紙の本
中国のシュールレアリズム作家とベトナムのリアルな物語
2008/10/26 19:46
6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:かつき - この投稿者のレビュー一覧を見る
この世界文学全集の中に唯一入った中国人作家が残雪。
残雪は懐かしい作家ですが、マイナーです。
その分、池澤夏樹のセレクトに関心が深まりました。
デビュー当時から現在まで
さまざまな媒体に発表された小説を7編収録。
冒頭の「阿梅、ある太陽の日の愁い」から
「残雪コード」てんこ盛りでやられました。
いわく、
「庭一面のぬかるみからむんむんと臭気がたちのぼった」
「ミミズをシャベルで取りのけている」
「隣人はむこうの高塀の下で、あの穴を火かき棒でつついている」
そして臭気もミミズも穴も、隣人でさえも説明せずに小説は終わります。
しかも物語には全く関係ない。
しかし、その存在は、常に主人公を追いつめるか
なにかの作業に没頭するふりをせざるを得ない状況に追い込んでいます。
平易な文章なのに、意味は難解。それがいつしかおもしろさに変わります。
文化大革命によって13歳から23歳まで迫害された残雪は
その小説内においても、隣人や得体のしれないものから
常に覗かれ、陰口を言われ、居場所をなくす主人公を登場させます。
ほとんどが「子ども」という立場ですが
年齢的には自立していてもおかしくない場合もありますが
自分の意思を持ち、それを行使することはありません。
自立や意思という自由がないのですから
主人公たちは常に途方に暮れ、怯えています。
目指すものを失った状態といってもいいでしょう。
目に見えない権力によって押さえこまれています。
中国版シュールレアリズム文学といっていいのでしょう。
同収録されたベトナム人作家バオ・ニンの「戦争の悲しみ」は
ベトナム戦争の10年と、その後の10年を行き来する回想録。
主人公のキエンは17歳で偵察隊員となり
部下を率いて、戦火をくぐり抜けてきました。
しかしそこではたくさんの失敗を犯し、部下を失います。
また幼馴染で恋人のフォンを失います。戦争が終われば
結婚するだろうとお互いに予測していた相手は、
その顔を見ると戦争の記憶を呼び起こし辛くなり
とうとうフォンはキエンを捨て、他の男と逃げてしまいます。
なにもかも失ったキエンはただその戦争の記録を残すことが
生き残った自分の使命だと考え、書き続けます。
兵士たちも勇敢なだけではなく、ドラッグや売春におぼれ
脱走兵も描かれます。
やがて回想はいちばん触れたくない思い出へとたどり着き
若い二人の大きな過ちが立ち現れてきます。
戦争のせいなのか。それとも若さのせいなのか。
描写の迫力があり、途切れ途切れのリーダビリティなのに
惹きつけられます。ベトナムの声をもっと聞きたい。
紙の本
「暗夜」自分の中の得体の知れない異物、「戦争の悲しみ」鎮魂よ届け
2010/06/27 21:04
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
中国の作家残雪による幻想的な作品7編。「帰り道」はただ草原を歩いていった先にある奇妙な家を描いていて、ただ読めばわけの分からない夢物語だが、無理に何かの象徴かと考えれば、家は中国そのもの、あるいはその村落で、主は共産政府、前の主とは中華民国か清王朝かと思えなくもない。そこで空間が歪んでいくのはクリストファー・プリースト「逆転世界」かW.H.ホジスン「異次元を覗く家」も彷彿とさせるような幻影で、なぜそんなことが起きるのかと考えたら、やはり訳が分からない。
「痕」は副業でムシロを作っている、平凡なやや気難しい農民だが、いつからか周囲の人々は仙人かというような哲学的な人物になり変わり、彼の生活は混乱をきたしていく。それらもまた、資本主義や文革や本来的な毛沢東主義や農村のコミュニティとかのイメージに見立てることも出来るし、そういった形而下の現象に仮託した何物かなのかもしれない。幾重もの不条理にさらされる中で彼は堕落し、老いてゆく。
「暗夜」は少年が「猿山」なるところに向かう道程で、そのとりとめの無い風景の変容は、夢か無意識が生み出すかのようだが、疲れて眠り込んだ夢で家に帰り、そこで見る夢の中で歩みは続く。他の作品もそうだが、庭に鶏がたむろし、土間のある狭い家に住み、「山海経」に書かれる動物だか妖怪だかが順繰りに現れる、明か清の時代とも判らないような土着的な舞台に拘りながら、そこが現代だと確信できる。この幻想はまるで、山や畑や砂ぼこりの道が人の意思を規定し、代わりに政府やイデオロギーや密告が足の進みを妨げたり頭上から振ってきて絡み付く役割になり換わっているようだ。なるほどそれも「逆転世界」だ。
