紙の本
孤高の日本文明
2012/06/28 20:05
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:コーチャン - この投稿者のレビュー一覧を見る
冷戦が終わり、イデオロギー対立の消えた21世紀の世界を、ハンチントンは文明の衝突する時代と位置づける。文明は大きく7つ―すなわち中華文明、ヒンドゥー文明、イスラム文明、東方正教会文明、西欧文明、ラテンアメリカ文明、そして日本文明に―分かれる。 これらの文明には、それぞれ中核となる国家とそれに付随する国家が存在する。たとえば、中華文明の場合、中核国家は中国であり、それに台湾、朝鮮、そして東南アジアの華僑などが、それに属する国家や勢力として存在する。西欧文明におけるそれはアメリカ、ドイツ、フランス、イギリスという具合に複数存在する。イスラム文明のように、中核国家をもたない文明もある。同じ文明に属する民族や国家はたがいに仲間意識をもち、ときに同胞のために共に戦うこともある。イスラム文明と西欧文明の対立はその典型である。
ハンチントンの文明論において注目すべきは、日本を一国で一つの文明を形成するユニークな存在ととらえている点であろう。みずからが中核国家であるとともに、他にそれに属する国家も勢力ももたない単一国家、単一民族による唯一の文明、それが日本文明なのである。
日本は、東アジアの国でありながら中華文明ともちがう、またアジアで最初に西欧化に成功した国でありながら西欧文明ともちがう独自の文明を保持している。また日本人は、外国に移住をすると、アメリカの日系人社会のように完全にその国の文化・習俗に溶け込み、日本文明から脱却してしまう。このため、日本以外の地域でこの文明が勢力を伸ばすことはない。
このような特異性、孤立性は、日本がなんらかの危機に見舞われた場合、同じ文明に属するものとして手をさしのべてくれる勢力はないということを意味する。この不安定さゆえに、近代に入ってからの日本は、日英同盟、日独伊防衛協定、戦後の日米安保条約など強国との同盟を模索し続けたが、これらは対等な立場での同盟ではなく、相手に追随する日本にとっては危険な同盟であった。支配的な国は攻撃的になるかもしれないので、対等な立場での同盟の方がより安全である。今後アメリカが衰えれば、中国への追随的な同名を模索するであろうとハンチントンは予想する。
ハンチントンの分析は、日本人にとって示唆に富んでいる。まず日本が独自の長い歴史をもち、単一民族で一つの文明を築き上げたということに、われわれは誇りを持ってよいだろう。同時にこの事実は、世界における日本の根源的孤立状況を示すものであるから、おのずとわが国と他の文明との共存に大きな不安をいだかざるをえない。しかしだからこそわれわれは、まず不断の外交、防衛の努力を通じて、自国の安全保障体制を確立することが求められている。中国、半島国家、ロシアとの緊張はまさに中華文明、東方正教会文明と日本文明との文明衝突と位置づけられよう。
われわれはまた、国防だけでなく献身的な国際貢献を通じて、わが国の重要性を国際社会にアピールする必要にせまられているといえよう。それを怠り、ただ自民族の繁栄と安全のみを追求するならば、歴史上ユダヤ人がたどったのと同じ道、さらには現在もなおイスラエルがおかれているのと同じ軍事的緊張関係にみずからを追いやることにもなりかねない。孤高の日本文明がたどる運命は、われわれ日本人自身の手にゆだねられているのだから。
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国際情勢の未来について書かれた本で
話の内容は硬いものであったが
不思議と読みやすく面白かった。
この本では著者の他の作品からの抜粋や関連するする図表などを
用いて冷戦後の世界がたどり着くであろう
新しい勢力分布のモデルを提示している。
近い将来、日本は大きな戦争の中にいるのかもしれない…
戦争の危機が迫ったときに将来の選択肢を増やすためには
アメリカとの関係も大切だけど、中国・韓国との関係を
もっとよくしておく必要があるのかもしれない。
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80年代にかかれたんで、現状とはちょっと違うけど、現代の国際状況の構造を、冷戦時代と比較しながら、わかりやすく説明してくれています・・・(だよね、先生・・・?)
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最初に「文明の衝突」を手に取った時にはあまりの分厚さにひよってたんだけど、こっちは非常に読みやすくて、ハンチントン理論がよく分かった(気がする)。この本を読むのと読まないのとでは、国際ニュースの読み方が変わってくると思う。
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あまりにも有名な『文明の衝突』の新書版。
著者のハンチントン教授は、アメリカを代表する国際政治学者です。
ケネディ政権とカーター政権においてはホワイトハウスで外交・安全保障の政策立案に携わった経歴をもちます。
メインの部分が、単行本(原著)の5分の1くらいのページ数にまとめられてて、それプラスその後の論文2本が収録されています。
原著は分厚いし難しいけど、これは概念図とかついてるからわかりやすいからいいねぇ。
内容は一口に説明するのは難しいので、まぁ、読んでみてください。オススメ!!!
