自意識に殺される
2023/11/21 20:40
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投稿者:ホワイトベア - この投稿者のレビュー一覧を見る
生きづらさを抱えるすべての人に読んでほしい。 この小説は「自意識」に翻弄され、人生を遭難する現代人への警鐘でもある。 幼少期から「見られること」を強く意識し、周囲の視線への最適解だけを求めて生き続けてきた主人公山田の病巣は、SNSにより他人の視線がより顕在化された現代人にとっても他人事ではない。 しかしこの小説がより不幸なのは、山田がその最適解を出し続けた成功体験こそが、山田の視界を曇らせたこと。「聡明な」山田は、都市を『思考停止』と位置づけ、我こそが現代人に一石を投じるとばかりに、都市の対比としての「山」に向かう。しかし、一石を投じる動機は愛や平和のためなどでは決してないのだ。他人から「一目置かれる」自分を演出するため、もしくは一段高い場所から他人を見下ろすという承認欲求を満たすために山に入る山田。その行動こそ「自意識の奴隷」に他ならず、山田自身もまた自意識下の『思考停止』にあることを山田本人は気づいていないという皮肉。 そんな山田を待ち受けるものとは。果たして山田は目を覚ますことができるのか。 視線の呪縛から逃れて生きることができない今だからこそ、必読の小説だと思った。 またこの小説を通して、生きる上での「役割」に対する問題提起もなされているように感じるが、一貫したテーマである「自意識」から解放された時に、「役割」の答えが見えてくるように思う。 哲学的な内容を、SF要素も込めて表現された独特な小説。次回作にも期待したい。
予測不能な登山物語
2023/11/29 18:54
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投稿者:くみみ - この投稿者のレビュー一覧を見る
先の見えない息苦しい人生の澱を、凝り固まった理屈を抱えて登山で昇華しようとする男の、予測不能な「歩山録」。
一所にとどまる事なく巡り巡る運命を「ババ抜き」に喩えたり、不思議な感覚を惹き起こす表現の数々に魅力を感じた。
哲学的な部分は言葉では理解し難いが、山田の歩みを追っていくと、少しずつ意識が共有されていくような独特なテイストの作品。
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・登山小説としてはかなりリアルな描写で没入して読めた。
・作者がこの作品を通して何が言いたくて何を表現したいのかが分からない。
・一つの作品に色々なネタを詰め込み過ぎていてる。
・200ページくらいの作品なのに最後まで読み切るのに相当疲れた。
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素晴らしい小説は、そんじょそこらのビジネス書はもちろん、哲学書すら凌駕する「気づき」をくれるもの。
その意味で、この本は(そもそも小説なのか?という気すらするが)とことん素晴らしい。
主人公は、身体と知性と屁理屈をもって、とことん、ホントにとことん考え抜く。一方で、結論は保留する。正解はコッチだと決めつけることなく、疑問符を抱きかかえたまま、主人公は歩く、歩き続ける。
登山の話のはずなんだけど、気づけば家族との暮らしや、仕事のこと、人生のことに想いを馳せる導線を、勘弁してくれ!っていうぐらい、引かれてしまう。
他にも色々言いたい魅力はあるけど、紙幅が足りない。例えば途中、「道とは何か」を問いかける箇所は社会学やジャーナリズムをゆさぶる力を持っていた。
登山の魅力のひとつは、とにもかくにも、歩き続けることで、身も心も変わっていくこと。その意味で、本書は登山の魅力の暴露本でもある。
きっと、作者は、山田であり、少年であり、博士であり、熊でありゴリラであったのだろうなと思う。
最後の最後、数日前のニュースが小説内に登場することにびっくりさせられる。この小説は、小説というパッケージに閉じていない。原稿を入稿して、刷りだすその直前まで、きっとこの本の物語は現実世界のドキュメンタルと接続されていた。そんなこともあってか、読後感は、今現在の自分に降り掛かってくる。
良い意味で、帯文には騙された。奇々怪々な謎めいた話の詰め物を食らうもんだと構えて読んだが、一度世界に入り込むとそこには、スーパーサイケデリックというよりも、スーパーヒューマニックな景色が広がっとった。
色々言ってしまったけど、とにかく素晴らしかった。
たっぷり生きよう。たっぷり感じよう。そう思いましたのです。
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前情報なしで読み進めたため、途中から村上春樹作品かのような世界観になるとは想像もしていなかったので、いい意味で裏切られた。
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1124
貫太の宗教とマルチ商法
馬陸(ヤスデ)の蠢き
1127
少年と笛
ゴリラとピンクの髄液
1211
p.166
なるほど、希望というのは熱と同じで肉体によって生産されるのだなと山田は知った。
1213
p.173
その正しさとは一体誰の、何のための正しさだったのか。
p.198
中央線は東に進む。
車内は山田の他に、おばあさんが1人だけ。
長い座席の端に猫背で腰かけ、何を見るともなく視線を正面に向けている。
