目次
〈線〉で読むディケンズ 速記術と想像力
- 松本 靖彦(著)
- 序章 〈線〉で読むディケンズの世界
- 1 はじめに−写す(移す)こと・線を越えること
- 2 各章の概要と先行研究
- 第1部 ディケンズの速記と想像力
- 第1章 ディケンズの速記と人物造形
- 1 「ちょっとしたしるし」−速記的人物描写
- 2 「キャラクター」の最初の萌芽
- 3 A was an Archer−アルファベットから人物へ
- 4 「ちょっとしたしるし」からイメージ、人物像へ−速記術
- 5 「細部」、「断片」とヴィクトリア朝
- 第2章 ディケンズとホガースの速記術
- 1 速記者のまなざし
- 2 世界を書き写す
- 3 生身の転写術
- 4 繁茂するイメージ
- 5 転写の劇場
- 第2部 境界線をめぐるドラマ
- 第3章 大人と子どもの境界線
- 1 「子ども」の発見と「子ども」像をめぐる矛盾
- 2 ディケンズの子どもへの関心
- 3 第一の精霊とスクルージの涙
- 4 ロマン派的癒しと「内なる過去」への旅
- 5 過去を想起して自由を得る−スクルージの「内なる子ども」との邂逅
- 6 ファンタジーのもつ力
- 7 ディケンズの「内なる過去」
- 第4章 自他を隔てる境界線(1)『大いなる遺産』
- 1 「見捨てられた」少年ディケンズ
- 2 ピップの生育環境と心の境界線
- 3 乗っ取られるピップの人生
- 4 ピップの夢と拡大するナルシシズム
- 5 ピップの(ディケンズの)内なる子ども
- 6 二つの結末−覚醒と揺り戻し
- 第5章 自他を隔てる境界線(2)『ドンビー父子』
- 1 心を読み合う人物たち
- 2 父親の心を写し取るフローレンス
- 3 線引きに失敗しているドンビー氏
- 4 ドンビー父娘の「もう一人の自分」
- 5 遍在する「もう一人の自分」たち
- 6 分身を介して生まれ変わるドンビー氏
- 7 義母を閉め出すフローレンス
- 8 フローレンス化する世界
- 策3部 境目の想像力
- 第6章 生きているのか死んでいるのか
- 1 『骨董屋』という見世物小屋
- 2 人形じみた人間たち
- 3 クウィルプの人間臭い死に様
- 4 生きること=化けること
- 第7章 いずれは死なねばならぬから
- 1 焦らしの裏側−『骨董屋』にみるヒロインの緩慢な死
- 2 去来と浮沈−fort‐da物語としての『互いの友』
- 3 フィクションの終結と生命の終わり
- 終章 越境するディケンズ(の想像力)
- 1 ディケンズと現代の「内なる子ども」
- 2 継ぎ目(切れ目)なさの問題性−庇護と搾取、愛情と侵犯
- 3 主人公たちの自己疎外とその解決策
- 4 ラカン的赦しと自己実現
- 5 fort‐daと(分身の中への)自己疎外
- 6 ハイブリッド・リテラシー−(文字として)読みつつ(形状・表情を)見る
- 7 死体のような文字
- 8 “Horcruxes”としてのディケンズの人物たち