紙の本
筋は面白い
2022/06/13 12:04
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞記者出身の著者らしく、地方新聞社を舞台に、全国紙と地方紙、組織内の人間関係、ジャーナリズムの光と影が、良いあんばいで描かれていると思った。
特に、新聞記者の虚栄心?が生む誤報どころか、「虚報」を扱った部分は、もはや既存のマスメディアには力はなく、誰もが発信者になれる現代社会における問題を鋭く突いていると思った。
短編集だが連続している長編として読むべきだろう。
リアルさゆえか、ミステリーとしての読後のすっきり感はない。
それと、「罪の声」を読んだときも感じたのだが、この著者の作品はすらすら読み進めるのが難しい。ストーリーの筋としてはとても面白いのに、なぜだろう。読んでいて途中で挫折しそうになる読みにくさがある。今回も何度も眠くなった。
映画化やドラマ化すると受けると思う。
紙の本
歪んだ波紋
2022/04/05 15:35
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:なみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
新聞やネット報道など、メディアの誤報の怖さ。
一度、ニュースや報道として出回ってしまえば、それが事実となってしまう。特に、新聞というお堅い情報源は、ネットより信じてしまう。
情報を扱う者の倫理観、ネットで悪意で拡散される恐怖など、よく耳にすることだが、改めて怖くなった。
投稿元:
レビューを見る
メディアの在り方…
今ではサクッとネットで『情報』がとれる時代。
そしてその『情報』ありきで拡散される。
果たして…どこまでが真実なんでしょうね。
・黒い依頼
・共犯者
・ゼロの影
・Dの微笑
・歪んだ波紋
それぞれの主人公の視点から描かれています。
あるキーワードで微妙に繋がっており、そして最後にガツリと繋がる。
こんな形式のストーリーは好きなので楽しめました。
だが、社会派!スラスラとは読めんかったな^^;
投稿元:
レビューを見る
連作短編集。それぞれが薄くつながっていて、最後に大クライマックスを迎える、という体。やっぱり好きです、こういう系。フェイクニュースに焦点が当てられているけど、背筋が寒くなる内容。こんなの、フィクションの中での話でしょ、と軽く扱いきれない現状を思ってゾッとする。
投稿元:
レビューを見る
読み始めてから連作短編集だと気付いたけれど、五篇とも虚報や誤報がテーマで、現実にもあり得そうな話だし、結末が気になって一気に読みました。
著者の塩田さんの元新聞記者という経歴もあって、余計リアルに感じたのかも。
最後の「歪んだ波紋」は、ウェブメディアの編集長があんな簡単に言葉だけで信用しちゃうものなの?って違和感が残ったな、、、
記者に限らず、自分で見て考えることを放棄しては駄目だと思いました。
投稿元:
レビューを見る
読書メーター見ても、ブクログ見ても(ブクログまだそんな件数ないですが)賛否両論分かれまくってるのですが、個人的には
さすが塩田作品!こうまとめるかー、と圧巻でした。
短編集かな?と思いつつ、少しずつ少しずつ絡み合って最後の章でバシッと繋がる。その爽快感と、後は本当にいい意味でなんですが、
塩田作品によく描かれる、この「救いようもない事実」の連続。そしてそれに救われることないままに立ち向かって生きようとする人々。これが塩田作品の良さだと個人的には感じております。
最初の「黒い依頼」が一番オーソドックス。近畿新報の中島と桐野が市長選とひき逃げ事故の記事で虚報を出していたことが発覚。最後の奥さん(美咲)のシーンで「え?え?やっぱり許せてなかったってこと??」とパニックになりながら、次章へ。
「共犯者」の相賀さんが結局一番いい人なんだ~~。いや、しかし途中で「全て自分の筆跡だった」時は本を閉じて叫びかけた。相賀さんも少なからず加担してしまっていた。同期の自殺の近辺整理から、とんとんとんと繋がっていく様が面白かった。あとこの辺りから、章の最初に描かれてる記事やインタビューの繋がりについても考えるのが面白い。
「ゼロの影」も絶句した~~……。もちろん、夫・新一の姿をビデオに見つけた時ですよ。嘘だろ…って呟いたのは私だけですかね。最初の記事、何だと思ってたら、報じなかった記事の代わりの記事だった!夫に言わなかったの、賛否両論あるとは思いますが、私はあれでよかったと思う。というより言わない方が絶対妻としては辛いわけで、それでも子どもを守りたいという辺りが塩田作品の真骨頂ですよ。(※個人的見解です。笑)
「Dの微笑」はあれよあれよと言う間にストーリーが展開し、TVのバラエティー番組の捏造が発覚するのですがそこからの展開が……。安田にも驚いたが、お前もか、と。
実はこの章まで読むと、全て「ファクトジャーナル」「安大成」には繋がっている。むむむ、というところで最後の章。
「歪んだ波紋」で、安田・桐野、そして他のメンバーも加えたフェイクニュースでメディア崩壊を策略する一派がいたことが発覚。そしてそれに安大成も絡み合っていく。これ、三田園のお母さんの怪我って偶然だったの?たぶん偶然じゃないよね?週刊紙の奴辺りがやったのかなと勝手に推測。
いやそれにしても、何が正しい情報で何を判断して生きていくのか??今生きる者に突きつけられてるメッセージだなと。
報道出身の塩田作品だからこそなせる、
また、救いようもない事実に戦う人々を描く作品。
面白かったです。
投稿元:
レビューを見る
マスメディアによる<誤報>が題材の連作短編集。著者の【先輩】でもある横山秀夫さんを意識し過ぎたのか、些からしくない作風に思えるものの、旧態依然とした新聞社に視聴率至上主義のテレビ局、PV稼ぎに躍起となるネットメディアなど、マスメディア全方位への警鐘を声高に鳴らす作品である。所謂民間企業になぜ情報を管理する権限があるのかは確かに深く考えたことがなかった。既得権益に甘んずることで、新興勢力に足元を掬われるというのも決して有り得ないことではない。これからは情報の受け手にもより一層のリテラシーが求められる時代だ。
投稿元:
レビューを見る
吉川英治文学新人賞受賞作。地方紙記者の報道を通して現代社会の虚と実に迫る。ジャーナリズムの姿を・・・。ここまで描くとは!
