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世界のユニークな豆食文化のお話。堅かったり毒があったりして、そのままでは食べにくい豆。 それをいかにして食べるか?様々な工夫を紹介。 日本にもある豆腐や納豆も中国や東南アジアでは発酵させたり、揚げたり、乾燥させたり。 もちろん豆といえばインド。インドの豆のマメなお話もあります。
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[ 内容 ]
ダイズ、ソラマメ、ラッカセイ、インゲンマメ、エンドウ、ヒヨコマメ…、堅かったり毒があったりして、そのままでは食べにくい豆に人びとはさまざまな工夫を加えて食べてきた。
中国や東南アジアの豆腐と納豆、豆の王国インドの多種多様な豆、新大陸の知られざる豆、野菜や果物・イモとしての豆など、世界のユニークな豆食文化をたずね、植物利用に向けた人間の知恵と豆の持つパワーを探る。
[ 目次 ]
第1章 豆と人間
第2章 ダイズは東アジアの食文化の横綱
第3章 豆の王国インドとその周辺
第4章 新大陸からの贈り物
第5章 野菜と果物としての豆たち
終章 豆と人間の未来
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著者
吉田よし子さんは、農林省農業技術研究所技師を経て、熱帯植物の利用についてのフリーの研究家となった人。
フィリピンの国際稲研究所に赴任した夫とともにフィリピンに20年近く住んだことが、この人のキャリアの転機になった由。
第一章 豆と人間
総論といったところだろうか。本全体の見取り図が得られる。
第二章 ダイズは東アジア食文化の横綱
ダイズはダイズとして食べられていないという「衝撃の事実」から知らされる。
そもそも豆としては長期間の加熱を要したり、臭みがあったりと、決して食べやすくないのだと。
それを豆腐や醤油、油の原料にして食べてきたのだ、と。
その後はアジアの「豆腐文化」「納豆文化」の紹介が続く。同じ「豆腐」、「納豆」とは思えないバラエティの豊かさに、ただただ瞠目。
第三章 豆の王国インドとその周辺
豆を畑で混作することの意義から始まったが・・・後はインドとその周辺地域の豆食文化が具体的に紹介されていた。
インドでは一日一人当たり40グラムの豆を食べるという。上位四種がヒヨコマメ、キマメ、リョクトウ、マッペ(ウラド)だという。
インドだから、豆のカレーばかりかといえば、決してそんなことはない。
ヒヨコマメの黄粉は、一度食べてみたくなった。
また、インドの豆スープのダールは、日本でいうおかゆに近い感覚で食べるもののように感じた。
先日読んだ森枝卓士『週末はヴェジタリアン』にも重なる内容もあった。
それから、本書は豆の有毒成分についても、あちこちでふれている。
この章では、インド周辺でよく食べられているラチルス・ピーと、それによる中毒症状(下半身の神経麻痺)についても、触れてあった。
ラチルス症は現代でも起き、ラチルス=毒豆とイメージされているらしいのだが、筆者は穀物とバランスよく食べれば問題ない、むしろこれから起きる食糧危機の中で、蛋白源として有効活用すべきだと主張していた。
第四章 新大陸からの贈り物
ここでは、南北アメリカと、オーストラリアの豆食文化が取り上げられる。
アイスクリーム・ビーンという別名を持つ南米のパカエ。
莢の中の豆を包んでいる部分が、熟すと甘い果肉となる。
標高の高いアンデス地方では、豆の水分が気化し、それで冷たく感じるのだというが・・・私たちの「豆」のイメージを大きく揺さぶる、興味深い豆だった。
インゲンがササゲより「高価」な豆であること、イモを作る豆(ハナマメ)があることなど、ぴっくりの連続である。
新大陸生まれのラッカセイ。
これの胚に生えるカビがアフラトキシンという猛毒を作り出すという話も。
第五章 野菜と果物としての豆たち
ここまで、マメの恐ろしく奥の深い世界に触れてくると、びっくりしなくなっている自分に気がつくのだが・・・
マメは、マメとして食べるのではない。
イモの部分、莢の部分、果肉の部分、スプラウトとしてなど、食べられる部分も実に多様であると分かる。
個人的には、ソラマメのアレルギー(ファビズム)であったピタゴ��スの話が面白かった。
彼はアレルギーの発症を恐れ、敵に追われて逃げる際も、捕まれば死刑にされることを分かっていても、ソラマメ畑に入って逃げることを拒んだとか。
第六章 豆と人間の未来
全体のまとめにあたる本章で、21世紀の豆事情を展望するのは当然の流れ。
21世紀にも増加を続ける世界人口を、栽培が簡単で、大きな土地が要らないダイズで養うという筆者の主張は説得力があるように思う。
農業が加速させる水不足を緩和することにも資するとか。
日本でダイズを自給することも可能だという。
しかし、この本の結びは、実はその「提言」でないところがユニークだ。
なんと、そこから話が変わり、アメリカの豆サラダと、インド野菜のパコラを使った豆料理のレシピの紹介で本書が閉じられる。
この辺りは・・・ただただ、豆が好きで、食べることが好きな筆者の姿勢が濃厚にでたものだろうか。
一冊で、濃密な豆の世界を探検できる、お値打ちな本だった。