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こちらは下巻。暗中模索の日々といふサブタイトルが示すやうに、明るい話題は少ないのです。
何しろ上巻の最後で「よんさんとお」といふ最高潮に達した国鉄。当然その後は落ちる一方であります。
それでも新幹線が1972年、1975年にそれぞれ岡山、博多へ延伸されるなど、明るい話題もありました。
しかし嵩む一方の赤字を埋めるための運賃値上げを毎年行つたり、ストをやつたりして、さういふ良い面は吹つ飛んでしまつた印象です。
1975(昭和50)年に「新幹線大爆破」といふ映画が東映で製作されたのですが、協力を要請された国鉄はこれを断りました。今やボロボロの国鉄にとつて、新幹線は残された唯一の希望だ。それを爆破する映画だと? 到底協力なぞ出来るわけがないぜ、といふことでした。そこで東映は仕方なくミニチュア特撮を駆使して撮影をするのですが、やはり作り物感は拭へませんでした。
政治の道具にされ、国鉄総裁は時の与党に都合の良い人物が送り込まれ、組合(国労や動労)との折衝にあたる。末期の国鉄問題は、まさに組合問題でした。多くの血も流れました。運賃値上は常態化し、たるみ事故が続発し、もうこの辺になると日本全体が「国鉄憎し」の大合唱となつて、分割・民営化は不可避の選択となるのでした。
読んでゐても辛い部分ですねえ。
ところで本書の版元・山海堂は倒産した出版社でした。
うつかりしてゐましたが、新品を入手するのは難しいでせうね。
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