットが見た川もきっとそうだったように、読者もこの川に自身の姿を投影できるのではないでしょうか。
吃音者だけではなく、どんな人にも嫌なことであったり苦手なことがあるでしょう。
そんな時、この絵本の川を思い出し、こうつぶやくといい。
「ぼくは、川のように話す」。
紙の本
父からの心の支えになる言葉
2021/10/02 09:27
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投稿者:佐々木 なおこ - この投稿者のレビュー一覧を見る
少し前に、作家の落合恵子さんのラジオ番組で紹介されていた一冊。
著者は吃音のある詩人。
彼の少年時代、父親が川に連れて行ってくれ、一緒に川岸で石を投げたり、
虫を捕ったり、ブラックベリーを摘んだり、
しゃべらずにできることをなんでもしていた。
そんなある日、父親が川の水を見ながら彼に言いました。
「ほら、川の水を見てみろ。
あれが、おまえの話し方だ。」
それを聞いた後の、少年の穏やかな表情が
見開きのページいっぱいに広がります。
さらにページを開くと…。
どこまでも続くキラキラ光る川面に少年の姿の後ろ姿がなんともうれしそうに見えました。
まるで一切の音を消して時を止めてしまったような素晴らしい風景。
「おまえは、川のように話しているんだ」
父親の声だけが心に響いてくるようでした。
この言葉を心の支えに、彼はこれからの人生を生きていく。
紙の本
吃音の少年の絵本
2021/11/19 11:54
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投稿者:鍋 - この投稿者のレビュー一覧を見る
カナダの詩人である作者自身の少年時代の思いを書いた、初めての絵本だそうです。
川のように話す、その発想は子供の頃、作者の父が川辺でかけてくれた言葉から。
その言葉に作者がどれだけ救われたか、あとがきを読んで胸が熱くなりました。
原文で読んでみたくなりました。
紙の本
吃音は自然
2023/03/02 13:04
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投稿者:qima - この投稿者のレビュー一覧を見る
川のように、急いだり、渦巻いたり、うねったり、ゆるくなったり、そんな風に話すことは、全然普通。お父さんが教えてくれることも、カナダの自然もステキです。
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養老孟司さんがテレビ番組でこのようなことを仰っていた。
「言葉は、なかなか出てこないのが普通なの。ぼくみたいに、スラスラと出てくるほうが異常なの」
吃音のことを言ったのではないだろうが、この言葉に、言葉がなかなか出てこないときもあり、言い間違いも多い自分がどんなに救われたか。
この絵本の主人公のジョーダンは吃音で、言葉がなかなか出てこない。
たぶん、頭の中ではスラスラと言葉を喋れているんだろう。
それなのに、言葉が脳から出て、喉を通り、口に出すと、全然うまくいかない。
その絶望を、朝起きたときの瞳のアップの絵からひしひしと感じる。
学校では、話すと笑われ、馬鹿にされるから、必要なとき以外はいつもだんまり。
そんなジョーダンの絶望を希望に変えたのは、父親の「言葉」だった―――。
ジョーダンは「言葉」によって苦しめられ、「言葉」によって希望を見出だし、詩人という「言葉」を使う人になった。
お父さんの『ほら、川を見てみろ。あれが、おまえの話し方だ』という「言葉」で、目の前で広がる大自然の川の風景と、自分のありのままの姿が一体となって、「自然がこのままで美しいんだから、ぼくもこのままの喋り方でも美しいのだ」と、「受容」ができたんだと思う。
コンプレックスを抱えるすべての人に読んでほしい一冊。
ご紹介くださったやまさんはじめフォロワーの皆さん、ありがとうございました。
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みんなと違う喋り方のせいで、
いつもびくびくしている様子が伝わってくる。
色んな言葉がつっかえたまま、
喉の奥に松の木が生えたみたいに苦しい。
お父さんが優しい。
川に連れて行ってくれるが、
学校の様子を思い出してしまう。
みんながクスクスゲラゲラ笑った。
涙が出る。悲しい。
川がキラキラしていてきれい。
心が静かになる。
川も流れるだけではなく、泡だったり、渦を巻いたり、どもる。
例えば、有名な、みんなの前で話す人だって、
誰だって噛んじゃうことあると思う。
それを笑ってはいけないと、思った。
うちの息子は、高校生の時に生徒会長だったのだが、壇上に上がって話をする時に、緊張して噛んでしまうことが多かった。
友達に「今日は3回も噛んだ」とよくからかわれていた。
その頃は笑って話していたが、心の傷ってどうだったのか?
