紙の本
岩波文庫のトンデモ本日本代表作品
2002/03/26 01:00
13人中、11人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:佐々宝砂 - この投稿者のレビュー一覧を見る
岩波文庫のトンデモ本日本代表作品。異界から帰還した少年の言葉を記録したルポルタージュだ。時は文政3年、浅草観音堂の前に突然現れた少年寅吉は、山人(天狗)に連れ去られ修行した日々のことを語り始めた。
「仙境異聞」は上巻下巻の二部構成になっていて、上巻前半では、山崎美成と平田篤胤の寅吉争奪戦が繰り広げられる。石笛をあげたりお菓子でなだめたり…寅吉は、石笛やお菓子の代償として、平田篤胤を代表とする江戸の知識人たちの猛烈な質問攻撃にさらされる。仙界では何を着るのか、油揚げを作るのにどんな油を使うか、なんてくだらない質問をする人もいる。
そんな俗世の話を離れ、俄然話が面白くなってくるのは下巻に入ってからだ。寅吉は、平田篤胤たちの期待に応えるかのように、不思議を物語り続ける。クライマックスは、天狗に連れられて空を飛び、星のあるところまで行ったというくだり。やはり、天狗にさらわれた少年は空を飛ばなくちゃなりません。でなきゃ私は納得しないよ。彼が見た風景、面白いので原文を少し引用してみよう。
「星のある辺まで昇りて国土を見れば、光りて月よりは余程大きく見ゆるものなり」、そして、月はどんなかと言うと、「近寄りて見れば正しく穴二つ三つ有りて、其の穴より月の後ろなる星の見えたりしなり」…うーん、何とファンタスティック!
さて、字数が残り少なくなってしまった。「勝五郎再生記聞」は本書のオマケみたいな文章で、生まれ変わり事件を記録したごく短いものである。これにも天狗の話が出てくる。平田先生、よほど天狗と異界が好きなのだ。
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:PikarinHsien0 - この投稿者のレビュー一覧を見る
仙人への進化に役立つ♪
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神隠しに遭い、仙人のもとで生活していた少年・寅吉が江戸に帰ってきた。国学者・平田篤胤はこの少年を自宅に住まわせ、学者仲間たちと共に異界の様子を探っていく……。めちゃめちゃファンタジックな内容なのに、どうやらノンフィクションらしいという不思議な本。寅吉のもたらす異界の情報は、神やまじないの事から異国の様子、科学的な見解までさまざまで、オモシロすぎです。天真爛漫な寅吉と篤胤やその弟子たちとのやりとり、平凡でドジっ子な寅吉の兄の実は弟想いなトコなんかも楽しいです。
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寅吉は篤胤宅で神のようにあがめられていたわけではなく、篤胤の門人からヤンチャな子供を相手にするようにからかわれています。
寅吉は門人にだまされて、睾丸は光るものだと信じ込み、暗闇の中で確かめようとします。
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内容(「BOOK」データベースより)
文政三年、浅草観音堂の前にふいに現れた少年寅吉。幼い頃山人(天狗)に連れ去られ、そのもとで生活・修行していたという。この「異界からの帰還者」に江戸の町は沸いた。知識人らの質問に応えて寅吉のもたらす異界情報を記録した本書は、江戸後期社会の多層的な異界関心の集大成である。生れ変り体験の記録『勝五郎再生記聞』を併収。
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文政三年、浅草観音堂の前にふいに現れた少年寅吉。幼い頃山人(天狗)に連れ去られ、そのもとで生活・修行していたという。この「異界からの帰還者」に江戸の町は沸いた。知識人らの質問に応えて寅吉のもたらす異界情報を記録した本書は、江戸後期社会の多層的な異界関心の集大成である。生れ変り体験の記録『勝五郎再生記聞』を併収。
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江戸時代の国学者・平田篤胤が、
天狗の下で修行したと自称する少年・寅吉が語った
異世界の様子を聞き書きした記録と、
別のもう一編を収録。
「仙境異聞」
文政三(1820)年、
平田篤胤は門人の一人が連れて来た少年
寅吉から不思議な話を聞いた。
寅吉は天狗に素質を見込まれ、
高山嘉津間の名を授けられて
山で修行を積んだというが、
頭の回転は早いけれども短気で我儘な面があった。
「こちらで●●であることは向こうではどうなのか」
という種類の質問が
列席者から矢継ぎ早に繰り出され、
寅吉は少し呆れ気味に微笑して答え続けた。
曰く「唐で仙人と呼ばれる存在を日本では山人」
と言い、仙人と山人の間に交流があるという。
寅吉が語る山人の世界の衣服・食事・武術に関する
あれこれ、
製薬や、まじないの話、護符・武具の図解など。
証言は具体的で緻密なので、子供の夢や妄想、
大人を担ぐための作り話とは捉え難いが、
寅吉の語る「異界」の様相は、
平田篤胤らが知りたがっていた彼岸のあり様に基づく
問いかけとの相互のフィードバックによって
醸成された世界のように感じられる。
「勝五郎再生記聞」
寅吉と出会った後、平田篤胤は
転生の記憶を持つ勝五郎なる男児の話を聞き、
当人と面会。
勝五郎は前世で
子供のうちに病死して生まれ変わったと主張。
本編は、その際、寅吉も同席した――といった
経緯を踏まえて併録されたと見られる。
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目には見えない世界や、不思議な世界も好きなので、楽しんだ。
この世の成り立ちや命の不思議さを思ったのと、身の周りのことをほとんど分からずに生きているんだろうなぁ、ということを感じた次第。。
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ネットで話題、復刊されるらしい「江戸時代版ムー」。旧仮名遣いでなかなか読むのが大変だけど、現代語訳されていないものを読んだ方が面白いと思う。
ぼくはSF少女マンガの雑誌連載が起こす共同幻想と他媒体である「ムー」の文通欄への伝染、そして新興宗教への移行、みたいなことを学生の頃調べていたことがあって、マスメディアのない時代に共同幻想とはどのように起こったのか、みたいな観点で読んでみると、また別の味わいがある。政治や教育と密接に繋がってる当時の宗教機関の間の情報連携は我々の感覚よりずっと蜜で、そこを通じて噂が広がるから、噂が権威化されたりしたのかもしれない。
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平田篤胤、どんな話でもとにかく真摯に聞く人だったんだなという印象。、聞いた話をどう構成するかは別としても