投稿元:
レビューを見る
「ニュース」という名の悪意に翻弄される記者たち。「誤報」を通じて現代社会の虚と実に迫る、著者会心の報道小説。
「事実が真実とは限らない」という。「事実」は嘘偽りのない本当に起こった事柄、「真実」はその事柄に解釈が加えられる。新聞記事にも当然、新聞社の方針や記者個人の思想が介入していることを知っておかなければならない。
投稿元:
レビューを見る
リテラシーという言葉はもうすっかり浸透していて、たびたび見かける。マスコミが、インパクトのある事柄を追い、激しい言葉で煽り、少々の誤りはスルーする。それがまかり通るのは読者にも責任があると私は思う。著者は元新聞社勤務だったそうなので、ジャーナリズムに関して関心のある人なら面白く読むと思う。でも記者の人物造形がステレオタイプというか、よくある小説という印象になってしまった。ほんとうにすみません。武田砂鉄さんの解説のほうがおもしろかった。これだけでも読む価値あり。
投稿元:
レビューを見る
Amazonの紹介より
地方紙記者の沢村は、調査報道チームのデスクから一枚の写真を見せられる。
同僚記者が、ひき逃げ事件の犯行車両とスクープしたものだ。
「この車、遺族宅にあるらしい」。
沢村は取材へ急行する。
犯人は家族なのか――(「黒い依頼」)。
「誤報」を通じて現代社会の虚と実に迫る、著者会心の傑作。
「誤報」にまつわる5つの物語。
「黒い依頼」 ――誤報と虚報
「共犯者」 ――誤報と時効
「ゼロの影」 ――誤報と沈黙
「Dの微笑」 ――誤報と娯楽
「歪んだ波紋」――誤報と権力
「誤報」を巡る新聞記者達の物語でしたが、報道のあり方について考えさせられました。
一つ一つの文字やニュアンスによって、人の運命が変わっていく「記事」。翻弄されていく記者や関係者が、他人事ではないなと感じてしまいました。もしかしたら自分にもふりかかるのでは?といった恐さもあったり、無自覚に人を非難してはいけないと思ったりと色々な考えが駆け巡りました。
全5章の「誤報」にまつわる物語で、個々のエピソードは短いながらも重く受け止めないといけないなと思いました。
独立した物語ではありますが、それぞれ何かしらで繋がっていて、次の章へ進むたびにそれまでの話の「その先」を知ることができます。
言葉を巧みに使う記事。なかなか読者としては、どう判断したら良いのかわかりません。全てを信じずに取捨選択していかなければならないと感じました。
一つの媒体だけで信じずに様々な視点から冷静に判断していく「目」が必要であり、そのためにも色んなアンテナをはっておこうと思いました。
今まで塩田作品を多く読んできましたが、記者関連作品の中では一番ダークで上級編かなという印象がありました。
誤報だと知った時、記者はどんな行動をとるのか。そして第三者の読者にどう影響していくのか。
フィクションではあるものの、リアル感がありました。今後は小説の中だけで「誤報」が生まれることを望みたいです。
翻弄される関係者が悪い方向へ向かわないことも望みたいです。
投稿元:
レビューを見る
期待を裏切らない力作とは感じるも、ストーリー立てが少し複雑で何度も前段の話の登場人物の確認が必要になった。記者出身の著者ならでは視点であると思うが最終的なメッセージを掴み取りにくいとも感じた。
投稿元:
レビューを見る
ジャーナリズムの誤報や虚報を扱った連作短編集。
事実とは何かと、事実のあり方を問いかける小説。
現代のネット社会では、情報が錯綜し、さらに混迷に拍車をかけている。
マスコミに対しての重い言葉。
「報じないこともまた、誤報」
投稿元:
レビューを見る
購入済み
2022.04.21.読了
メディアの誤報を扱った5つの物語。連作短編集。
全体の印象としてはつめが甘くないかぁ?というもの。
全作品に登場する安大成が何事を成した人物なのか?がはっきりと描かれていないし、5作を通してみて初めてそう言うことだったのかと気づくようなわかりにくい文章も多々あった。曖昧で結論のない中途半端な5作品。
塩田武士といえば、最初に読んだ『罪の声』が面白すぎたなぁ。期待しちゃうから余計面白みがなくなってしまう。今作もそんな感じだ。
星としては、2.8位。
まあ、読まなくてもいい作品。お金を出してまで読みたい作品じゃない。お金だしちゃったけど(笑)
投稿元:
レビューを見る
塩田さんの作品はどれも好きではありますが、どハマリしたボクシングの話や、将棋だったりオーケストラだったりの話と比べると、いかにも新聞記者らしい『罪の声』や本作はかなり硬質。読みやすさの点から見るとサクサクすいすいというわけには行きません。
しかしじっくり読めば、世の中にはこんなにも「創られた」記事があってしかもそこには悪意が存在することに恐怖を感じます。
新聞を取る人も減っているであろう昨今、ネットに負けじととにかく人の目を引く記事にしなければならない。でも罪のない人までもが傷つけられるなんて。嘘を見抜く力が私たちにも必要。