日本経済 成長志向の誤謬
著者 神津多可思
「2%インフレと2%の実質成長」。2013年に黒田氏が日銀の総裁に就いてからずっと追い求めてきた政策だが、ここまでほとんど成果があがっていないのが実情だ。90年代後半から...
日本経済 成長志向の誤謬
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商品説明
「2%インフレと2%の実質成長」。2013年に黒田氏が日銀の総裁に就いてからずっと追い求めてきた政策だが、ここまでほとんど成果があがっていないのが実情だ。90年代後半から2000年代にかけてデフレ下にあった日本において、成長できないのはインフレ率が低いからだという論が高まった上での政策だが、ここまで成果がないということは、何かが欠けていたと言わざるを得ない。本書ではそれを様々なデータから検証し、今後はどのようなマクロ政策を目指していくべきかを提言する。
日本は「総需要の刺激」を中心としたケインズ型のマクロ政策を伝統的に行ってきたが、構造改革への取り組みが不十分だったことで、既存の雇用に固執。米国ではインターネット革命が、その後のGAFAを生み出したが、日本では「低失業率」にこだわったことで世界的競争力のないゾンビ企業の存続も許すことになった。早いうちから、マクロデータの影に潜むミクロデータに注目し、そこに集中して投資をすべきだった。
短期的には実現不可能な2%インフレ、2%の実質成長を目指して総需要刺激を繰り返すだけでは、なかなか将来に向かって挑戦できる状況にならない。供給サイドの変化を促し、スピード感をもって対処していくことがなによりも必要である。
目次
- 第1章 日本の「デフレ」
- 第2章 日本のこれまでのマクロ安定化政策
- 第3章 マクロ安定化政策の工夫の余地
- 第4章 これからも構造変化を促す7つの力
- 第5章 マクロ安定化政策をどう変えるか (1)金融政策
- 第6章 マクロ安定化政策をどう変えるか (2)財政政策・産業政策
- 第7章 令和のマクロ安定化政策
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置いていかれた日本と思いたくない皆さんへ
2022/07/17 18:50
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投稿者:雑多な本読み - この投稿者のレビュー一覧を見る
すでに日本はこの30年間、ほぼ経済成長をしておらず、賃金も20年以上上がっていないどころか、下がったと思う人も多い。年金に至っては、安倍政権の8年余りで6%以上減額されている。なぜ、こうなったのか。バブル崩壊後、何が悪かったのかということになろう。まして、円安が急激に進行し、悪いインフレが出現すると危惧する人も多い。
金融緩和政策により、刺激効果が薄れ、成果が出ないままでこれでもかという追加策が重ねられ、アメリカ等の景気回復、円安の進行で打つ手がなくなっているときに何をなすべきかということになる。
需要不足または供給過剰という事態で、金融緩和策としてマイナス金利まで進み、世界的にトップクラスの債務の累積を重ねた財政出動でもなお効果が出たとはいえない事態。筆者は、古い需要喚起が多く、新しい需要喚起に至ってなかったのではと問題提起を行う。社会の変化について行けない、特に世界の動きに日本はどうかということになろう。置いていかれた感の背景を探ることになる。さらに賃金を上げるには構造改革が必要で、犠牲も出るからセーフティーネットの張り直しに言及する。
第3章でマクロ安定化政策の工夫で金融政策に入る。筆者が日銀出身であるからだろう。次いで財政政策に及ぶ。ここではMMTの役割と否定的な結論を出している。
いずれにせよ、日本は、日本経済は構造変化を促す7つの力を提起する。高齢化・人口減少等である。その一つに格差を取り上げる。ジニ係数で格差は他の先進国と比べ、小さいといえないが、大きいともいえないとする。しかし、大人1人、子ども1人の世帯の貧困度は悪いと的確に指摘する。これは、シングルマザー世帯のことを指すのであろう。ジニ係数で一本調子に悪い、問題なしとする手合いと比べると取り組み姿勢の判断材料ともなろう。
第5章から第7章まで、マクロ安定化政策をどう変えるかに入る。じっくり読むには大変かもしれない。しかし、これまで、政治家の都合かもしれないが、短期で結果を出そうとして無理があったという点はそのとおりかもしれない。しかし、すでに30年経過してしまっている。
また、アベノミクスで3本目の成長戦略の中身が判然としなかったが、筆者が日銀出身であるゆえか具体的な提案まで及んでいないのはやや物足りなさを感じるだろう。