何か作者にとって逼迫した状況を描いているに違いないのだが、その解釈を懸命に拒んでいる。その、拒んでいるという状況だけは確実に読み取れる。内面から溢れ出して来る、国境も時代も超えて遍在するこの怪物を、この残雪が幻視していることには違いない。
「戦争の悲しみ」は、作者が一兵士として体験したベトナム戦争と、戦後の生活までを描いている。彼は高校を卒業してすぐに、恋人と別れて出征し、終戦までの10年間を戦場で過ごすことになった。その決断に後悔はない。必要なことであったし、前線に10年間を生き延びたのは幸運もあり、幾度の負傷を生き延びた生命力も判断力もあった。そして戦争はサイゴン陥落で勝利し、彼はハノイに帰還する。しかし戦争の傷痕は彼を深く苛んでいた。
戦場から帰ってきた主人公は、もちろん戦争前とは変わってしまっている。彼の周辺で多くの、無数の兵士が倒れるのを目の当たりにした。中には一瞬のタイミングで彼の代わりに死んだような者もいるし、部隊全滅に近いような戦闘も体験した。それらの死者達の記憶が彼から消えることは決して無い。
死、死者、そういったものはたぶん抽象的なものだ。彼の目にしたのは、生きていた戦友と、それらの死体。血を流し損傷している死体。
その記憶を背負った主人公が、戦後生き続けるために選んだ道は小説を書くことだった。そうして彼の中での鎮魂を図るのだが、目的を果たせたかは疑わしい。さらに戦後、かつての恋人との再会と喪失が加わることにより、絶望は深まる。
物語は作者の体験を再構成したフィクションであるが、多くの人々が愛する人を失い、それぞれに傷を負った戦争の姿を再認識するには十分なものだ。平和と独立を手に入れはしたが、依然戦火の爪痕と経済、言論統制など、課題山積だったベトナムの人々には、こういう語り部が必要だったのかもしれない。そして人類全体にとっても、かけがえのない作品になった。
紙の本
2作のギャップが結構大きい。
2018/11/29 13:28
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ROVA - この投稿者のレビュー一覧を見る
前作はふわっとしたお話で、逆に言えば深読みの余地が存分にあって面白い。
付属されている月報を読んで初めて疑問に思うべきところに気付く始末なので
自分も大概ぼんやりしているな、と思ったりなんだり。
後作は一気に毛色が変わり、タイトル通りの戦争小説。
救いようの無い悲しさに満ち溢れいて、小説ではあるもののドキュメンタリーに近い。
両作とも出口が見えないという意味では同じか。作者の歩んだ苛烈な人生も又。
投稿元:
レビューを見る
残雪は始めて呼んだけど、とても好きだった。
カフカ好きな人はきっと好き。
文学はこういうこともできるっていうのをもっと知ってもらいたい。
バオ・ニンの「戦争の悲しみ」は、時系列に沿わずに戦時中の体験や現在の苦悩を描いているんだけど、
なんていうか「伝える」技巧っていうのとエピソードの鮮烈さっていうのがよくかみ合っていて面白かった。
投稿元:
レビューを見る
[ 内容 ]
世界で称賛されるアジアの二人の作家の代表作。
夢の論理に満ちた奇想天外な物語を紡ぎだす、現代中国屈指の語り手による、初訳を含むベスト作品集と、戦争に引き裂かれた男女の悲恋をヴェトナム側から描いた話題作。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
投稿元:
レビューを見る
『暗夜』
現代中国文学を代表する作家、残雪。
彼女の代表的な7つの短編が収められている。
残雪は文学評論家としても優秀な人で特にフランツ・カフカに対して造詣が深い。
その影響からかこの短編集もカフカを思わせるような作品で、この不思議な世界に一度入り込んでしまうとなかなか抜け出せないくらい面白い。
『戦争の悲しみ』
人類史上最悪の戦争といわれるベトナム戦争。
そのベトナム戦争を体験した作者が戦争にまつわる苦悩を描く。
数ある戦争文学の最高峰に位置するのではないでしょうか。
是非一度お読みいただきたいです。
ハリウッドの戦争映画などでは運命という言葉で単純に終わらせてしまいますが、戦争はそんな簡単なものではないとこの作品は教えてくれます。
人々の生きたいという力が伝わってきます。
投稿元:
レビューを見る
残雪はいわば不条理小説。出来の悪い蛭子能収といったところか。戦争の悲しみはベトナム戦争とそこでトラウマとなりまた性的不能者になったキエンの話。著者の表現したいこととは違うのかもしれないが、悪も貧乏も罪も年齢も身分も愛は乗り越えるが、セックス不能だけは乗り越えられないということか。