落ち込んだ?
思い出してしまう。
流れるように話すこと。
川のように話すこと。
からかわれた時には、川を思い出そう。
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遠目で見るとまるで写真のような大胆なタッチの絵、力強いインパクトのある絵に目が奪われ……お迎えしたこちらの本!
#ぼくは川のように話す
https://amzn.to/38QaL1T
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吃音を持つカナダの詩人
#ジョーダンスコット さんの実体験
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デビュー以来、発表する作品は数々の賞を受賞している
#シドニースミス さんの絵
文字のない絵本#おはなをあげる などで知られていますね!
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自由で型にはまらない字の日本語タイトルは#荒井良二 さんが描かれたそうです。
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人と同じようにものごとが「なめらかに」できない。これって吃音だけでなく……誰にでもあることではないでしょうか?
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「少し注意して、自分の話しぶりに耳をかたむけてみてください」と著者のことば、話し方も個性の一つですね。最後の「あとがき」を読むと、なおさら本の重みを感じます。
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この絵本は吃音を持つ詩人の実話、そしてその心の様子を言葉と視覚的なイメージで膨らませ表現しています。
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少年の目と川の表情がすべてを物語っています。
川の……
よどみ
ためらい
あわだち
とまる
しずむ
ひきかえす
またすすむ
どの一部分を切り取っても同じがない、そして自然の中の動きは、決してまっすぐではない。それはお前の喋り方そのものだと父から励まされ、自分らしく生きられるようになった……父の寄り添いと、その思いが少年に浸透していく様子が、美しい言葉と迫力ある絵から感じられます。
本当に少年の心の変化が手に取るようわかります。
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吃音があって、言葉が出にくい少年の、ひとり取り残されているような気持ちがダイレクトに伝わってきて苦しくもなります。でも自然を前にして父の言った言葉に救われた少年は、折り込みのページを経て、「これがぼくの話し方」と。
まさに一歩踏み出そうとする勇気や希望がそこには溢れています。
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少年の心の浮き沈みを見事に表現した絵は素晴らしいの一言です。
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昨日届いた#百町森 さんの#コプタ通信 にも……なんとタイムリーに紹介されていました。
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また素敵な本と出会えたことを嬉しく思います。
そしてありのままの自分を見つめ直してみよう〜。
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#原田勝 訳
#偕成社
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話し方を川の流れにたとえることで、ありのままの自分を認められるようになった少年。
川は、なめらかに流れているようで、あわだったり、うずをまいたり、くだけたり…。
どもることは、ちっとも不自然では無い。むしろ、川の流れを見ていたら、どもること自体が自然なことではないか、と思える。
父の優しさと、眼差しの深さ、自然が自然であること、自分が自分らしくあること。優しく、力強い絵本。
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静かな色彩で描かれた絵がとてもすばらしい。男の子の胸の内で、世界はこんなにも美しく見えている。それを表現するのにぴったりな話し方だと思った。
岸にぶつかり、しぶきをあげるたび、川面にはきらきら、光のつぶ。
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川の流れる音が聞こえてくるような表紙だけでなく、とにかく全ページ「絵」が素晴らしい。