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元テレビ東京の名物社員な著者の小説デビュー作。登山サバイバル活劇ということで代表作『ハイパーハードボイルドグルメリポート』の系譜かと思いきや、早々にテイストがガラッと変わって読者の足場がグラグラしてくる不条理劇。怪作『空気階段の料理天国』も感じもある。時にグロテスクですらある表現で生命を描写し、それと対比される形で死の香りも強く漂う。山という大自然を舞台にしながら「役割」を通した批評眼も面白い。
※私は父をまさに山での遭難事故で亡くしているのですが、似た経験をお持ちの方には辛い描写があるかもしれません。
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図書館の新刊コーナーで、手にした一冊。
何の情報も入れないまま読む。
山田という男の山歩きの本だとしか思わずに読みはじめたのだが…
山で出遭うものはある程度想像できるが、あまりにも奇想天外、予想などしていなかった展開。
何⁇何⁇の連続で…。
山田が異常なのか⁈などと思うほど。
奇妙奇天烈というのはこういうことか、と。
ラストであぁ、、。
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図書館の新刊コーナーにあり、何の情報もなく読み始める。
製薬会社の営業で入社6年目の山田は6月半ば1週間の休暇を取って、東京、山梨、埼玉、長野県境の山を踏破する計画を立てる。記されている山々を地図を見ながら読み進めるのが楽しかった。がしかし途中、白衣の男が出てきたあたりから幻想的な感じもしてきて、しかし文章は硬くいい味わいで日ごろ目にしない漢字も多用されていて、どういう着地? あるいは? と思いながら、最後はけっこう普通な終了。
地図をみると途中の埼玉山梨県境の雁坂峠はバス旅行で抜けたことがあり、山は深く高く広かった。山田はこの稜線を歩いているんだよなあ。
奥多摩駅から歩き始め、東京、埼玉、山梨の3県境にして東京都最高峰の雲取山(2017m)を越え、埼玉と山梨の県境を成す稜線を歩いて、埼玉、山梨、長野の3県境の甲武信ケ岳(2475m)へ、さらに長野、山梨県境の金峰山(2599m)を踏み、山梨県北杜市で下山しようというのだ。
表紙が中身を物語っています。透明なグミはくまの形。
山田は山で道を見失い、また道に戻り、ああ、安心したと進む。そこでの思考「街とはこの道の集積のこと」・・なるほど。
「群像」2022.11月号~2023.6月号連載
2023.11.7第1刷 図書館
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何だこれは。
読み始めは知識先行型の初心者が縦走にチャレンジする話かと思いきや、途中からはもはや幻想小説。怪しげな登場人物が出てたり熊が出てきたりと、幻なのか現実なのかが不明確。
最終的にはホラー小説のオチ。
もっと山の話だと思っていたので予想外ではあったが楽しく読めた。
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前半、主人公である山田の理屈っぽい部分や、他人を少し見下している感じが好きになれなくて、あまり入り込めずにいたけど、「少年」との出会いや貫太とのエピソードには山田の人間的な魅力が溢れていて、後半を読み進めているときにはもうとにかく山田と少年が無事に下山できることを願いながら読んでいた。
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ブクログのフォロワーさんが読んでおられたので挑戦してみた。
山を歩く話、まさしく歩山録なのかと思って読み進めたら、だんだん話が迷走しだして…。
少年を探す…ことになってた?
どこを目指すんだったっけ?
怪我したんだよね?
と思いながらなんとか読み切った。
幻想的な話でした。
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山登りが好きだから、登山の話ということで
点数は甘め。
ハイパーハードボイルドグルメリポート、
ありえない仕事術を読んでから
本書を読んだ順番。
体裁としては、登山小説に近いけど
ありえない事象、人物が出てきて
不思議な読感。
日常の描写からスタートして、
少しずつ少しずつ非日常的な人物が出てきて
不思議な世界に入り込んでいく感じは
村上春樹的なそれ。
印象的だったのは、前半と後半の山小屋で食べる
食事の描写が秀逸で、めちゃくちゃ食べたくなる。
ここらへんは「食う」にこだわってきた
上出氏らしいところかなと思った。
あとは、ありえない仕事術を読んだ後だから感じるのかもしれないけど、
命と心をすごく大事にしていると感じた。
最初はなんだこれはという感じかもしれない。
毛色の変わったイロモノ系の小説だとおもうかもしれない。
でも、1回読み終わった後、再読すると
本の中に散りばめられた作者からのメッセージが
スッと入ってくるような気がする。
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断片的に著者の"人生観"のようなものを感じ取ることはできたと思うのですが、私の読解力の乏しさ故に上出さんのこの本については読了後に一番最初にこの作品全体に対して率直に抱いた感想は「...?」でした。
もう一度読むとなった際、読むスピードを遅くして理解を深めながら読み進めたら違った感想を抱くかもしれません。
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ハイパーハードボイルドグルメリポート!上出さんのインタビューとか色々聴いてたので、彼自身の人生を描いた作品なのだと思った。最後の展開は鳥肌ものや!山登りこえー