Coccoの歌にもあるように、愛する人のために遠くで働いても「あなたのお姫様は今頃他の誰かと腰を振ってるわ」ということなのだろう。
愛するフォンが集団レイプされて傷ついたが、果たしてキエンを遠ざけた理由がその体験に由来するものなのか。レイプされたからこそフォンはキエンとのプラトニックな関係が可能になると思い、キエンも同じ事を考える。しかし、8年以上も続いた戦場にいるキエンへの思いは、キエンと再開した数ヶ月のセックスレスの生活が続いたことで幕を閉じる。
戦争の悲しみとは、何の悲しみだったのだろう。
投稿元:
レビューを見る
後半(分量としては全体の2/3くらい)に載っているバオ・ニンの「戦争の悲しみ」の話をまずしたい。
戦争を描いたものというのは多くの場合、どちらか一方の側からの視点になる。ベトナム戦争の場合、米国では多くの作品、特に映画が作られており、ベトナム戦争というと「ベトコンによるゲリラ戦」といったイメージを持ってしまう。
「戦争の悲しみ」はベトナム戦争に従軍したキエンが主人公である。戦争については秩序だって語られるわけではなく、断片的なエピソードが順不同で思い浮かぶがままに書いたかのように現れる。米国が憎いとか南ベトナムの傀儡軍が憎いといった書き方ではなく、ただひたすらに現場の最前線における戦闘シーン(特にそこにおける失われた仲間とのエピソード)が描かれる。
戦争を文学として描くとき、現実があまりにも過酷なため、小説はノンフィクションよりも今ひとつなものになりがちである。本作品では戦争が物語の核でありながら、恋人フォンとの再会や別れといった要素をうまく絡ませることで小説として成功している。戦争小説というより恋愛小説ととらえる人もいるだろうが、私はやはり核は戦争小説なのだと思う。
もう1つの作品は中国の作家「残雪」による数本の短編。著者はカフカの研究論文も書いている人で、計算され尽くした「居心地の悪さ」を作品の軸に置いている。どう読んでも落ち着かない。短編ということもあり、カフカよりも内田百閒を読んだときを思い出した。
この作家の作品をまた読むことがあるかどうかは分からないが、こういう全集形式だからこそ出会えたものであり、編者である池澤夏樹さんは慧眼であるとしか言えない。
投稿元:
レビューを見る
「戦争の悲しみ」はベトナムの小説である。フランス文学を読んでいるような気がするが、日本の戦争小説とも似ている。暗夜は中国の小説で幻想小説であり映画に出来そうである。
投稿元:
レビューを見る
残雪「暗夜」
カフカ的な不条理ワールド。
AだからBという道理が通じない世界は
さながら迷路の中をぐるぐる回らされているかのよう。
バオニン「戦争の悲しみ」
ベトナム戦争を侵略された側から描いた作品。
戦前、戦中、戦後。
言葉で“過酷”と書くだけでは到底足りない現実が
入り乱れた時系列の中で痛切な叫びとなって立ち上る。
あまりに衝撃的な体験の前後で、
我々はそのままではいられない。
それでも、生きていかなければならないし、
我々は生きていくんだ。
投稿元:
レビューを見る
10代でベトナム戦争へと志願した若者キエンが、過ごした戦地と生き延びてなお地獄の戦後を、戦争・恋い模様を個人の視点で描いた戦争文学。過去から現在へ続く時間軸に背き、様々な場面に飛びながら展開する構成に最初は荒っぽさを感じたが、次第に記憶の断片を整理していく過程であることが分かり、リアリティさが増してくる。
前半はベトナム戦争の生々しい表現が続くが、ベトナム兵のキエンから見た戦争について書かれており、10~20代を戦地で過ごしたキエン、そしてキエンがまとめる部隊の若者がどういう思いで戦争に向かい、そして命を落としていったのかが描かれている。特に自分の部隊の部下を全て失ったキエンは、生き残ったことで背負う苦しみの大きさを強調している。
大義がない戦争、米ソ冷戦の代理戦争として、悲惨な運命とたどったベトナムで若者たちの将来が失われることの悲しみは、ただただ悲しみでしかない。
後半になり、キエンとフォンと恋の回顧が始まる。おそらく戦争で失った最も重要なもので、取り返そうとつらい記憶をたどる作業が行われるのだ。このシーンでは、1960年代のハノイの美しい田園風景や都市部の煉瓦造りの建物、夜の暗い街並みなど、情景が目に浮かぶのだ。そこでつましい幸せが約束された高校生たちは、米国の北爆で戦争が始まると、やがてお互いに肉体的にも精神的にも癒えることのない傷を負う。
