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人がうそをつくということはそもそも悪いことなのか、について心理学の立場を中心に考える本。うそにはどのような種類があり、どのような性質や力があるのか、どのような人がどのような場面でうそをつくのか、といった点を、事例を交えながら考察している。
もう半世紀近く前に書かれた本で、例に関してはものすごく古く感じられるが、考察そのものに関しては特に古さを感じない。もちろん最近の心理学の成果は活かされていないのだろうけれども、防衛機制や性格検査など、心理学を勉強すれば誰でも習うような基本的な事柄も書かれており、勉強になる。実際に主題統覚検査(TAT)の例も付録として載っている。
「あとがき」の、「ただ、このことだけはここに書いておきましょう。うそを追求して相手にうそをいっていたと告白させることだけはやめましょう。」(p.201)の部分が、唐突であるが印象的だった。結局、どんな人でもうそをつくし、つかされるし、つかなければならないものでもあるので、誰かのうそにも目くじらをたてず、おおらかに構えましょう、という、著者の人間の大きさ、というのを感じてしまうあとがきになっている。うそに関しては考えることは、自分も他人も含めて、人間に関する興味を尽きないものにさせる、奥深いことだと感じだ。(11/02/06)