紙の本
ソーダ水的な作品
2020/08/10 11:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:やじやじ - この投稿者のレビュー一覧を見る
長野まゆみワールドな少年たちの作品。
現実世界を舞台にしながら、幻想世界を描かれている感じ。
長野さん作品特有の名前のせいかもしれない。
現実的な世界を描きながら、こんなことないよなぁっていう感じのでいかもしれない。
ただ、それを眺める側としては特にそこは問題ない。
その世界を眺めている気分が良いのかどうかの問題だから。
今回の登場人物はみんな少し自分勝手ででも優しい人物が多い
(あ、一部除く)
主人公は実はとても皆に愛されている。
中途半端で揺れ惑う時期に自分を過信したり、打ちのめされたりしながらその一時期を過ごしている。
双子の兄・姉の勝手気ままぶりも主人公に対して酷くないってことも「実は」があって。
優しい眩しさに包まれた、人生の一瞬の煌めきを切り取ったような作品
揺らいだ夏の空気の中で見る蜃気楼ような感じかな。
主人公を「未青年」と表現するあたりも長野さんらしい。
色々鬱屈した事情とか、過去とかあるけれど、
最後がさらっとした幸せな感じで読後感がソーダ水を飲んだ時のような感じです。
長野さんの作品は私にとってはソーダ水的な色合いが強いです。
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年の離れた、血のつながりのない双子の妹兄をもつ一(はじめ)。幼い頃、この双子に、女だとおもいこまされ、また、従兄に間違った性癖をおしえられ、今は中学3年生、優等生を演じている。
東京で、弁護士をしている、兄のクライアントの弟が、一の中学に転向してきて、一の生活が、変わっていく。
長野さんらしい、はなしの展開。
でも、最後が、ちょっといい話で、読後感がよかった。
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15歳にして何なの?周りの人物や状況分析がキレッキレな主人公・イッくん。こんな中学生、空恐ろしいわw。好きだけど。「あとがき」「解説」を先読みすると、ネタバレになる事も多々ありますが、この本は先に読んでもOKと思います。特にあとがきは、たぶん一般的に馴染みがないと思われるボート競技について分かりやすく書いてあるので先読みがオススメ。
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久しぶりに長野さんの本を読んだ。
歳の離れた血が繋がっていない双子の兄姉をもつ主人公。中学生のちょっと冷めた感じや背伸びした感じがなんとなく懐かしかったかな。
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思春期の危うさが鮮やかでした。
私はすぐ自分を定義づけるためにカテゴライズしたがるけど、自分の足場とかそういうのはぐらぐらしているものなのかもしれない。
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長野さん独特の儚さに少年らしい生意気さや純粋さが際立っていてすごく好み。結びが過ぎ去るように終わってしまったので、白昼堂々シリーズのように続編希望。
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イケメンだからって性格悪くても許されると思うなよ。と七月に対する嫌悪ともいえる感想を抱きながら読み進めていった。
多くはないけど女子生徒の無意識の損得勘定の動きに肯きながら、一と七月の繊細な心理描写で青春期の微細な動きを表現していく長野さんのすごさを改めて突きつけてくる一冊でした。
厚さがないので、何度も気軽に読み返せます。
解説にあった、ジャンル=長野まゆみには首を傾げてしまいました。
私みたいにBLはBLでしょ。なんて思いで彼女の作品を読むのは少ないのかな?
解説した宮木あや子さんの考え方が一般的なのでしょうか?
