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無免許であることを隠して外科医として働いていた偽医師・徳田兵介が、医療ミスで患者の左肺を機能停止させるという事故を起こす。
暴力団員で殺し屋だったその患者・牛窪勝五郎が、牛窪から逃げ回る徳田を、復讐の為に殺そうと日本中追い回す、という物語。
1960年代のアメリカ・ドラマ『逃亡者』の、西村寿行版、という感じもありますが、主人公・徳田を徹底的にカッコ悪く描いているのが西村寿行作品としては異色作。
『君よ憤怒の河を渉れ』『化石の荒野』という映画化された西村寿行作品は、無実の罪に陥れられた男が己の誇りにかけて悪に立ち向かう物語でしたが、この作品は逆。
実際に無免許で医師として働き、医療事故を起こした徳田が、愛する女を目の前で牛窪に強姦されても、立ち向かうこともせず逃げ回るだけ、と、徹底して情けない男を主人公にしています。
徳田が逃避行の先で女性と恋に落ち、その女性を牛窪に寝取られる、のパターンが繰り返されますが、その女性の内、メイン・ヒロインは、西村寿行作品のヒロインらしい30代の未亡人という熟女ですが、もうサブ・ヒロインが14才の少女、という、西村寿行作品でエロス・シーン担当には若すぎるのも、この作品が異色の西村寿行作品だと言えます。
徹底的に情けない徳田の行動は、読んでいて全く爽快感が無いですが、こんなに情けない男だからこそのラスト・シーンには、感動させられました。
ドデカいクライマックスが待っているかと期待していると、ラストで急に萎んでしまう西村寿行作品はかなり多いですが、ラストできっちりとクライマックスを迎えた、ということも、西村寿行作品では珍しくラストで興奮させられました。