紙の本
経済学、経営学を学ぶ前に
2012/08/11 21:41
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:JOSO - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は社会科学~とあるが、やはり著者が大塚氏であるから経済学関連のたとえが多い。しかし、内容はとてもわかりやすい。
マルクス、マックス・ウェーバーの考え方の基本中の基本がわかる。学者や既に勉強した者にはバカにされるような簡単な内容であるかもわからないが、初めての人はこの本を熟読してからウェーバーやマルクス関連の書物にあたると、とても効率的に学習することが可能となるだろう。
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・・・・・・。
「学問する」ことの半端なさ。
「本を書く」ことの半端なさ。
それをあらためて実感しました。
マックス・ウェーバー。
学問するうえでの出発点といえる本でしょう。
まぁまぁまぁ、、、いや〜、、ふぅ。。
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大塚久雄氏は冒頭このように述べている。「私のばあい、社会科学における人間の問題はなによりもまず人間類型という立場から論じられることになりますので、その人間類型論が中心論点となってくる」と...
【開催案内や作品のあらすじ等はこちら↓】
http://www.prosecute.jp/keikan/003.htm
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[ 内容 ]
社会科学が成り立ちうるのは、人間類型を前提にしてのことである。
本書は、デフォウにおいてイギリスの合理的経済人の原型を、マルクスにおいて疎外された階級的諸個人を、ヴェーバーにおいてプロテスタンティズムのエートスを、その時代の典型として探り出すことにより、社会科学における人間の今日的問題に新たな光をあてる。
[ 目次 ]
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
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小説の「ロビンソンクルーソウ漂流記」を題材に、社会的な背景を論述している。
小説をネタに、ものを語るのは、現物主義ではないが、創造を豊かにしてくれるという利点はあるかもしれない。
本書を読んで、この手法で、一度、ソフトウェア産業について記述してみたくなった。
これまでは、建築との模擬で、プロジェクトマネージメントが言われてきたが、
そもそもモデルにすべきものが違っていたのではないかという気がしています。
逆に、一度、別のモデルに書いてから、もう一度、戻って、モデルと照らし合わせるといいのかもしれません。
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ロビンソン物語ってそんな読み方ができたんだなぁって。思っているうちに全部読んでしまいました。社会学っておもしろい。
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目次:
序 論
1 現代社会科学と人間論
2 人間類型とは何か
Ⅰ 「ロビンソン物語」に見られる人間類型
3 「ロビンソン物語」の社会的背景(1)
4 「ロビンソン物語」の社会的背景(2)
5 ロビンソンの行動様式(1)
6 ロビンソンの行動様式(2)
7 ロビンソン的人間類型のもつ歴史的意味
Ⅱ マルクスの経済学における人間
8 『資本論』に現れる人間
9 自然発生的分業(1)
10 自然発生的分業(2)
11 「ロビンソン物語」に対するマルクスの評価
12 マルクスに見られる人間類型論の萌芽
Ⅲ ヴェーバーの社会学における人間
13 「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」
14 資本主義の精神とは何か(1)
15 資本主義の精神とは何か(2)
16 プロテスタンティズムの倫理と歴史的役割(1)
17 プロテスタンティズムの倫理と歴史的役割(2)
18 資本主義の精神の消失とその意味
19 「世界宗教の経済倫理」における視野の拡大(1)
20 「世界宗教の経済倫理」における視野の拡大(2)
21 儒教とピュウリタニズム
22 インド的宗教意識とユダヤ的宗教意識(1)
23 インド的宗教意識とユダヤ的宗教意識(2)
Ⅳ 展 望
24 社会科学における人間論の課題(1)
25 社会科学における人間論の課題(2)
あ と が き
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倫理観念が、イギリスの労働者たちのばあいとはまったく違って、「伝統主義」ともよぶべきエートスだからだ。そういうふうに考えるのです。
伝統的に必要なもの以上をほしがらないのが善いことだからです。127
