目次
聖家族の終焉とおじさんの逆襲 両大戦間期ドイツ児童文学の世界
- 佐藤 文彦(著)
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序 章 両大戦間期とおじさんをめぐる研究前史
第Ⅰ部 おじさん文学論
第1章 おじさん文学論に向けて
1 大所帯家族から近代市民家族へ
2 アヴァンキュレート
3 父なき社会の息子の文学
4 母の兄弟の敗北――ザッパー『プフェフリング家』
5 代理父としての他人のおじさん――トーマ『悪童物語』
6 おじさん概念の拡大
第2章 旅するおじさんの文学
1 旅の途中の母の兄弟――エーリカ・マン『魔法使いのムックおじさん』
2 母の兄弟から他人のおじさんへ――エーリカ・マン『シュトッフェル、海を飛んで渡る』
3 かつて旅した他人のおじさん――シュナック『おもちゃ屋のクリック』
4 永遠の大学生またはおじさんの時間感覚――マッティーセン『赤いU』
5 読書する少年たち
6 旅に出られなかった甥たちへ
第3章 旅するおじさん文学として読むケストナー『五月三五日』
1 五月三五日のリンゲルフートおじさん
2 空想と現実のはざまで
3 慌てない、争わない
4 おじと甥の距離
5 おじの遺言
6 弱い大人でいる勇気
7 ケストナーの旅する
8 リアリスト・ケストナーの矜持
第4章 プロレタリア児童文学に見る父殺しとおじさんの交換
1 アレックス・ウェディングと『エデとウンク』
2 『エデとウンク』のあらすじと語りの特徴
3 父殺し
4 おじさんの交換
5 「男の物語」を支えるもの
6 父を殺さず、おじさんもなく
第5章 父なき家庭の母娘あるいはおばさん文学の(不)可能性
1 一九三〇年代初頭の五つの少女文学
(1)エルフケン『ニッケルマンのベルリン体験』
(2)ベルゲス『リゼロット、平和条約を締結する』
(3)アルンハイム『ルッシュの成長』
(4)ヒンツェルマン『ベルベルが街にやって来た』
(5)ホーラート『ハネローレ、大都会で暮らす』
2 父の不在あるいは不可視化
3 おじさんの存在感
4 母と娘のアンビバレントな関係
5 おばさん文学の(不)可能性
6 対等な男女関係の模索
7 早すぎた新しい家族
第Ⅱ部 聖家族から遠く離れて
第6章 季節はずれのクリスマス―― 一九三三年ドイツのふたつのクリスマス児童文学
1 近代市民家族と一九世紀ドイツ語圏のクリスマス文学
(1)近代市民家族とドイツ児童文学の誕生
(2)一九世紀ドイツ語圏のクリスマス文学の変遷
2 ケストナー『飛ぶ教室』
(1)クリスマスプレゼントの脱ロマン化
(2)幼子キリストの理想と現実
3 シュナック『おもちゃ屋のクリック』
(1)威厳をなくしたサンタクロース
(2)誰のものでもないクリスマスツリー
4 真夏のクリスマス
第7章 ベルリンを移動する子どもたち
1 観光客の視点――ケストナー『エーミールと探偵たち』
2 無賃乗車と一攫千金――ドゥリアン『木箱から現れたカイ』
3 都心に背を向けて――ウェディング『エデとウンク』
4 デパートの喧騒――エルフケン『ニッケルマンのベルリン体験』
5 都会で生きる子どもの心得
第8章 ロマの子との接点
1 共同生活による相互理解――ホラント『いったいぜんたいどうしたものか』
2 子の連帯と大人の偏見――ウェディング『エデとウンク』
3 ロマの父娘の密着――ミハリ『ミヒャエル・アルパートとその子ども』
4 「この世のすべての人間の正義と平等と自由」に向けて
第9章 父の世界を継ぐ娘――ナチス少女文学が生まれる時
1 少女の夢はカーレーサー――レズニチェク『パウラの捜査』
2 自動車業界の理想と現実――ランゲ『車を運転する少女』
3 家の庭の再生――ホルシュタイン『労働奉仕するドーラ』
4 亡き父を同志として――ランゲ『ヴォルター農場にて』
5 美化される父の世界とおじの無力化
終 章 ヒトラーユーゲントに至る病とおじさんの効能
あとがき
図版出典一覧
索 引
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