紙の本
あの頃なんと切ない恋をしていたものか
2021/12/29 16:25
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:夏の雨 - この投稿者のレビュー一覧を見る
第32回山本周五郎賞を受賞した本作は、2018年の刊行以来、「もう若くはない、大人の恋愛小説」と多くの読者の支持を得てきた。
50歳の、中学生の同級生だった男と女が35年ぶりに偶然再会し、恋愛感情を醸し出す時間を描いたこの作品は、ミステリー小説によくある先に犯人がわかっている倒叙形式になっている。
つまり、再会した二人であるが、その前に読者はヒロインである須藤葉子が亡くなるのを知るところから始まる。
なぜ、須藤(この作品では名前ではなく苗字で語られていく。その表現が50歳でありながら、どことなく中学生の幼さを残した恋愛のような感覚をうまく表現している)は死んだのか、その相手である青砥はどんな男性だったのか、二人の心の交差に読者は引き込まれていく。
さらに書くと、須藤は大腸がんに冒されて死んでいくが、これは夫婦の闘病物語でもないし、恋人たちのそれでもない。
いうなれば、中学生の時に想い人でありながらもすれちがった恋人未満の物語といっていい。
それもまた、まるで子供たちの恋愛に似ている。
「大人の恋愛小説」であっても、そのぎこちなさは青春小説に近い。
タイトルの「平場」であるが、著者の朝倉かすみさんはあるインタビューで「世の中のほとんどの人は、舞台の上ではなく平らな場所、平場で生きているわけですけど、そういう人たちの物語」と語っているが、つまりはこの作品は私たちの物語でもあるといえる。
もっとも、須藤が見上げた月はあまりに悲しく、美しすぎるが。
紙の本
「ちょうどよくしあわせ」とは
2023/06/02 18:44
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:BB - この投稿者のレビュー一覧を見る
大人の恋愛小説として話題になった一冊だが、いわゆる「恋愛小説」と呼ばれるものとは趣を異にする。
物語は、主人公が好きだった人が亡くなったことを知る場面から始まる。
なぜ亡くなったのか、二人はどういう関係だったのか。時をさかのぼって、明かされていく。中学時代の同級生で、距離が近くなっても苗字で呼び合う主人公ふたりの関係がリアル。50歳。ひと通りいろいろ人生経験を積み、体調にも変化が現れるお年ごろだろう。
人と人が引かれ合うという普遍的な現象の中で、闘病の様子やそれに寄り添う様子もまた自然に描かれていて、平場の延長線上で、人間の「生」について考えさせる。
平易な文体ながら、著者のちょっとした表現が巧みで、心惹かれた。
紙の本
生きづらさ
2023/03/28 12:45
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ナムナム - この投稿者のレビュー一覧を見る
自分で自分を生きづらくしていると分かっていながらも、
潔くないと思えば意固地を通してしまう。
一切合切を含めて、自分らしく生きた人生ということか。
紙の本
こんな関係
2022/02/26 08:12
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ターちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
いいよな こんな関係
投稿元:
レビューを見る
50歳代の恋愛は、描くのが難しいですね。
未だ「死」を目前に題材にするのは早いのではないでしょうか?
私も50代後半でございます。
10代に川西蘭さん著書「春一番が吹くまで」に出会いました。
自分の将来に具体的な方向性が持てず、社会的にも曖昧な年代の、でもその時期だからこその、キラキラした心の震えを初めて感じ取りました。
その後、中里恒子さん著書の「時雨の記」では、年配の男女がそれぞれに相手を思いやり、それでいて人生の重みや、束縛から逃れようとする、「大人の愛情表現」の描き方に感傷的になりました。
自分の中で本書は、「春一番が吹くまで」の40年後、
「時雨の記」の20年前、としてはどうしても繋がらない。。
廃れるには未だ早い、心の震える「大人(中年)の恋愛」が描かれると良いですね。
投稿元:
レビューを見る
須藤と青砥の軽妙なやりとりに「ふふ」と笑わせられるのと同時に、癌という病気の辛苦が淡々と事実として語られるのが切ない。
最後2人の選択は、互いをとても大切に思った上でのことだったんだなと、しみじみ思った。読了後、また頭から読み返す。
投稿元:
レビューを見る
「この本よかったよ〜」と気軽に簡単に言えない…
そんな読後感(*_*)
私はとにかくひたすら本を読む
現実逃避、空想好き、読みながら映像を浮かべてキャスティングをし、物語に入り込む…
読後すぐ現実に戻って来れない
まるで平場に佇み月を見てるようだ(u_u)
とにかくリアルな内容である。
私も50を過ぎ死を考える…頻繁に(*´-`)
作者のインタビューを読んで、更にこの作品の深さに感服しましたm(_ _)m
何もしがらみが無いならば恋愛に突き進めばいいじゃない?と思った人もいるだろう。
