- 販売開始日: 2022/12/13
- 出版社: 講談社
- ISBN:978-4-06-524127-1
国商 最後のフィクサー葛西敬之
著者 森 功
日本の政界、財界、霞が関、マスメディア、鉄道業界すべてを騒然とさせる、今年最後にして最大の話題作!国鉄分割民営化で革マルと手を組み、右派・日本会議の黒幕として安倍晋三を裏...
国商 最後のフィクサー葛西敬之
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商品説明
日本の政界、財界、霞が関、マスメディア、鉄道業界すべてを騒然とさせる、今年最後にして最大の話題作!
国鉄分割民営化で革マルと手を組み、右派・日本会議の黒幕として安倍晋三を裏で操ったJR東海「総帥」の実像。
日本最大級の広告主ゆえに、これまでテレビ新聞はもちろん、文春砲を含む週刊誌ですら取り上げることができなかった「タブー」の扉がいま開く。
◆本文より
ときに葛西は安倍から内閣の主要閣僚や官僚人事の相談を受け、アドバイスしてきた。
葛西の悲願だった超電導リニアの実現は、安倍政権の経済政策アベノミクスにおける成長戦略の目玉と位置付けられた。
そして葛西と政権との蜜月は、安倍のあとを引き継いで首相に就いた菅義偉にも受け継がれる。
この10年のあいだ、葛西と安倍の二人は日本の中心にいて、国政を動かしてきた。
◆目次(抜粋)
序章 国策づくり
官僚と通じ合い政策を動かす/靖国神社総代と日本会議中央委員という役割
第一章 鉄道人生の原点
「マル生闘争」の末の経営危機/国鉄改革の狙いは国労潰し
第二章 国鉄改革三人組それぞれの闘い
長男・井手への対抗心/瀬島龍三の影/マスコミリークという奇策
第三章 「革マル」松崎明との蜜月時代
井手は信用していなかった/改革三人組の相克/流出した「JR東日本幹部発言メモ」
第四章 動労切り
鉄パイプ全身殴打事件/「葛西、君と闘う」/ばら撒かれた「不倫写真」/頼った警察・検察とのパイプ
第五章 ドル箱「東海道新幹線」の飛躍
新幹線保有機構を解体した「火砕流」/品川駅開業の舞台裏/名古屋の葛西では満足できない
第六章 安倍政権に送り込んだ「官邸官僚」たち
岸田官邸の「葛西人事」/池の平温泉スキー場の「秘密謀議」
第七章 首相官邸と通じたメディア支配
安倍総理実現を目指した「四季の会」/NHKの「国営化」を目論んだ菅義偉
第八章 美しい国づくりを目指した国家観
杉田官房副長官誕生の裏事情/覆された「板野退任」の人事案/経営委員会で何が起きたのか
第九章 リニア新幹線実現への執念
政治問題化したリニア建設計画/安倍政権時代に決まった「3兆円財政投融資」
第十章 「最後の夢」リニア計画に垂れ込める暗雲
JR東海の高飛車な態度に地元住民が激怒/リニアが国民にもたらすメリットは何か?
第十一章 覚悟の死
リニア計画の「コペ転」/「リニア研究会」という名の利権
終章 国益とビジネスの結合
安倍晋三への遺言/大間違いだった分割民営化/日本を動かしてきた二人の死
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いや~、面白かった。売れているのもよく分かる。
2023/01/16 01:29
5人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Haserumio - この投稿者のレビュー一覧を見る
「国商」とは、国士にして政商であることの謂いであり(196頁)、「国益とビジネスの結合」(290頁)の喩えでもある。昨日昼前に本が届いて、面白さにハマってしまい、一気に読了。人物ノンフィクション(NF)であるとともに、歴史NF、ビジネスNF、政治NFでもあり、はたまた財界NF、スキャンダルNFであるという具だくさんの混ぜご飯のような一書。唯一、89~90頁と100頁で意味の取りにくい箇所があったが、誤植もなく、近時売れているのもまずは納得の作品。お値段以上の面白本でした。
それにしても、菅元首相の弔辞で有名になった山県有朋の「かたりあひて 尽しゝ人は 先立ちぬ 今より後の 世をいかにせむ」(304頁、306頁)ですが、それ以前の段階で、安倍晋三が葛西敬之を送るそのFB投稿で引用していたという事実を本書で初めて知り、思わずのけぞりました。さまざまな意味で、まったくもって笑える一事かと。
最後のフィクサーの情熱と悲しみ
2023/04/19 09:37
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ランスロ - この投稿者のレビュー一覧を見る
国鉄民営化を目前にした労組との暗闘、難病による死を目前にしたリニアへの情熱。
フィクサーというよりも、国を支える官僚としての自負心の方を強く感じる。多くの影響を受けただろう瀬島龍三とも共通する面であったかもしれない。
国家の中枢近くで、どちらかといえば陽のあたらないところで、政治的に暗闘する男の心理は、どういうものだったのか。
本当に面白いのは最終章?
2023/07/11 12:13
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:tad - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書の内容については概要やレビューにあるとおりですが、本当に面白いなあと思ったのはこの葛西氏本人のことではなく、ガースーの安倍さんの弔辞の真の?出所や福知山脱線事故の背景でしょう。この最終章読むだけでも価値あります。
合理的な戦略家を論じたら、合理的に評価せざるを得なくなるのでは?
2023/02/27 00:43
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:しおかぜ - この投稿者のレビュー一覧を見る
エピソードの集積として、本書はディープな人間ドラマそのものであって、それなりに引き込まれるし、読む価値はあると思う。
しかし、そのときの葛西氏の行動が、国鉄やJR東海、あるいは国政に対してどこまで影響があったのかという肝心な点については、ほとんど推測でしかなく、まさに隔靴掻痒的記述に終始している。とくに人事の意思決定については、決定者が決定過程を明らかにするわけがないので当たり前であるが、状況証拠だけでは著しく説得力を欠いている箇所が目立つ。
著者は、葛西氏を合理的で戦略的な人物であると規定している。その点は同意する。しかし、その葛西氏の行動について、葛西氏の思想や考え方に基づいて分析すればするほど、言い換えれば著者のように批判的に論じようとすればするほど、葛西氏の行動が正しいとしか理解できない逆効果になってしまっている箇所がある。それはまさしく、葛西氏が合理的で戦略的であるからである。
JR東海と核マルの関係など、葛西氏が労務の素人だの核マルとの野合だのと批判したとしても、結果として、戦略的であり合理的であったと評価せざるを得ないのではないか?(この点は、JR東海が、JR東日本などと際立って違っている)
著者は、葛西氏がJR東海という企業の利益と「国益」を結び付けて考えているとして、だから「国商」なのだという。しかし、企業利益を国益を結び付けて、何が問題なのか? 逆に、国益を考えない経営者が多いからこそ、国内の製造業が空洞化したり、国内の資金が海外にばかり投資され、国内が窮乏化しているのではないか?
私は、葛西氏を経営者として高く評価し、まさに私淑しているから、こうした感想を持つのかもしれない。このレビューからは、この点は割り引かなければならないと思う。
…と批判的に論じてしまったが、読む価値はある本だと思う。