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紙の本
ちょっとつかれた若手ナースのみなさん、看護の世界はこんなに広いんです
2000/07/10 20:49
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投稿者:坂口緑 - この投稿者のレビュー一覧を見る
看護専門学校で講師をつとめて5年になる。無邪気でキャピキャピしていた学生たちが、3年間のカリキュラムを終える頃にはすっかり大人の顔つきになり、看護婦として巣立っていく様子を何度か見届けてきた。最初に担当した学生たちは、もう立派な中堅の看護婦である。けれども、気になっていたことがある。それは、専門学校を卒業し、あこがれの看護婦の職についた途端、ほんの数年であっさり辞職する人が少なくないことである。看護婦は激務である。長時間勤務に加え、緊張の強いられる場面が多い。体調を崩すこともあるだろう。それでも、あれだけ苦労して手に入れた資格を、なぜいとも簡単に捨ててしまうのだろう。
看護の魅力をいろんな角度から紹介する本書は、「ちょっとつかれた若手ナースのみなさん」に向けられた、貴重な一冊である。看護婦志望の人だけでなく、すでに看護婦として活躍中の人、将来のことを思って不安になっている看護学生にこそ、ぜひ手にとってほしい本である。
本書を手にとったら、まず、18頁を開いてみよう。「広がるナースの活躍フィールド」という図が載っている。看護婦が、白衣を身につけ病院で働くもの、というイメージがくつがえされるかもしれない。看護婦は、「医療機関、社会福祉施設、シルバービジネス、学校の保健室、海外留学・国際協力、研究者、健康関連産業、保健所、訪問看護」などといった、いくつものフィールドにまたがる職業になりつつあることがわかる。看護婦なら必ず、白衣を身につけているわけでもない。たとえば訪問看護では、医師や看護婦が白衣を身につけるべきかどうかが問題になる。せっかく、病院ではなく自宅で診療を受けたいと希望している患者に、白衣を着て訪問すると緊張させてしまうのではないか。やはり介護者やヘルパーさんと区別するために、白衣の制服に身を包むべきなのか。そんなところから、実は「看護」とは何かという問いは始まっている。
医師の担当する領域が「治療」という目的に向かうものだとしたら、看護婦の担当する領域はどんな目的に向かうものなのだろう? 著者はそれを「人を癒すだけでなく、自身も癒される」と表現している。たとえば、鼻に差し込まれたチューブでしか栄養を摂取できない患者さん。実はラーメンが大好物。それを知って、ある看護婦が、お昼にラーメンの出前をとったという。もちろん、患者はそれを食べることはできない。しかし、もうろうとした意識のなか、スープの匂いを感じ、縮れた麺を想像することはできたのだろう。しばらくして、スープをひとさじ飲むところからはじまり、やがて食事ができるようになる。そんな回復の様子を目の当たりにし、癒されているのは看護婦のほうだと著者は言う。
訪問看護でも海外協力でもいい。「ちょっとつかれた若手ナースのみなさん」、看護の魅力を再発見したら、病院を飛び出して活躍するのもアリなのでは? (bk1ブックナビゲーター:坂口緑/大学講師 2000.7.11)
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