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小説「聖書」 旧約篇上 みんなのレビュー
- ウォルター・ワンゲリン (著), 仲村 明子 (訳)
- 税込価格:713円(6pt)
- 出版社:徳間書店
- 発行年月:2000.6
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文庫
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紙の本
小説であれ「聖書」なるものを読んで見ました。
2002/11/26 22:27
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:よっちゃん - この投稿者のレビュー一覧を見る
このベストセラーの著者ウォルター・ワンゲリンはアメリカの神学者であり、この11月に日本を訪れ全国各地で講演をされた方ですから、この作品はおそらくオーソドックスな聖書の解釈であると思われます。天地創造と人類の展開,アブラハムに始まるイスラエル民族の前史からエジプト下りと脱出、荒野放浪、カナンでの定着、王国の形成と南北の王国への分裂、アッシリアとバビロニアによる両王国の滅亡と捕囚までを扱う大きな歴史叙述であります。しかし、初めて聖書を概観した私は、そのことよりもむしろ、神に対する人類の抵抗のドラマであるとの印象を強く受けました。神は万人に慈悲深く、愛に満ちた平和世界を希求する存在と思っていましたが、この小説を素直に読みますと、そうではなさそうです。神が人間救済のためにおわすのではなく、人間が神のいや栄えのために存在するのだとするある意味で非人道的考え方が徹底して貫かれています。
イスラエル民族の始祖である遊牧民アブラハムに対して神はその子孫の繁栄と彼らにカナンの地を与える契約をおこなう。その条件は神への絶対の服従と神の栄光をあまねく地上に行き渡らせることにあった。時がたって、神に対する背信行為により彼らは罰せられ異民族の支配下で受難のときを過ごすがメシアが登場し、救済される。そして異民族に対する侵略戦争。神は数々の奇跡を示しつつ彼らを勝利に導く。平和と繁栄。そしておろかな民は再び神を裏切るのであるが、特に異文化との交流によって生じる異なる神への信仰が主の逆鱗に触れるようである。そしてふたたび滅びへ。衰亡と再生、この繰り返しが劇的に繰り返されるのである。
イスラエル王国は前586年にバビロニアに滅ぼされ,指導者たちはバビロンに捕囚されるのであるが、このころから神はイスラエルのために大いなる奇跡をお示しにならなくなる。終末待望の思想が濃厚になってくる。小説としては面白さが薄れてきます。軸足を伝承の世界から現実の歴史世界に移動しなければなりません。
この流れのなかでキリスト教が誕生するのは必然だったろうと考えます。すでに交易活動はアジア、アフリカ、ヨーロッパと地球規模に広がっていますから、いまさらイスラエル民族の「純血」など絵空事でしょう。神はアブラハムの子孫とだけ契約を交わしていた。もうそれは無理というものです。ここに神と人間の新しい契約の形が生まれる。この発想の転換は革命的でした。神はアブラハムの子孫とだけ契約を結び祝福をあたえるのではありませんよ、誰とでも契約を結ぼうという考えなのです。独占から競争へと神の子になれる資格のマーケットが広がったようです。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれもが唯一神でありその聖地を同じくする地区の緊張が高まっている現時点でずっしりと手応えを感じる作品でありました。
紙の本
数々の話に驚愕
2001/03/07 21:37
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投稿者:にむまむ - この投稿者のレビュー一覧を見る
聖書の読み物としての日本での評価はあまりにも低すぎるものではないか。宗教書としての受け入れられ方しかしていない一面もあったように思うが、この訳書は素晴らしい作品に仕上がっていて、多くの人に読まれ、受け入れられる作品として評価したい。
日本は昔琵琶法師によって思いを伝えたが、西洋ではこのような本で宗教情報を伝えた。押し付ける事なく考えさせるようにかかれており、長い一冊ではあるが時間を見つけて読んでみるも一興ではないでしょうか。
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