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合理化の過程は、裏側から見れば伝統主義からの解放過程だと言ったばあい、それは同時に、「呪術からの解放」でもあることを意味するわけです。167
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儒教中国のばあいには、まさに逆に、伝統主義と呪術の園がいつまでも温存されていった。
「現世拒否」の欠如。それこそがその当の原因だと言うのです。187
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この頃、たとえば実業家などで、江戸時代の商人の「家訓」の中から経営の指針を見つけ出そうとする人々があります。が、あれは別に伝統主義に戻ろうとしているわけではないでしょう。「家訓」そのものは伝統主義の上に立っているでしょうが、現在の実業家たちはむしろそのなかに含まれている合理的な要素を見つけ出し、それを経営の指針として役立てようとしているので、この思考様式はむしろ合理主義なのです。伝統の尊重ということと伝統主義ということは全然別のことですから、どうかこの両者を混同しないように願います。
もし自分たちが生産している財貨が、ほんとうに隣人たちが必要とし、手に入れたく思っているのであれば、それは必ず市場でどんどん売れるに違いない。そうだとすると、その利潤は、商人たちの獲得する投機的な暴利や高利貸しなどとはまるで違って、むしろ隣人愛を実践したことの現れということになるのではないか、というわけです。ですが、そのばあい、彼らの営みがほんとうに隣人たちが必要としているものを供給する、そうした隣人愛の実践になっているかどうかは、市場に出した商品が売れ、利潤が得られたのちにはじめてわかることになる。つまり、利潤の獲得のいい仕事で、儲けがあるということが隣人愛を実践したことの判定の基準となってくる。
禁欲と言いますと、一般に極めて消極的、非行動的な態度を意味するように考えられていますが、決してそうではありません。ヴェーバーがしばしばキリスト教的禁欲を「行動的禁欲」と言い換えているように、その内容をなすものは、もう一度言いますが、こういうことです。ある目的を設定し、その目的の達成に向かって、自分の精神・肉体的なエネルギーの全てを集中的に注ぎ込む。裏側から言えば、その他の事柄については禁欲の態度を守り、精神的・肉体的エネルギーをそちらの方には使わないで、もっぱら目的の達成のために集中的に放出する。キリスト教的禁欲とはこういうものですから、そこにはまた、その目的を現実にまた効率よく達成するためには如何になすべきか、という合理的思考への萌芽もすでに含まれているわけです。
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近代研究「大塚史学」で知られる大塚久雄氏の25回に及ぶ連続講義をまとめた新書。ヨーロッパにおける近代的資本主義発生の担い手となった中産的労働者層の特徴を「ロビンソン的人間類型」であると指摘し、カール・マルクスやマックス・ヴェーバーの著作を参照しながら大塚氏の人間類型論が展開される。序章では「人間類型とは何か?」という問いに加えて先進国と後進国における経済格差が取り上げられ、第一章ではダニエル・デフォーの『ロビンソン漂流記』に見られる主人公の合理的思考・行動様式が紹介される。著者によるとロビンソン的人間類型とは「資本家と労働者の特性を内包し、伝統主義から脱却した経済人」であった。以降、ロビンソン的人間類型がヨーロッパ圏のみで如何にして誕生したか、如何にして資本主義的経済と結びついたかが語られる。第二章ではマルクスの『資本論』を中心に物象化や自然発生的分業のメカニズムが解説され、マルクスもまたロビンソン的人間類型を経済学の前提としていたこと、すなわち人間類型論の萌芽が見られると語られる。第三賞ではヴェーバーの研究から「資本主義の精神」とロビンソン的人間類型の相似を明らかにし、さらにヨーロッパ圏における近代的資本主義を形成したエートスの源流が述べられる。中世におけるキリスト教倫理の「世俗外禁欲」がプロテスタンティズムの担い手である中産的生産者層の利害状況と結びつき「世俗内的禁欲」へと発展し、隣人愛の実践としての商活動とその結果である利潤発生が初期資本主義を形成するが、やがて営利に重点が置かれ「資本主義の精神」は凋落してしまう。さらに著者は「世界宗教の経済倫理」へと論を拡げ、歴史的に世界各地で発生した異なる各々の宗教意識が如何なるエートスを生み出し、経済に影響を与えたのか、ヴェーバーの研究を(大雑把にではあるが)非常にわかりやすく解説してくれる。第四章では上に見たような人間類型論が将来的に社会科学の中で担う意味、さらなる研究課題を提言して講義が締めくくられる。
大塚氏が翻訳した『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』(岩波文庫)の入門として手に取ったが、NHK教育講座の講義が元になっており文体が口語調で平易な為、初学者にも理解しやすかった。岩波新書からは『社会科学の方法』という大塚氏の著作も出版されているので、本格的にヴェーバーを読み始める前に一読しておきたい。