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紙の本

小林秀雄再評価のために、日本語の外側から小林秀雄を考える

2003/06/25 04:57

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:碧岡烏兎 - この投稿者のレビュー一覧を見る

 二宮は、「近代の超克」と題された一九四二年の座談会での、小林の発言と沈黙を手がかりに小林の時代に抗う姿を浮き彫りにする。戦中の小林秀雄を理解するのは難しい。「無常といふ事」ですら厭戦的と警告された時局を想像することが、まず容易でない。まして、そうした状況で直接政治的な発言、行動によってではなく、文学のなかで文学の独立性を問うことによって時代に抗うという姿勢は、時局におもねたという平板な理解に陥りやすい。
 これに対して、二宮が明らかにするのは、戦争の政治的な是非だけを問いかけたり、近代の超克を単純に公式化したりしない、言わば疑い続ける批評家の姿である。戦争の拡大は知識人に政治的な態度表明を迫った。ある者は体制寄りへと転向し、ある者は抵抗を続けた。しかし政治化するという意味では、いずれも時局に溺れていることに違いはなかった。これに対して小林は、事態を政治に還元せず、自分の思想、文学の問題として引き受ける。二宮の論考に従えば、その苦しみから「無常といふ事」が生まれたと理解すべきなのだろう。
 知識人に求められるのは、政治的な態度表明ではなく、政治的になっている問題の虚像を暴露し、本質的な問題を明らかにすることであると、サイードは『知識人とは何か』で述べている。本書は、そうした不屈の知性を備えた稀有な知識人として小林秀雄を描く。サイードはまた、知識人は知的亡命者であらねばならないともいう。複数の文化を生きることによって、自己を相対化することができるからである。
 複数の文化という意味では、小林秀雄は日本の古典だけでなく、フランス文学とロシア文学を通じて、自己を疑い続ける術を学んだ。小林は漱石、鴎外など明治期の日本文学にほとんど関心を示さなかったという二宮の指摘は、日本文学にどっぷりつかったのではなく、異なる視点から日本文学、日本文化を見つめたということを示唆する。
 また、そうした小林秀雄の知的亡命を見出すことができたのは、二宮自身が日本語とフランス語という二つの世界を行き来しながら考えを深めている、すなわち彼自身が知的亡命を続けているからに違いない。「近代の超克」を主題とした第三章は、もともとフランス語で書かれたものだという。そこには予備知識がない人にも理解させるために、小林秀雄という一個人から、知識人のあり方という普遍的な問題をできるだけすくいだそうという姿勢が見られる。
 小林秀雄は決定版の全集発刊以来、再評価の兆しが見られるらしい。私自身、昨年の「小林秀雄展」をきっかけに新しい全集を読み始めた。懸念するのは、小林秀雄の再評価といった場合に、日本文化の複雑性、多様性を捨象し、自分勝手に選び出した文化財や風景だけを疑いもせず賞賛する勢力によって、日本文化礼賛者として小林秀雄が再び教祖にまつられてしまうことである。本書のように、客観性、普遍性をめざした研究が、そうした安易な読解に対する防波堤になるのではないか。
 二宮は、『森有正エッセー集』の編者でもある。本書でも、日本語を基点に、それを疑い、磨くことに専心する小林秀雄と、母語をいったん離れ、フランス語の理解、表現から日本語表現を追究した森有正がところどころで対比されている。同じ著者による「母国語は宿命か——森有正と小林秀雄」をあわせて読むと、日本語での表現にこだわり続けた小林秀雄の執念が、より客観的に浮かび上がってくる。

烏兎の庭

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2010/11/05 22:39

投稿元:ブクログ

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