質感もタッチも、ことばとの組み合わせも、少年の見ているもの、感じている心がそのまま伝わってくるようで読んでいる私もどきどきしてしまう。
ニューヨークタイムス最優秀絵本賞とのこと、
いつか翻訳だけでなく原語でも読んでみたい。
(title辻山さん紹介)
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朝、目をさますといつも、
ぼくのまわりは
ことばの音だらけ。
そして、ぼくには、
うまくいえない音がある。
いろんなことばがつっかえた日は、おとうさんが川に連れて行ってくれる。
「ほら、川の水を見てみろ。
あれが、おまえの話し方だ。」
〇宝物のような絵本。言葉がうつくしくあたたかい。絵も温度や肌ざわりや気持ちが伝わってくる。
「流れるように話す」とは、なめらかに話すということではない。うずをまいたり、あわだったり、波をうったり、くだけたりして川の水は流れていくのだから。
後書きにも胸を打たれました。
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吃音。
知っているけれど、どんな気持ちか、想像をめぐらす。
そんなことよりもなによりも、理解してくれる人がいる。それがなによりも必要なことなのだ。
じっと待つよ、話していることを聞くために。
大丈夫、笑わないよ、何を言いたいのか待っているよ、聞いているよ。
「川のように話す」ってどんな感じだろう。音を聞きながらまだまだ考える。
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吃音への不安、それを優しく見守るお父さん。とても温かい気持ちになる。言葉の表現が詩的で、絵がまた瑞々しく線の一本一本に色の全てに命が躍動している。
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大好きな暮しの手帖16号「あの人の本棚より」画家、絵本作家の堀川理万子さんが紹介されていました。
【吃音の男の子が、主人公なのですが、その子が学校で発言するときに、みんなが振り返って彼を見るんですね。その絵がぼやけているのは、男の子の視界が涙でにじんでいるから。】
このシーンがどうしても見たくて本を借りました。
実際にページをめくると、確かにそうなんです。涙でにじんでお友達がぼやけているんです。
でも堀川さんに言われなければ私は気づけませんでした。絵本って何気なく見てしまいますが細かい表現が沢山ある事に気付かされました。
クライマックスは両ページが観音開きになっていて、男の子の目を伏せた顔が大きく描かれているのですがその頁を開くと、、、、、、ほんと息をのむ美しさでした。
手元に置いておきたいと思う絵本でした。
うちの子が東日本大震災とその直後の引っ越しをキッカケに吃音になりました。始めは緩やかに始まりあれっ?っていう位でしたがだんだん酷くなり最初の一言を言うのに顔が歪む位になりました。顔が歪むくらい苦しそう、でも最初の一言が出ないのです。吃音障害があるとお話することが苦しい時があるんです。それを皆にわかって欲しいけど、小学生位じゃ無理かなぁ、、、。
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ぼくには、うまく言えない音がある。
「ま」はぼくの舌に絡みつき、「カ」は、喉の奥に引っかかって出てこないし、「つ」でつっかえたぼくは、魔法にかけられたようにうめくしかない。
ぼくの口は動かない。朝からいろんな言葉がつっかえたままだから。
そんなぼくを迎えに来てくれたお父さんは、「うまくしゃべれない日もあるさ。どこかしずかなところへいこう」と川へ連れて行った。
うまくしゃべれないことで、笑われたことで、胸の中に嵐が起こり、目が涙でいっぱいになったとき、お父さんがぼくの肩を抱き寄せていった。
「ほら、川の水を見てみろ。
あれがお前の話し方だ」
見ると川は……
あわだって、
なみをうち、
うずをまいて、
くだけていた。
「おまえは、川のように話してるんだ」
吃音に苦しむぼくが、父親の言葉によってそれを受け入れることができたようすを感動的に描いた絵本。
******* ここからはネタバレ
吃音に苦労する著者が、その吃音を「怖いくらいに美しい」と思えるまでになったきっかけを綴った物語です。
これは本当にドラマチック。
まず、絵が素晴らしい。
コマ割り(っていうんですか?)にも工夫がされていて、文章をとっても助けています。
「ぼく」が川のように話していると気づく場面は特に感動的です。
吃音であること自体は変わらないけれど、受け入れることで、それが自分自信を表すものになっていく過程がすばらしい。
この気持ちの変化は、すべての人のコンプレックスに活用できますよね。
そうしたら、ありのままの自分を受け入れ愛すことができることができる人が増えていくのではないかと思うんです。
難しいことは描いていないので、読める子なら、中学年からいけると思います。
でも、この本は、ぜひぜひ"全人類に”読んでもらいたいです!!!