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冷戦構造も崩れ、これから世界はどうなるのか・・・。ユートピア的世界へと向かうのか。否、また衝突しあう。今度は、文明同士で。なぜ、文明の衝突が起こるのか。日本の世界的立場はどうなるのか。そして、その文明同士の対立を防ぐ手立ては・・・。
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文明の衝突って本をまだ読んでませんが、
この本も結構よかった。けど 難しかった。
アメリカと日本・韓国・パキスタン・アルゼンチン・イギリス・・・。
あと忘れちゃったけど、地域の第2強国?
の関係性とか結構面白かった。たぶんこの文章を読んでも説明不足でわからないかもしれませんが、
文明間の衝突が今後最も悲惨な展開へとつながるってことを書いていました。
文明は周辺の同じ文明を持つ人びとも巻き込むので。
日本は、日本特有の文明を持ち合わせるので、同じ文明を持つ同士より理解に難しいと書いてありました。
そこはうんでした。
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一極多極世界、文明間での衝突、といったハンチントンさんの視点がとても面白い。でも、文明というのは曖昧であり、他文明と相まって部分的に溶け合って存在すると考えていくと、衝突する境界線は存在するのかな。
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冷戦後の現在の状況を的確に表した本。
文明の衝突と大きな題目になっていますが、現実の世界で起こっていることで、根底に流れる共通項と異なるものとは、は除するために不幸ながら、紛争・戦争・テロなどが起こる。
文明の中で大きくしめる部分は「宗教」であるとしており、共感できる。
「イデオロギーが同じでも文化が違うものは離れていく」…旧ソ連、旧ユーゴスラビア
「イデオロギーが違っても文化が同じであれば一緒になる」…北朝鮮・韓国・中国、東西ドイツ
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ハーバード大学教授であるハンチントンの有名な「文明衝突論」の新書版(簡易版?)。文明衝突理論のレジュメと論文二篇を収録。薄いだが、興味深い。
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僕がサミュエル P ハンチントンを知ったのはあのオサマ ビン ラディンが声明で彼の有名な著書『文明の衝突』のことに触れていたからです。
本当は先に『文明の衝突』を読もうと思ったのですが、たまたま本屋で彼の新書を見つけたので先にこっちから見てしまおうというものでした。
内容は、冷戦までは国家はイデオロギーによって分類され(自由経済主義、共産主義、非同盟など)、その間での争いが起きていたが、冷戦崩壊後の国際秩序は文化、文明間でおこると彼は考える。
その上で世界の文明は以下の8つに分けられるという。西欧、ラテンアメリカ、アフリカ、イスラム、中国、ヒンドゥー、東方正教会、仏教、日本。
これらを踏まえて、これから国際秩序はどのようになるのか、どのような国際間の争いが起き、どのように対処していくべきなのかを解説。アメリカが中心の一極・多極世界の秩序についてや、それを取り巻く、地域大国、地域ナンバー2国家の関係など現在の国際関係を考える上で有用な内容が多い。
非常に読みやすく、こんな分析を1993年にしている人がいることに驚く。
また現在、彼が主張するようなことが起きている(イラク戦争など)ので政治、国際政治、国際関係論に興味のある人や『文明の衝突』を読みたいけど時間がない人は必読です。
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文明の衝突他論文の3本立て。
概念図なども使われていて話の筋自体は
納得できるが、なぜそうなるのか?という
証拠がはっきり示せないのがこの手の話の辛いところだろう。
他の原因と考えても説明できるという。
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ちょっと前に話題になった本。
卒論発表後のパーティでF教授が薦めていた本なのでつい読んでみた。
文明間の争いは絶えることなく続いていくのでしょうか。
宗教とは他者を排除し、攻撃するためのモチベーションとなるものなのか?と読んでいて強く違和感を覚えた。
まぁ私が無宗教だからでこその意見ですが。
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前著『文明の衝突』から、日本に関する部分を含む抜粋と、アメリカに関する新しい論文を加えた本。
とりあえず日本のことを知りたいのなら、こちらの方が量的に少ないので早い。
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ハンチントン!
新書にするには内容薄すぎじゃないかなぁ。同じことの繰り返し。
けどハンチントンの文明論はいま読んでもやっぱり新しい。