文明の衝突と21世紀の日本 みんなのレビュー
- サミュエル・ハンチントン (著), 鈴木 主税 (訳)
- 税込価格:1,100円(10pt)
- 出版社:集英社
- 発売日:2000/01/18
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紙の本
対立とは
2003/03/25 07:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:五十棲達彦 - この投稿者のレビュー一覧を見る
この著書のテーマは、冷戦後の世界の対立関係の分析と日本の選択についてである。
冷戦時代、世界は“イデオロギー”にもとづいて識別されていた。しかし、冷戦後は“文化”、もしくは“文明”にもとづいて識別されるとする。また、自らのアイデンテイテイーの危機に直面して、「われわれはいったい誰なのかという問いである」、と。
世界の主要文明は、西欧文明,東方正教会文明、中華文明、日本文明、イスラム文明、ヒンドウー文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明に大きく分類される。
「パワーの構造」。ソビエトとアメリカが冷戦時代の二極軸であった。ところが、冷戦後はアメリカが、唯一の超大国として存在している“一極世界”構造になっている。しかし、こうした一極集中はアメリカを孤独の道に向かわせている。排他的な国家、アメリカ。
日本も孤独な国家である。日本は日本一国の孤独国家である点が、特異である。また、日本史において“革命”がなかった、と。この点に関しては、日本の歴史家の中で永年にわたって論争が続けられてきたが、世界史的には日本史上に革命がなかったと、みなされても致し方ないかもしれない。日本はアメリカ追従から中国追従(追随)に傾くと予測する。
また、東アジアの運命は、中国、アメリカ、日本が鍵を握っている、としている。
この著書のモチーフは、世界政治が文明や文化の境界線にそって再構成されているとしていることである。現在の国際政治のモデルは「一極・多極体制」である。一方の超大国アメリカが取る強制手段は「経済制裁」と「軍事介入」の2点である。その意味においても、アメリカは慈悲深い覇権国という幻想をすてなければいけない、としている。
人々は先祖や宗教、言語、歴史、価値観、習慣、制度などに関連して自分たちを定義する。
旧ユーゴスラヴィアでは、ロシア人がセルヴィヤ人を支援し、サウジアラビヤ、トルコ、イラン、リビヤはボスニア人を支援した。これも文化的な血縁意識のためである。
人類の歴史は文明の歴史である。文明は人々にアイデンテイテイーを与えてきた。
文明を定義する上で最も重要なもなは宗教である。文明はまた最も範囲の広い文化的なまとまりである。また、文明はきわめて永続的な実態である。
メルコによると メソポタミア、エジプト、クレタ、古代ギリシャ・ローマ、ビザンテイン、中央アメリカ、アンデスと中国、日本、インド、イスラム、西欧が文明とする。
冷戦後の国際関係の主要な舞台はアジアである。二つの中国、二つの朝鮮。しかし、親戚同士(同じ文明を共有する国家同士という意味)が戦うには限度がある。
ハンチントンは、「中国の発展は、アメリカにとってよりぬきさしならない挑戦となる可能性がある」としている。中国の台頭。中国脅威論。
中国の躍進とその課題に関しては、別途検討するに値する。
アフガン戦争と湾岸戦争の性格。文明間の最初の戦争。アフガン戦争(ソ連の軍事介入に対する、イスラム勢力とアメリカ軍の戦い)は、イスラムがジハード(聖戦)を戦い、自信と勢力が飛躍的に高まった。ソ連の敗北は、アメリカの技術、サウジアラビヤの資金、そしてイスラムの膨大な人口と宗教的な熱意による。アフガン戦争はその後の湾岸戦争、そして昨年の9・11テロから始まるアメリカのアフガン攻撃とイスラエルとアラブ間の紛争につながっていく。
ハンチントンの特異性は、後追い論ではなく、まさに今起きている時点でパースペクテイブに世界を捉え、理論化したところである。むしろ、世界史が後追いしているかの錯覚を覚えてしまう。冷戦後の世界は一つになるのではなく、文明間での衝突になるという先見性を、すでにベルリンの壁の崩壊前に構築していたことだ。
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