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アメリカ黒人姉妹の一世紀 家族・差別・時代を語る みんなのレビュー
- セラ・デレイニィ (著), A.エリザベス・デレイニィ (著), A.ヒル・ハース (著), 樋口 映美 (訳)
- 税込価格:2,200円(20pt)
- 出版社:彩流社
- 発行年月:2000.3
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紙の本
デレイニィシスターズ。
2003/10/23 18:58
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投稿者:遊撃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
まず、第一に。
おばあちゃんたちすごい記憶力です。感服いたしました。
だってやたらのおばあちゃんじゃないんです。100年生きてるんですよ。
その100年分の人生を覚えてるだけでもすごいキャパだと思うのに、もっと延々とさかのぼれるんです、「一族の歴史」みたいなね、歩く「一族の歴史」みたいなね。すごいのよ。
そしてその次に、注釈がね。いいんですよ。
たぶんこれ日本語版だけについてるんじゃないかと思うのですが、人名や事件についてはもちろん、当時の風俗的なことに関しても、アメリカ人が読む分にはひょっとして常識なのかなと思うような、でも日本人(ていうか私?)にはピンとこないような語句であったり言い回しであったりに、すごく細か〜い注釈がついてる。注なのでもちろん、本文よりは小さいフォントで印刷されているのですけれど、たぶんこれ字数でならしたら本文より注の方が多いよ。きっと。と思うくらいの勢いの、気合の入った本です。
そんでもってそれがあってこそ、この本は、日本人にとっても、単に「読み物」っていうだけ以上の資料的な価値を与えられているのだと思います。
なんつうか、ベースになる部分の、デレイニィさんたちの回顧録部分はすごく読みやすくて、面白くて、やわらかい、でもって、それをきちんと支える細かくて親切な注釈が、そのやわらかさの中に隠されている、本当のこと、デレイニィさん達が、「される」側だったからこそ今は笑ってなんでもないよ、というように話すその中に含まれる深刻さを、無意識に読み解いて行く手がかりになってくれたような気がするのです。
それにすごい情報量なのでね、読んだ後ちょっと賢くなったような気にもなれますよ。正味のハナシ。
「される」。
「される」っちゃあ、最近、すごく思うのですが、特に高校生くらいの世代で、「〜れる」って、受け身でものごとをとらえた物言いをするのがすごく耳につきませんか。私だけですか。
こないだ地下鉄に乗ったら、満員だったのね、そんで、ああ、満員だな、「座れない」な、とか、あるいは、「椅子が埋まってる」な、とか、「人が座ってる」な、とかって状況判断を、その最初の一瞬でするじゃないですか。
すると、後ろから乗り込んできた女子高生が、言うわけですよ、「うわ、全部座られてる」。「られてる」。尊敬語かい!って、心の中でツッコミを入れておきましたけども。
単にこういう言い回しが流行ってるのでしょうか。それともほんとにそういう世界認識なのでしょうか。私が年をとったのでしょうか。それか。それなのか。
まあそれもそうなんでしょうが(悲)、この本で、リンチを受けて木からつるされてる、何をしたわけでもない黒人青年たちの写真を見たあとは、道端でそういうたわいもない「られた」を聞くたびに、本当に「される」ってのがどういうことだか教えてやろうかい!という思いがかすかに胸をよぎることも事実です。かすかにね。
でも、それについて、されたされた、私たちはされたのよ、なんて言わないデレイニィ姉妹はほんとに素敵なおばあちゃんたちです。
この本に書かれているのは、本当に深刻な、過去の、そしてたぶんいくらかは現在にもつながっている、事実なのだと思います。だけど、それが重くないし、辛くならないのは、ひとえにこのおばあちゃんたちが、強いから、素敵だから、賢いから、綺麗だからです。そうなんです。
かっこいいんですから、デレイニィシスターズ。
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