そんな訳に行かないのが50代なのです。
各章のタイトルになっている須藤の言葉
寄りかかりたいけど、それを良しとしない彼女の気持ちがとにかく辛い…わかりすぎて辛い(T ^ T)
50を過ぎたら是非読んで欲しいです。
映画化決定らしいけど…
私の脳内再生はずっと深津絵里一択です笑
石田ゆり子さんと言う方もいますがヤメテね
セレブなマチネになっちゃうから♪(´ε` )笑
投稿元:
レビューを見る
背伸びをしない中年の恋愛物語。2人に共通して言えることは、都会での暮らしがうまくいかず、一度は結婚するも離婚し、地元に戻って決して豊かな暮らしではない独身生活を送っている。中学時代の同級生であり、中学生の時の青砥が須藤が告白をした時のエピソードこそ甘酸っぱい響きをもつが、それ以外は日常の重苦しさがのしかかってくる。それに須藤の病気も重なり、恋愛小説としては異質の、必要以上に強調されすぎた現実臭さを醸し出している。
中年の恋愛物語として「マチネの終わりに」と比べるとその差は歴然としている。独身であること、最後はすれ違い結ばれることなく結末を迎えることこそ共通しているものの、主人公たちの放つ輝きがあまりにも違い過ぎる。
やはり、「マチネの終わりに」のような中年生活を迎えたいものである。青砥、須藤ともにぶれない芯や豊かな感性こそあるものの、環境がそれを不意にしてしまっている。やはり、生活の余裕、豊かな文化資源にアクセスできる都会的環境、いつどこにいても仕事をできる職と移動性というのは、豊かな人生を送るのに必要なのだと感じずにはいられない。正直、青砥と須藤のような生活はごめんだというのが正直な感想である。やはり、私の目標像は蒔野と洋子なのだと再確認した。
投稿元:
レビューを見る
最初の方の時系列が複雑すぎて意味がわからず、頭の中ではてなマークが飛び交いつつ読み進んでいった。途中からだんだんと話の中に引き込まれていった。良いことも悪いことも苦しいことも経験し、後悔していることも多い中年だからこその、大人の男女のやり取りがリアルでよかった。
言葉がきれいで表現力が、すばらしいな、と思った。ただ、集中して一気に読まないと突然過去に遡ったりして時系列がめちゃくちゃ飛ぶことも多くて少し読みにくかった。
映画化するみたいだけど、俳優誰がいいかな。
投稿元:
レビューを見る
このように生きなければならない女性もいるのかもしれないが、私には男である青砥の歯がゆい気持ちが切なくて、作者がそんな風に人の気持ちを扱ってはいけないんじゃないかと思わせた。
投稿元:
レビューを見る
2018年初版。恋愛小説。ただ、ティーンエイジャーの恋愛ではなく適齢期の男女の恋愛でもない。恋愛には適齢期はないのかも知れませんが。主人公の二人は中学の同級生、35年ぶりに再会をします。50代の恋愛です。二人とも決して充実した生活や悠々自適の生活を送っているわけではありません。世間の片隅で慎ましやかに生きている二人です。50年の人生の中で、親の問題を抱えて離婚の経験もある二人です。若くなく世間を知っているが故に、一気に距離を詰めることなく焦ったくなります。お互いにお互いを必要なのに素直になれない、うまく立ち回れない。特に女は、辛い経験から必要以上に自分を責めて素直になれない。男が最初に彼女に対したイメージ「太い」。読み進めていく中で、どうして彼女がそんなイメージを持つようになったのかが分かって悲しくなります。著者が私と同年代だからなのか、物語に出てくるものに馴染みがあります。心地良くもあります。とにかく不器用な二人が悲しいです。
投稿元:
レビューを見る
これが大人のリアルな恋愛小説…帯に書かれた言葉に惹かれて読み始めましたが、読後の感想としては、なんだか残念、って気持ちが強いです。青砥くんは男の子みたいなまんま、意地を張って大事なものを見落として。
もどかしかったです。
投稿元:
レビューを見る
中学の同級生だった2人が再会し、始まった大人の恋愛!でもその時須藤は癌に罹患。貧しさと闘病
そして彼女の過去。恋愛を再び始めるには条件的に決していいとは言えないのに、丸ごと受け入れ愛した青砥がいい。
青砥を受け入れつつも最後は黙って逝ってしまう須藤の不器用さも切ない!
でも人生の最後にこんな素敵な思い出ができただけでも須藤は幸せだったかもしれない。
好きだからとまっしぐらに進む若い時の恋愛とは違う大人の恋愛だと思う!
投稿元:
レビューを見る
50代の恋愛。
なんとなくではあるが、主人公の二人
青砥と須藤が
自転しながら公転するの、かんいちおみや
と少しダブった。
須藤は苦手なタイプの女性で
少々イラッとした。
青砥は何も悪くない
これが大人の恋愛の正しい形とは
私はとても思えない。
投稿元:
レビューを見る
切なかった。主人公たちと年が近く、ゆかりのある地のお話ということもあって、より思い入れが深い作品となった。「
大人の恋愛」とだけでは括れないように思えました。
「ちょうどいいくらいしあわせ」と言った彼女の言葉、それは、彼女の過去や現在のおかれている状況からの言葉なのかは分かりませんが、とても深く胸に刺さりました。私の「ちょうどいいくらいしあわせ」はどんななんだろう?
この年齢になると先のことを考えると不安だし、老いを自覚し受け入れることも必要。今出会えて良かった作品です。