- 現在お取り扱いが
できません - ほしい本に追加する
- 予約購入について
-
- 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
- ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
- ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
- 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |
紙の本
誰もが自分だけのリングで戦うレスラー
2021/12/29 03:40
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Todoslo - この投稿者のレビュー一覧を見る
15歳の頃から自宅に引き込もっている森田登美男、やたらと身体を鍛えることには熱心でプロレスラー好きとぶっ飛んだキャラクター。登美男のことを何とか「治そう」とする母親と、「治す」のではなく「理解」しようとする妹の綾とのコントラストが際立っています。登美男の1日は自室、リビング、バスルームの3地点だけて成立していて実に行動範囲が狭くて。一方の母も自宅で家事をこなし、近所のスーパーやコンビニでお買い物、たまに趣味のボーリングをにし行くくらい。綾も自宅と学校を往復、たまに彼氏や友人と駅前でハメをはずす程度で今どきの女子高校生らしくありません。3つの場所を三角形を描くように移動する3人は、よく考えてみるとそれほど違いはないのかもしれませんね。それでも何とか登美男に実家を出てほしい母が派遣を依頼したのは、「出張お兄さん」というサービスでいかにもインチキくさい…
颯爽と森田家に現れたのは斎藤圭一、こざっぱりとしたファッションが如何にも今どきの若者らしくルックスも悪くはないです。極度に人見知りしてしまう登美男とも、初対面でプロレス技を掛け合うなどあっという間に打ち解けているようで。母が大喜びするのは当然かもしれませんが、圭一の異様なほどの適応力に綾が不信感を抱くのも無理はありません。「出張お兄さん」を語る新手の詐欺か、実は生き別れになった兄弟とか、はたまたこれまでの出来事は森田家の妄想に過ぎないのか。派遣事務所から様子を見にやってきた監督さん、黒木によって告げられる事実はかなり意外性がありますよ。
出張お兄さんであろうとなかろうと圭一は登美男にとっては大切なタッグパートナー、そう簡単には手放したくありません。一方の黒木も手ぶらですごすごと事務所に帰る訳にはいかないために、ひとつの妥協案を提示。たったひとりで外出してみんなが欲しいものを買ってくるという、「初めてのおつかい」的なミッションには笑わされました。自分自身が傷つくことを恐れている反面、登美男のようなタイプは誰かの役に立つことに人一倍飢えているのでしょう。必ずしも大成功とは言いがたいものの、久しぶりに勇気を振り絞った登美男のチャレンジには大満足です。プロレスの試合では3カウント取られるとその時点でゲーム終了ですが、何度でもやり直せるのが人生。小さなリングで見えない敵と戦っていた登美男が、初めて場外で生身の人間にぶつかっていく姿を応援してあげてください。
3 件中 1 件~ 3 件を表示 |