「honto 本の通販ストア」サービス終了及び外部通販ストア連携開始のお知らせ
詳細はこちらをご確認ください。
読割 50
紙の本
エリザベスの友達 (新潮文庫)
著者 村田 喜代子 (著)
夕方になると、どこかへ帰ろうとする母。いったいどこへ帰っているのか−。認知症の老女たちのなかに宝石のように眠る戦中戦後の輝かしい記憶。その豊かな世界を描く物語。【「TRC...
エリザベスの友達 (新潮文庫)
エリザベスの友達(新潮文庫)
ワンステップ購入とは ワンステップ購入とは
このセットに含まれる商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
商品説明
夕方になると、どこかへ帰ろうとする母。いったいどこへ帰っているのか−。認知症の老女たちのなかに宝石のように眠る戦中戦後の輝かしい記憶。その豊かな世界を描く物語。【「TRC MARC」の商品解説】
戦後、命からがら娘と日本に引き揚げた初音さんは今年九七歳になる。もう今では長女の顔もわからない。病が魂を次々と剝いでゆくとき、現れたのは天津租界でのまばゆい記憶だ。ドレスに宝石、ミンクを纏い、ある日はイギリス租界の競馬場へ、またある日はフランス租界のパーマネントに出かけ、女性たちは自由だった――時空を行き来しながら人生の終焉を迎える人々を、あたたかく照らす物語。【商品解説】
あわせて読みたい本
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
この著者・アーティストの他の商品
前へ戻る
- 対象はありません
次に進む
紙の本
少し苦いけど、静かでユーモアのある小説
2022/04/24 21:14
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:うさぎこぞう - この投稿者のレビュー一覧を見る
老人ホームに入居中の初音さんは認知症が進み、娘たちのこともはっきりわからないし、日常動作も緩慢だ。人の手を借りないと食事もできない。でも初音さんは意識の中で若かった頃に生きている。優雅で楽しかった日々。辛かった思い出もあるはずだけれど、甘く輝く思い出ばかりが現在のことのように目の前に広がる。このことは娘たちもホームのスタッフも知らないこと。
ホームの他の入居者たちも、人知れず現在と過去を境目なく自由に行き来する。
彼ら彼女らは側から見ると理解できない言動も多いし、スムーズに動くこともできない。惚けたようにただそこに座っている。かと思うと時々激しく動く。その様子を常温の感じで写し取っている。
入居者の家族たちはそれぞれ心配したり、現状を受け入れたりしながら彼ら彼女らを見守る。
老人たちを美化せず、でも悲惨に描くこともしない。
あたたかくてユーモアのある作品。
現実の老人たちのホームでの暮らしぶりは飾り気のない描写の一方、主に初美さんの見ている「幻の現実」は霞みがかったような砂糖菓子のような筆致。それが違和感なく混ざり合っている。