キエンとフォンは10年の戦争を経て、再会を果たすが、もはや互いに互いを埋められない関係になっていた。なぜそうなってしまうのか。その理由と解きほぐすため、回顧を続けたキエンの物語は、戦争の悲しみから抜け出すことができなかった。戦争からは悲しみしか生まれないことを強く伝えている。
投稿元:
レビューを見る
暗夜はとても不思議な短編集だ。どの作品にも共通するのだが、年代と場所がわからない。特に中国に詳しいわけでもないからなおさらだ。それだけに、というべき、それだから、というべきが、おのずと登場人物達の心象へ集中するのだが、これもまた一筋縄ではいかない作業なのだ。難しい作品ではあるけれど、独特の余韻ののこる世界だと思う。
戦争の悲しみのなかでは、頻繁に時代が錯綜する。意図的にそのように記述されているのは明らかだが、そうしたアクロバティックな手法により、登場人物達の背負う悲しみや孤独が強調される。今のベトナムは平和な国だが、40年もの間続いた戦争とはどのようなものだったのか想像すらできない。南側からみた書物や写真とは違った貴重な記録でっもあると思う。
投稿元:
レビューを見る
残雪はギブアップ…不条理さはまだいいんだけど、ひたすら暗くて鬱々としていて、気が滅入ってダメだった。。
バオニンの戦争の悲しみは惹き込まれた。息詰まる戦場や密林の描写と、現在の生活(こちらも決して明るくないんだが)が交錯して展開し、どうつながるのか気になって。戦争は、目に見えるものだけじゃない、いろいろなものを破壊するんだな…
投稿元:
レビューを見る
暗夜
主人公は知り合いのおじさんに連れられて、かねてより憧れていた〝猿山″へ向かう。しかし出だしから道は真っ暗、得体の知れない亡霊や鳥の妨害にあったり、宿には全然泊めてもらえなかったりと全く上手くいかない。さらには村に残してきたはずの家族や友達が現れてことごとく罵倒される。つれのおじさんにもなぜかめちゃくちゃ罵倒される。まったく進捗を見ないまま振り出しに戻るが、そこで主人公は今度は一人で行こうと強く決意する。いわく、何かをなそうと決意した人間を本当に妨げることは誰にもできないんだ、と。
.........
残雪の書いたカフカ論も読んだのだが、本作はまさしく「城」のオマージュだと思った。もっとも、より脈絡が無く、より幻想寄りで、より登場人物は口汚ないが。
残雪の書く物語は、短いほどプロットで話が進み、長いほど会話で話が進むようだ。そして長くなればなるほど混沌として、解釈を激しく拒むような苛烈さが増してくる。(余談だが、カフカは逆に短い話ほど読者を置き去りにする傾向があるかもしれない。それでもカフカは常に解釈を要求してくる。)
幻想的なプロット、暗喩を感じさせるモチーフ、そして力強い会話がこの作家の魅力だと思った。作品数に対して邦訳が少ないようなので楽しみに待ちたい。
投稿元:
レビューを見る
「戦争の悲しみ」
泥沼のベトナム戦争に17歳から兵隊となって10年以上戦場で暮らし、戦後、遺骨収集作業に加わり、大学等で学んだ後に戦争を描いたという来歴の本。
大昔に五味川純平の「人間の条件」を読んで、迫力や話の分厚さに感動したが、あくまで小説として読んでいた気がする。こちらはもっとリアル。材料が著者の経験した事実だと思われるから。しかし主人公の戦後の現実と回想という形をとっているので惨たらしい状況描写が延々と時系列で繋がっていかず、読むことの苦しさから何とか免れる。
帰還兵が戦争体験のトラウマでその後の生活がまともにできなくなるという話は幾度も聴いたことがあるが、文章を書けるひとがそれをリアルに語っている重さ。戦争でない平時に健康で暮らせることの有り難みを大切にしなくてはと改めて思う。また世の中で最も避ける努力をすべきなのが戦争なのは間違いない。
やや消化不足なのがこの本のもう一つのテーマである恋愛。ちゃんとしたセックスなしの恋愛は成立しないのか、男女の永続的な関係はそれ以外の形はないのか、この面では勉強が不足しており、主人公とその恋人の結末に納得いかず。
蛇足だが最後の章は不要ではないかと思う。いきなり主語が変わって「私」が登場し、それまでの主人公が「作家」と呼ばれる。この本が自叙伝ではないことを明らかにしたいためかもしれないが、急に距離を置かれたような不自然感がある。
「暗夜」…短編集
残雪という作家は初めて読む。
どの話も読み手に疑問を抱かせつつも、読ませていく引力がある。ふつうならわからないと面白くなくてやめてしまうのだが、なんだろう??と思いつつ読み続けられる面白さがある。
どうもこの世とあの世?の間の世界のことを暗示していそうだな、と思う話が多いと感じたがそれも読む側に任されているのだろう。