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甘美な物語の流れに時折奇声を発しながら読み進めました。さすが長野さん、この人らしい文章の組み方や流れの作り方に、久々に読んでもたのしく読ませていただきました。
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残酷なこの世界は、とても美しくて。
主人公・一(はじめ)は、田舎町の医者の末息子。双子の姉と兄とは年が離れている。地域の力関係が反映する学校では優等生を演じている。ある日、七月(なつき)が転校してきたことで、一の日常が変わり始める。
長野まゆみ的な、というのか。夏なのにからっとした潮風の爽やかさを感じる。主人公は美しい「未青年」であり、彼を取り巻く登場人物たちも、実際には居ない美しさを持つ。フィクションを思う存分に味わえる、薄荷菓子のような色気に満ちた世界。この物語は思春期女子には効くだろう。
自分の性的志向にコンプレックスを持つ。幼い頃自分を女だと信じ、またそのように振舞っていたのは双子の兄・十(みつる)と姉・百(もも)のせいで、彼らに今も振り回されていると思っていた一は、とあることから真実と彼らの愛情を知る。敵意を向けられ、体調を崩すまでに自分の世界を犯してきた七月とも、数々のすれ違いを繰り返し、距離を縮め、彼の想いを知る。変わったような、変わらないような、地元の有力者の息子であり教室の支配者である健との関係。一時はひび割れ崩れたかと思いきや、前と同じではないけれど穏やかなところに着地した令哉との関係。頼る人である従兄の亜細亜。どの登場人物も、一を愛している。そこがどうしようもなく、この世界に浸ってしまう。
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淡々とした語り口で、子どもと大人の狭間の少年の姿を描く。爽やか、という感じではないが眩しい。
長野さんは同性愛を描くことが多く、本作もその要素はそれなりにあるのだけども、それが苦手な人でも楽しめると思う。一が淡々としているからギラつかないし、身近な人には受け入れられており、とてもよいなと思う。
長野さんの少年は、女性からみた理想の少年なのだと思う、「男子」ではなく。年をとってから読んでも、つい憧れてしまうような。
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硬い文章で綴られる爽やかなBL、といった印象。
種明かしは鮮やかだったけど、もうちょっと芝居がかってる方が読み応えがあるように思えた。
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黒長野。少年たちの関係だけでなく、クラスの空気もピリピリしてるのがこれまでと違うなと思いました。主要な少年たちが孤独に弱い。
これまでは、高慢な美少年だけど集団でも上手くやってる、みたいな子たちだったけどイッくんは違う。七月と健はイッくんよりはメンタル強者。
主人公イッくんの学校生活が不憫でした。「イッくんはちゃんとしてるなぁ」で済まされててクラスの面倒見させられてても、彼まだ中学生だ。。
宮木あや子さんの長野愛が爆発しているけど冷静に分析してある解説とても面白かったです。作品が限りなく現実っぽい世界観でも、長野まゆみさんの描く少年は架空の生き物で、長野まゆみさんの作品にしか存在しないのすごいです。
作品の内容を考えるとつらいので、長野まゆみ少年を愛でる読み方するのが心にあまり負担がかからないな。きっと。尊死はするけど。
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BLと知らずに読み始め、最初は「間違えた」と思った。
でも私の抱いているBLに対する印象とは程遠く、純粋に「こういう形の愛もあるのだな」と気付かされた。
この本に出会わなければずっと偏見を持ち続けてたと思う。読んでよかった。
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冷めやらぬ長野まゆみ熱のなか、またお気に入りの一冊に出会ってしまった。長野さんの描く青年たちは、その時期(中高生)特有の生々しさを含みながらも、どこか幻想的で理想をすべてかなえてくれているような特徴をはらんでいる。解説で宮本あや子さんが書いているが、決して「共感できた!」というようなエゴイスティックな感想は生まれず、いつまでも眺めていたい、鑑賞者でいたいと思うような一歩引いた楽しさがある。
主人公の印貝一はクラスの優等生を演じながらも、他人には言えない秘密を抱えている。彼はそれをうまく隠し通せていたはずだったが、転校生の七月が現れてから彼の立場が揺らぎ始める。例にもれず、今回の登場人物たちも複雑な家庭事情を抱えており、自分の立場に葛藤しながらも居場所を探し得る。10も歳が離れた双子の姉弟である百(もも)と十(みつる)に振り回されながら、確かに愛情も受け取っている。
長野さんの作品の登場人物たちは、行動こそときにはぶっ飛んではいるが、根っこに優しさがあるという妙な安心感がある。だからこそ(宮本あや子さんが呼んでいたように)きれいなジャイアン的なポジションである健がいわゆるいじめっ子のような行動をしていても、どこか憎めないところがある。それにある時期まで一を女であると思い込ませていた勝手気ままな双子の姉弟にも、好感をおぼえてしまう。
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やはり長野まゆみさん独特の表現、繊細に描かれる人と人との距離感が大好きだと感じさせられる1冊でした。初め、まさかボーイズラブ的な内容だとは思わず読み始めたけれど、愛情とか友情とかを超えた複雑な感情が思わぬ形で描かれていて、私の価値観を根底からひっくり返されたような気がしました。登場人物個人の感情が明確にされていないのが尚更人間味を出していて、上手くいかない人との接し方にすごく心がむず痒くなります。私はこの物語を忘れられないと思うほど大好きな作品です。