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「モンテマスの月」The Moon of Montezuma ファンタジイ誌1952.11,2月号
モンテマスの月は冷たく映える・・
男の子を産んだばかりの金髪で青い目の女。メキシコと思われる男の実家とおぼしき家の住所をもらい訪ねるが、男は(もちろん)いず、老婆と娘が現われ、今喪中なのだという。その布の下には我が子と同じ、小さな、金髪で青い目があった・・
「靴」I Woudn't Be in Your Shoes ディテクディヴ・フィクションがウィークリイ誌1938.12.3号
うるさい猫が鳴く夜、投げつけた靴。その靴と同じ足跡が殺人現場にあった・・ でも夫は靴を探しにちょっと庭に出て戻ってきたのだ、靴は無かったといって・・ 刑事の疑問と、妻の疑惑、謎が晴れない結末。
「抜け穴」The Loophole ブラック・ディテクティヴ誌1942.7月号
夜届く新聞をいつも買っている男。いつもの通りいきつけのスタンドに行くとちょっと遅れていた。町を一回りして戻りやっと新聞を買うと、殺人容疑で逮捕され、証拠十分で死刑が確定。すんでのところで真犯人が現われたが間に合わなかった・・ 警察の汚点になるからとそのままに。逮捕した刑事は責任を感じ放たれた真犯人を追う。その最後がまさに”抜け穴”だった。「黒衣の花嫁」や「喪服のランデブー」の一対一版。新聞が遅れていた、真犯人と非常に似た顔だった、警察の汚点になる、など偶然が重なる、というところが現実味があり恐ろしい。
「ワイルド・ビル・ヒカップ」Wild Bill Hiccup オール・アメリカン・フィクション誌1938.5.2日号
刺激のある?料理を食べると、やたら狂暴になる男についての昔語り。
「青いリボン」The Blue Ribbon リピンコット社刊1949の短編集の巻頭小説として書き下ろした 。
ボクシングのチャンピオンだった夫のように息子を育てたい母。息子は通りでトレーニングの相手を探していたが、まるで相手にならない私が、青いリボンを頭にさしたオライリーを笑ったことから、なぜか惹かれあう。
ボクシングに捕われたオライリーと私の、上昇と下降と再生の物語。
スポーツ小説やボクシング小説のアンソロジーが編まれる時はきまって採録されているとある。
他に、
「セントルイス・ブル-ス」The Hummingbird Come Home ポケットディテクティヴ誌1937.3(コーネル・ウールリッチ短編集別巻)
「ぎろちん」Guilootine ブラック・マスク誌1939.8月号 (コーネル・ウールリッチ短編集別巻)
「さらば.ニュ-ヨ-ク」Goodbye,New York ストーリイ誌1937.10月号(コーネル・ウールリッチ短編集別巻)江戸川乱歩にはじめてアイリッシュの名を知らしめた作品。
巻末に訳者の稲葉氏の解説。
1976年に日本で編纂された短編集なのだ。アイリッシュの死後発見された遺稿に自伝的なものがあったとあり、それを少し紹介している。
また葬儀の参列者でアイリッシュが何者なのかを知っているのは、ハンス・サンテッソン、ロバート・L・フィッシュ、ハーバート・ブリーン、マイクル・アヴァロンくらいのもので、とくにアヴァロンが弔辞を読み上げたとある。作家団体からは、MWA「アメリカ推理作家協会)を含���、弔辞どころかひと束の花束もカードも贈られなかった、とある。この葬儀の報告をアヴァロンは皮肉にも推理作家協会の機関誌に載せた、ということだ。
1976.12.30初版 1984.7.25第4刷 図書館