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作者承認済みとはいえ邦題には違和感あり。ギブソンのやりたい事はわからないでもないものの、皆が期待していることではない。
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「ニューロマンサー」から20年たち、ギブスンの思想はジャンク・アートへと移行する。登場人物のキャラがしっかり立っていて、物語として純粋に面白い。
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ギブスンの「ニューロマンサー三部作」後に発表された「ヴァーチャル・ライト三部作」の第三弾完結編。今まで広がっていた人間ドラマが収束しながらラストに向かっていく感覚にドキドキできる本書。群像劇的展開が思わぬ終結場面に着地します。
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この小説の構造をロバート・アルトマンの映画に擬している批評があったが、たしかに、さまざまな登場人物が登場し、それぞれの場所でまったく違った複数のドラマが進行しているのかと思わせておいて、最後にはそれらがすべて一つの物語に収斂するという構成はアルトマンお得意の群像劇を思い出させる。ただ、映画の場合、カットごとに登場人物が替わっても観客はカメラの位置からそれを見ているわけで、さして違和感はないが、この小説は短い章立ての章が変わるたびに視点が替わる。読者はその度に新しい人物の視点で小説世界を見ていくことを要請されるので、慣れないうちはめまぐるしく感じられるかもしれない。
時代はほとんど現代と言っていいくらいの近未来。場所はサンフランシスコ、地震で壊れた後放置され、今やジャンクヤードと化したベイブリッジを中心に、新宿地下通路の段ボール街とネット上に構築された九龍の城砦都市という、ギブスンファンにはお馴染みの舞台設定である。特に橋梁のいたるところに廃物をエポキシ樹脂で接着して作られた店舗や住居からなる猥雑な街の描写がリアルで、想像力を刺激される。映画『ブレード・ランナー』を思い出す人も多いだろうが、こちらが本家である。先行する二作品『ヴァーチャル・ライト』、『あいどる』とともに三部作を構成する。無論、単独で読んでも充分面白い。
レイニーは、ネット・ランナー。連邦孤児養護センター時代に被験者として投与された薬品の影響で、ネットに流れる膨大なデータから時代の変化の予兆を読み取る特殊能力を持つが、事情があって今は新宿の段ボール街に身を潜めている。彼によれば、1911年以来の大きな時代の結節点(ノーダル・ポイント)が迫っている。世界最大の広告代理店の経営者ハーウッドは、変化の後も自分の力を維持するために、世界中に広がるコンビニ・ネットワークを使って何かを計画しているらしい。
自分は動けないレイニーは元警官のライデルを使ってそれを阻止しようとするが、ヤク中のカントリー・シンガーや、〈橋〉で古物商を営む老人と腕時計に異様に執着する驚異的な記憶力を持つ少年、バイク便のメッセンジャーでライデルの恋人、禅の境地で短刀を振るう教授風の殺し屋、それにヴァーチャル“あいどる”投影麗(レイ・トーエイ)、という個性際立つキャラクターが入り混じり、事態は錯綜するばかり。
コンビニ・チェーンを使った複製物質転送システムといういかにもSF的なアイデアはあるものの、凝った文体、武器や乗り物、それに題名にもある時計と、細部にこだわる描写、それに、叙情的な情景描写からスピーディなアクション・シーンの素早い転換は、むしろハード・ボイルド小説のタッチ。「依頼」と「探索」という物語の基本構造に忠実なストーリー展開は、短いカットの切り返しの効果もあってサスペンスを盛り上げる。散らばっていた人物がしだいに〈橋〉の磁力に引き寄せられるようにして輪が縮まり、橋の上で出会う。そして急激に訪れるクライマックス。『ニューロマンサー』以来の最高傑作という惹句に嘘はない。
原題の“ALL TOMORROW'S PARTIES”は伝説のバンド、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのために書かれたル��・リードの曲名。章の表題にもストーンズの曲の歌詞があったり、アウトロー・カントリーについての言及があったりとポップ・カルチャーからの引用が印象的である。邦題のフューチャーマチックはルクルト社製の世界最初の自動巻時計の名。ムーブメントを動かし続けるためには腕から離してはいけないが、ずっと動かしっ放しに出来るほどの耐久性はなかったという。ひねりの効いた題名ではないか。
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「あいどる」に続く「廃物都市3部作(ほんまかいな)」の完結編。今作は「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」の登場人物の総結集という感じで、懐かしい顔をみることができる。
「あいどる」では脇に回った「ヴァーチャル・ライト」の主人公であったライデルが再度主人公に。
「ヴァーチャル・ライト」でロスの街を自転車で駆け巡っていたシェヴェット嬢も主人公。
「ヴァーチャル・ライト」「あいどる」そして今作と皆勤賞の大阪大学教授・山崎が、「あいどる」で日本へ渡ったレイニーを訪ねることから、今回の物語は始まる。
レイニーは、彼の受けたある外科手術の後遺症として発病する「誰かをストーカーのように付け回してしまう症候群」が発病したと恐れ、また彼の能力を求める輩から逃れるために、なんとダンボール・ハウスで生活していた。
「ヴァーチャル・ライト」の舞台であったロスアンゼルスの橋が今回もその舞台となる。「橋」は大地震がロスを襲った時に逃げてきた人々が橋の上に家を築き、街を作り上げてしまったという、いわゆるスラム街として描かれている。
その「橋」の生活をよく知りたい方は「ヴァーチャル・ライト」をご一読願う。
レイニーは歴史の終わりをその能力で予言する。それを阻止するべく、あいどるをロスへ送りこむ。歴史はどうなるのか、あいどるはそれをどう変えるのか。
…とはいうものの、わたしはあまりこの作品、好きではない。
とても好きな作家なので、面白くないと思いたくないのだが、今の段階でわたしはどうも面白いと思えなかった。
それはきっと「歴史の結束点」などという大仰なテーマと、それに影響を及ぼしている(と解説にあった)人物の魅力が伝わってこなかったからだ。
なんだか、独り善がりに物語が進んでいく感じがした。
他のこの著者の作品は、読者をどんどん先へ先へと無理やり引っ張っていくような物語の先走り感があったのだが、それが今作ではどうも読者はおいてけぼりを食っているような感覚がある。
なんだか、「結束点」云々という小難しい話についていけない読者は読んではいけないような感じだ。
ともあれ、そのテーマ以外での物語感は相変わらずテンポ良く、面白い。また時間がたってから、読んでみようと思う
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よくわかんね、と言われる著者の本。
それでいいんだと思うのですよ。
ある種美術を読んでいる感覚、とみても
差支えないですから。
様々な視点から立ち向かう
「どうにもならないおわり」
それにいかにしてそれぞれの視点は向かっていくのか。
まあ深い意味はないので、
楽しいなと思った視点を追っていくのがいいと思うよ。